2015/11/20発行 ジャピオン840号掲載記事

心と体のメンテナンス

睡眠薬・抗不安薬の危険性(後編)

原因疾患の治療を優先 薬は緊急時使用に限定

不眠や不安は、睡眠薬・抗不安薬で治療できますか?

 睡眠薬・抗不安薬は、適切に使用すれば有効な薬です。しかし、症状を一時的に抑えるにすぎず、問題の根本解決にはなりません。

 不眠や不安・恐怖には、必ず原因があります。原因を解消しない限り症状は改善しないだけでなく、対症療法のみを続けることで原因の発見・治療が遅れ、睡眠薬・抗不安薬への依存状態に陥る危険があります。そのため、精神科・心療内科専門医が安易に睡眠薬・抗不安薬を処方することはまずありません。

 

睡眠薬・抗不安薬の適切な使い方とは?

 不眠・不安の根本原因の治療を開始し、それが効き始め症状が改善されるまでの緊急避難的措置として、睡眠薬・抗不安薬の少量・短期間使用を指導することはあります。「パニック発作が頻繁に起きている」「不眠が健康に重大な影響を与えている」など、症状の一時的解消が必要な場合がこれに該当します。

 また、「どうしても早く寝なければいけない」「海外出張なのに飛行機に怖くて乗れない」など、緊急時に限り睡眠薬・抗不安薬を月に数回程度使用することに大きな問題はないですが、長期間連用することは好ましくありません。

 睡眠薬・抗不安薬は量を最小限に抑え、専門医の監督下で慎重に使用することが大事です。なお、より安全な薬物療法として、睡眠薬の代わりに依存性がなく鎮静作用のある抗うつ薬の一種を使うこともあります。効果は穏やかですが、最近は依存性のない睡眠薬も登場しています。

 

 

不眠症とはどういう状態ですか?

 眠るのが難しい状態が1カ月以上続き、日中の活動に差し障りが出てくると不眠症と診断されます。大事な仕事や試験の前で緊張して眠れない、家族やペットを亡くしたなど、明確な原因があって数日間眠れない場合は、不眠症とは言いません。

 不眠症は、生活習慣・環境因子によるものや、他の病気の症状であることがほとんどです。原因疾患は人によってさまざまで、うつ病、不安障害、双極性障害、統合失調症などの精神疾患や、睡眠中に一時的に呼吸が止まる状態を繰り返す睡眠時無呼吸症候群、ホルモン分泌異常によって興奮状態が続く甲状腺機能亢進症、就寝中に脚が無意識にピクつくむずむず脚症候群などの内科疾患、その他、頻尿・痒み・痛みなどが主に挙げられます。

 内服薬の副作用で眠れないこともあります。

 

不眠症はどのように治療しますか?

 不眠の原因が明らかであれば、その治療を優先します。原因が分からない場合は、内科的な検査、精神科・心療内科のカウンセリングによって原因を調べます。

 例えばうつ病が原因による不眠と診断された場合、安全性が高く、依存性のない抗うつ薬を用いた薬物療法を行うと同時に、カウンセリングによってうつの背景にある心理的葛藤の解消を目指します。

 また、原因疾患の治療と同時に、次のような生活習慣・環境因子の改善に取り組みます。

▽ 毎日同じ時間に就寝・起床する
▽ 寝床に入って20分経っても眠れない場合は、寝床を出て眠くなるまで他のことをする
▽ 就寝直前に食事や運動、カフェイン摂取、喫煙、飲酒をしない
▽ 読書やテレビ視聴、スマートフォン使用など、睡眠と性生活以外のことを寝床でしない
▽ 寝酒をしない
▽ 昼寝をしない
――など。生活習慣・環境因子改善と原因疾患の治療によって、ほとんどの不眠は改善します。

 嫌なこと、悲しいことがあって眠れなくなったり、不安を感じたりするのは自然な反応です。睡眠薬・抗不安薬を使用することにより、不快な感情を一時的に忘れることはできますが、それによって不眠・不安の原因が解消することはないため、かえって不眠や不安が長引くことにもつながります。

 眠れないときや不安なとき、薬で一時的にでも楽になりたい気持ちは分かりますが、睡眠薬・抗不安薬依存の危険を理解し、まずは精神科・心療内科を受診して原因究明と治療を行うことが重要です。

※来週はドメスティックバイオレンス(DV)被害者支援プログラムについて、ニューヨーク・アジア女性センターのアディティ・バタチャリアさんに伺います。

 

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松木隆志先生
Ling Zheng, LAc

精神科・心療内科医師。東京医科歯科大学医学部卒業後、病院勤務を経て在宅医療大手の湘南なぎさ診療所院長に就任。2011年来米、マウントサイナイ医科大学ベス・イスラエル病院精神科専門医研修を修了、現在は同医科大学精神科助教、同院精神科救急部指導医。一般外来では薬物療法、心理療法(カウンセリング)、生活習慣改善・食事栄養・運動指導を行っている。
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