2016/01/29発行 ジャピオン849号掲載記事

心と体のメンテナンス

子供と大人のADHD(前編)

子供と大人で異なる症状 日常生活や仕事にも影響

注意欠陥多動性障害(ADHD=Atten- tion-DeficitHyperactivity Disorder)とは、どんな病気ですか?

 子供の最も一般的な発達障害の一つで、じっとしていられなかったり、注意力が続かなかったりします。

 授業中に落ち着いて座っていられない、常に動いている、よくしゃべる、教師の話を聞かない、といったことは、子供には珍しくないかもしれません。しかし、それらの程度が異常で、しかも頻繁に症状が起きるなど、日常生活に支障が生じていると判断される場合、ADHDが疑われます。子供のADHDは、幼稚園や小学校で集団生活を始め、ほかの子供との行動の違いが目立つようになってから診断されるケースがほとんどです。

 詳しい原因はまだ解明されていませんが、遺伝的要因が大きく、それに環境やストレスなどの要因が絡まって発症すると考えられています。またADHD患者では、集中するときに放出されるホルモンのノアエピネフリン(ノルアドレナリンとも呼ばれる)の分泌が少ないか、分泌量は正常でもうまく機能していないことが分かっています。

 

ADHDは子供だけの病気ですか?

 いいえ、最近は大人がADHDと診断されるケースが増えています。これは、マスコミでADHD、中でも大人のADHDが近年注目されるようになり、病気の認知度が向上したことと関係しています。子供のころに適切な診断を受けず、症状が成人になっても持続している人たちがADHDを疑い、受診する機会が増えたようです。ADHDは子供のころに発症するのが普通で、成人後に発症する人が増えたわけではありません。また、薬によって症状を管理できることが知られるようになり、救いを求める人が増えたことも、大人のADHD増加の一因として挙げられます。

 症状は人によってさまざまで、患者はその特徴によって「不注意が目立つ群」「多動性・衝動性が目立つ群」「不注意/多動性・衝動性混合群」に分けられます。子供は混合群、大人はほとんどが不注意が目立つ群に分類されます。

 不注意の主な症状は、物事を順序だてて行う・終えるのが難しい、集中力が続かない、忘れっぽいなど。多動性・衝動性の主な症状は、落ち着きがなくよくしゃべる、じっとしているのが苦手、考える前に行動するなどです。

 

ADHDはどのように診断しますか?

 ADHDかどうかを一度で診断できる検査はありません。子供の場合、保護者や教師、年齢によっては子供本人を、また大人の場合は本人と、本人が承諾すれば家族や会社関係者などを対象に、症状とその重篤度、頻度などを聞き取り調査した上で、心理学者や精神科医といったメンタルヘルス専門家が診断します。不安神経症、うつ、特定の学習障害、聴覚・視覚障害など、ADHDと似た症状を呈する問題がないかも調べ、それらの結果も包括的に検討します。

 聞き取り調査では、スクリーニング目的で症状チェックリストを使います。最も簡単なのが次の6項目(症状)のリストです(いずれも内容は抜粋)。過去6カ月を振り返り、症状が見られた頻度を「非常に頻繁」「頻繁」「時々」「めったにない」「全くない」の5段階で評価してもらいます。
 
①課題やプロジェクトを仕上げる・終わらせることが難しい
②作業を順序だてて行うことが難しい
③約束や用事を忘れる
④考える必要のある課題を避けたり、先延ばししたりする
⑤長時間着席していなければならないときに、手足を動かしたり、もぞもぞしたりする
⑥過度に活動的になったり、何かせずにいられなくなったりする。

 これらは、アメリカ精神医学会が定めた診断基準18項目のうち、最も重要な6項目です。「非常に頻繁」と「頻繁」が4項目以上あると、ADHDの疑いが高いと判断され、さらに詳細な診察を行います。その他12項目には、以下が含まれます。
▽不注意な間違いをする
▽あきやすい
▽人の話を集中して聞くのが難しい
▽失くし物が多い、など。

 ただし、チェックリストで該当項目がある=ADHDではありません。思い当たる症状があり、それが日常生活に影響していると感じる場合は、専門家の診察を受けましょう。

※後編はADHDの治療について伺います。

 

患者本人や家族、教師など関係者に症状とその頻度を詳しく聞いた上でADHDは診断される。似た症状を呈する問題がほかにないかも調べる必要がある。写真はパトリック先生の診察・カウンセリング室
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リサ・M・パトリック先生
Lisa M. Patrick, MD

精神科医師(Board certified)。ニューヨーク大学(NYU)で依存症フェローシップ、精神科レジデンシー・プログラム修了。NYU臨床准教授。不安症、パニック障害、うつ、躁うつ、PTSD(心的外傷後ストレス障害)、ADHD(注意欠陥多動性障害)、統合失調症など成人の精神疾患や、ギャンブル・薬物・アルコール・インターネット・買い物などの各種依存症治療が専門。日本育ちで日本語堪能。

TEL
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