2016/04/15発行 ジャピオン860号掲載記事

心と体のメンテナンス

アレルギーと蓄膿症(後編)

片頭痛や歯・耳の痛み 放置した蓄膿症が原因

副鼻腔炎と蓄膿症について教えてください。

 鼻の周りには、骨に囲まれた副鼻腔という空洞が左右4個ずつ、合計8個あります。副鼻腔の粘膜に炎症が起こり、鼻づまりや鼻水、頭痛などの症状が出る病気が副鼻腔炎で、症状が3カ月以上続いた状態が慢性副鼻腔炎、いわゆる蓄膿症です。風邪による細菌やウイルスの感染、花粉・ハウスダスト・ダニなどが原因のアレルギー性鼻炎などによって鼻腔(鼻の穴の中)に炎症が起こり、それが副鼻腔にまで及ぶことで発症します。

 副鼻腔は本来空洞で、異物の侵入を阻止したり、排出したりする働きをしています。しかし、炎症が慢性化して蓄膿症になると、鼻腔と副鼻腔をつなぐ通り道の粘膜が腫れ、通路が塞がれてしまいます。その結果、本来なら排出されるべき分泌物や膿が副鼻腔内に堆積し、ほかにも、副鼻腔や鼻の肥大した粘膜の一部がポリープになったりします。

 

蓄膿症は、どのような症状ですか?

 典型的な症状は、鼻づまり、粘り気を帯びた黄色や緑色っぽい鼻水が出る、鼻周辺の痛みや「重い感じ」があるなどです。しかし、それらが全くないという人もいて、例えば私のクリニックでは、鼻以外の症状で受診した人が実は蓄膿症だったというケースがよくあります。

 最近多いのは、耳が塞がった感じなど、耳の不快感や痛みを訴えて来院する人です。耳と鼻は耳管と呼ばれる管でつながっており、鼻づまりによって耳管に影響が及ぶと、耳に症状が現れます。喉の痛みや咳の原因が蓄膿症だった、という例も珍しくありません。風邪と間違われることが多いのですが、鼻水が喉に垂れる後鼻漏(こうびろう)という症状によって喉が刺激され、咳や痛みが出ることがあります。

 ほかにも、顔面の痛み・腫れ、頭痛、歯痛、味覚・嗅覚障害(味や臭いが分からない)、口臭、扁桃腺の腫れ、いびき、疲労感などが蓄膿症の主な症状として挙げられます。

 蓄膿症は、内視鏡を使って鼻の粘膜の腫れを調べ、鼻水の色や粘り具合によって診断します。炎症が起きている場所や程度、鼻腔と副鼻腔の間の通り道の状態(どの程度開いているか)などを詳しく調べるため、コンピューター断層撮影(CT)検査を行うこともあります。

 

蓄膿症はどのように治療しますか?

 症状が軽ければ、鼻の通りをよくする蒸気吸入や、鼻腔から副鼻腔に生理食塩水を注入し、溜まった分泌物と膿を洗い流す鼻洗浄、薬物療法を試します。薬の場合、抗菌薬や、炎症を抑えるステロイドの内服薬または点鼻薬を使うのが一般的です。

 それらの治療で効果がみられないときは、手術が必要になります。蓄膿症の手術といえば、従来は上唇の裏で歯茎を切開し、そこからメスを入れて頬の骨を削り、問題部位の粘膜を摘出するという大掛かりな方法が一般的でした。

 しかし最近は、切らない内視鏡下手術が普及しています。局所麻酔、あるいは全身麻酔をかけた上で鼻腔から内視鏡を入れ、炎症が起きて腫れた粘膜やポリープを取り除きます。鼻腔と副鼻腔の間の狭くなった通り道を広げることで、副鼻腔に溜まった分泌物の自然な排出を促し、空気が通りやすくするのが狙いです。鼻の中を左右に分ける鼻中隔が曲がっているなど、骨の構造に問題がある場合は、骨の一部を削るなどして矯正します。

 

最新の「バルーン・サイナプラスティ手術」とは?

 粘膜が腫れて狭くなるか、閉じてしまった副鼻腔の入り口を、風船によって広げる低侵襲性手術です。内視鏡下手術と同様に、術後の回復が早く、従来の手術のように、出血予防のために鼻に詰め物をする必要がありません。外来治療が可能で、術後は1、2日休むだけで日常生活に戻れます。特にバルーン・サイナプラスティは痛みが少なく、鎮痛剤も不要という人がほとんどです。

 蓄膿症は珍しい病気ではありませんが、診断を受けないまま放置している人が少なくありません。また再発防止のためには、アレルギー性鼻炎の治療が大事です。そのため当院は、蓄膿症手術の前に必ずアレルギー検査をしています。

※来週はサイコロジストの鈴木貴子先生に、患者中心のメディカルホームについてお聞きします。

 

バルーン・サイナプラスティ手術の手順。①先端に風船を装着したカテーテルを鼻から副鼻腔まで挿入。副鼻腔には膿(黄色)がたまっている
②炎症で閉じていた副鼻腔の入り口で、風船を膨らませる
③入口が開き、副鼻腔から膿が流れ出た(イラスト提供:アン先生)
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ジェフリー・M・アン先生
Jeffrey M. Ahn, MD

(写真左から3人目。クリニックのスタッフと)耳鼻咽喉科専門医師。コロンビア大学医学部耳鼻咽喉科教授、同大顔面形成外科クリニック・ディレクター/睡眠障害外科治療ディレクター。子供から大人の鼻炎、鼻づまり、アレルギー疾患などが専門。痛みを最小限に抑えた日帰りの蓄膿症手術や、ロボットを使った睡眠時無呼吸症候群手術で定評がある。

TEL
212-714-9117
WEB
http://www.jeffreyahnmd.com
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