2015/12/04発行 ジャピオン842号掲載記事

心と体のメンテナンス

DV被害者支援プログラム(後編)

怒りや恐怖から解放 心身の癒やしを促す

ドメスティックバイオレンス(DV)被害者向けの心身支援サービスとは?

 ニューヨーク・アジア人女性センター(NYAWC)は、DVと性的虐待被害者の心身の回復を支援するサービスとして、カウンセリングの他に独自のウェルネス・プログラムを提供しています。

 このプログラムは、トラウマ・センシティブ・ヨガ、気功、瞑想(めいそう)、耳の鍼(はり)・磁気ビーズ施術、アートを用いたサポートグループなどからなり、それぞれ狙いや効果は異なります。しかし、いずれの場合も、少なくともそれに取り組んでいる間は、恐怖や不安といったネガティブな思考や感情から解放される点は共通しています。これは非常に重要な点で、暴力や虐待により傷ついた心身が癒えるために必要な時間や、心のスペースを確保できることを意味します。

 

トラウマ・センシティブ・ヨガとは?

 PTSD(心的外傷後ストレス障害)と精神不安の軽減に効果があることが実証されており、米国では精神科医師によるトラウマ経験者の補完的治療として利用されています。また、心身のウェルネス(健康)を高めることでも知られています。

 普通のヨガとポーズは同じですが、トラウマ・センシティブ・ヨガは「始まり」が違います。DVや性的虐待被害者は、長期にわたって繰り返し暴力を受けた結果、心身の状態や変化に対する感覚がまひしていることがあります。そのためトラウマ・センシティブ・ヨガでは、ポーズを覚えるよりも、まずはその「感覚」を取り戻すことを重視します。

 例えば、腕をある方向に伸ばすと、体にどのような変化が起きるかに注目します。肩につっぱりを感じるかもしれないし、腕の付け根が痛むかもしれません。一つのポーズに時間をかけ、体の変化に意識を集中させることで、心と体のつながりを再確認し、強化することを目指します。

 また、呼吸法や瞑想法も学びます。トラウマを抱える人は、呼吸がスムーズにできていないことが多々あります。恐怖や驚きを感じると、その一瞬息が止まることは誰にでもありますが、その緊張が繰り返し長期間続いているイメージです。深い呼吸によって心身の緊張がほぐれ、気持ちが落ち着きます。体の隅々に酸素が行き渡り、体から力が湧き出るように感じるかもしれません。ネガティブな感情を息と一緒に吐き出せば、心にゆとりも生まれます。

 

鍼治療にはどんな効果がありますか?

 鍼治療は、不安や気分のむら、PTSDといった精神症状や、睡眠障害、特定の慢性痛の緩和に効果のあることが、複数の研究によって報告されています。NYAWCでは、ストレス緩和と睡眠を助ける耳のツボに集中して施術を行っています。鍼が怖い人には、粒状の磁気ビーズまたは磁気シードを耳のツボに張ります。ストレス緩和以外にも、体内のエネルギーの流れを正常化する働きがあります。

 

アートを用いたサポートグループとは?

 絵や工作などの創作作業をグループで行います。創作作業は心の平穏や安心感につながり、何かを形にする楽しさもあります。グループでおしゃべりしながら取り組むことで、仲間意識も生まれます。

 50歳以上を対象に、ダンスを用いたサポートグループも企画しています。ヨガと同じように、心と体のつながりを取り戻し、グループで一緒に同じ動きや呼吸をすることで、仲間との一体感や癒やしを得られると期待しています。何より運動中は、頭を空にして楽しめます。

 

体験者の感想を教えてください。

 深く呼吸することで心身ともにリラックスし、よく眠れるようになったという人が多いです。睡眠が体にいいのはもちろんですが、思考が明瞭になり、現在の問題や将来を考える余裕もできるかもしれません。体の調子が上向けば気分もよくなり、仕事や家事の効率が上がり、自分をケアする時間もできるでしょう。体の変化に気付きやすくなり、例えばパニック発作の兆候を知り、未然に防げるようになったという人も少なくありません。
 DVからの回復の方法は人によってさまざまです。まずは専門家に相談することから始めましょう。

※ 来週は外科医のルイス・ナバロ先生に、手の美容形成施術やクモ状静脈治療について伺います。

 

磁気ビーズを耳に張るバタチャリアさん(写真上)と、耳の鍼(写真下=提供:NYAWC)。鍼治療は鍼灸師が、磁気ビーズ施術はカウンセラーが行う。いずれもモデルはNYAWCスタッフ
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アディティ・バタチャリアさん
Aditi Bhattacharya, LMSW

ニューヨーク・アジア人女性センター(NYAWC)のカウンセラー兼プログラムマネジャー。性的暴力被害者支援プログラム責任者であり、サバイバー向け包括的ウェルネスサービス開発や、啓蒙に注力。ニューヨーク市立大学ハンター校でソーシャルワーク修士号(MSW)取得。1982年設立のNYAWCは、主にアジア人のDV、性的暴力、ヒューマン・トラフィッキング被害者とその子供を支援。
New York Asian Women’s Center
32 Broadway, 10th Fl.
(bet. Exchange Pl. & Morris St.)
24時間ホットライン:888-888-7702
www.nyawc.org
※日本語希望の場合「Japanese please」と伝える

New York Asian Women’s Center

TEL
888-888-7702
WEB
http://www.nyawc.org
MAP
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