2015/11/13発行 ジャピオン839号掲載記事

心と体のメンテナンス

睡眠薬・抗不安薬の危険性(前編)

不適切使用で依存の危険 心身に重大な健康被害も

睡眠薬・抗不安薬はどんな薬ですか?

 睡眠薬または睡眠導入薬は、文字通り睡眠を助ける薬であり、抗不安薬は、不安を和らげ気分を落ち着かせる薬です。
 
 一般的に処方される睡眠薬・抗不安薬のほとんどは催眠鎮静薬と呼ばれる分類の薬で、ベンゾジアゼピン系、非ベンゾジアゼピン系に大別されます。ベンゾジアゼピン系にはザナックス(Xanax)、アティバン(Ativan)、クロノピン(Klonopin)、バリウム(Valium)などが、非ベンゾジアゼピン系にはアンビエン(Ambien)、ルネスタ(Lunesta)、ソナタ(Sonata)(いずれも米国商品名)などが含まれます。

 睡眠薬・抗不安薬は即効性があり、適切に使用すれば有効性が高い薬です。内科医や家庭医から気軽に処方されることも多いため、安全で手軽に使える薬という印象もあるかもしれません。しかし、実際はさまざまな副作用の可能性があるだけでなく、長期間服用することにより依存性を生じる恐れがあり、不適切な使用による健康被害が大きな社会問題になっています。

 

睡眠薬・抗不安薬の危険性とは?

 睡眠薬・抗不安薬は、その作用がアルコールとよく似ています。飲酒すると眠くなり、不安や緊張が緩和される経験をした人は多いと思いますが、睡眠薬・抗不安薬の作用も同じようなイメージです。寝付きやすくなったり、不安が減ったりする代わりに、意識がもうろうとし記憶力・注意力・判断力が低下する、体のバランスが不安定になる、細かい作業が難しくなる、筋力が低下するなどの副作用があり、車の運転や機械操作が困難になり、転倒やけがもしやすくなります。

 長期間使用すると認知症発症リスクが高まることも知られています。

 また、睡眠薬・抗不安薬を数週間以上連用した場合、薬に対する依存性を生じます。薬がないと眠れなくなったり、不安が悪化したりするだけでなく、耐性(体が薬に慣れて効果が弱くなること)ができて、量を増やさないと効果を感じられなくなります。

 依存性を生じた結果、服用を急に止めると具合が悪くなる離脱症状、いわゆる禁断症状が現れます。薬への依存状態と離脱症状は、社会生活・健康に悪影響を及ぼすだけでなく、命に関わることもあります。

 これらの危険を最小化、または避けるため、睡眠薬・抗不安薬の使用は、精神科・心療内科専門医の監督下で少量・短期間にとどめる必要があります。

 

 

どのような離脱症状がありますか?

 心理的症状と身体的症状の二つがあり、アルコール依存の離脱症状と似ています。

主な心理的症状は、いら立ち、気分の落ち込み、不眠や不安の悪化など。主な身体的症状としては、肩凝り、頭痛、血圧・心拍数上昇、発汗、震えなどが挙げられます。重度の離脱症状の場合、意識障害やけいれんを起こし、最悪の場合は死に至ります。

 

米国政府による乱用対策は?

 依存性のある薬物は法律によって厳しく管理されており、乱用の可能性が高い順にスケジュールⅠ~Ⅴに分類されています。ちなみにスケジュールⅠは、ヘロインなど医療用途のない乱用薬物です。睡眠薬・抗不安薬も規制の対象で、スケジュールⅣに割り当てられています。

 スケジュールⅣの薬剤は、医師と薬剤師が処方・調剤履歴をデータベースで共有することにより、例えば患者が複数医師から同じ成分の薬の処方せんを入手しようとしても、それを発見し、阻止する対策などが講じられています。

 連邦政府機関の昨年の報告によると、アンビエン成分のゾルピデム(Zolpi- dem)が関連した薬剤過剰摂取に起因する救急外来利用件数は、2009~10年の合計が05~06年のほぼ倍に増えるなど、乱用問題は悪化しています。日本でも睡眠薬・抗不安薬は麻薬および向精神薬取締法によって規制されていますが、米国と同様に安易な過剰・長期処方が問題になっています。

 睡眠薬・抗不安薬を長期連用されている方は、依存状態に陥っている可能性もあります。依存状態を脱し、さらに不眠や不安を根本治療するために、精神科・心療内科専門医に相談することをお勧めします。

※ 後編は睡眠薬・抗不安薬の適切な使い方と不眠症対策について伺います。

 

単剤および他剤・多剤併用摂取を含む。不法薬物や不正入手した処方薬が使用されたケースと、自殺目的のケースを除く(出典:2005 to 2010 SAMHSA Drug Abuse Warning Network)
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松木隆志先生
Ling Zheng, LAc

精神科・心療内科医師。東京医科歯科大学医学部卒業後、病院勤務を経て在宅医療大手の湘南なぎさ診療所院長に就任。2011年来米、マウントサイナイ医科大学ベス・イスラエル病院精神科専門医研修を修了、現在は同医科大学精神科助教、同院精神科救急部指導医。一般外来では薬物療法、心理療法(カウンセリング)、生活習慣改善・食事栄養・運動指導を行っている。
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