2015/11/06発行 ジャピオン838号掲載記事

心と体のメンテナンス

アトピー性皮膚炎と鍼・漢方薬治療(後編)

体質改善し根本治療 ストレス解消も工夫

アトピー性皮膚炎(atopiceczema)は、鍼や漢方薬でどのように治しますか??

 痒みや皮膚の炎症といった症状は、「ドライ・ヒート(皮膚は乾燥しているが、体内に熱がこもっている)」「ウエット・ヒート(体内に余分な湿気や熱がある)」などの体質に原因があります。鍼や漢方薬による治療では、体質改善、つまり症状の原因解消に取り組み、アトピー性皮膚炎の根本治療を目指します。

 

治療の流れを教えてください。

 初回診療時に、問診、視診、脈診、舌診などを行い、体質とその原因を調べた上で、治療法・回数・期間を含む治療計画を作成します。鍼と漢方薬を組み合わせる治療法が最も効果的ですが、人によっては鍼だけ、または漢方薬だけのこともあります。

 体質がドライ・ヒートの場合を例に、具体的な治療法を説明します。この体質の人は、体が常にほてり気味で、特に夏場は「体の中がかーっと熱くなるような感じ」を訴える人もいます。

 まず、鍼治療によって、余分な熱の体外放出を促します。同時に、患者のほとんどで免疫の過剰反応がみられるため、鍼によって免疫の働きを調整します。

 「気」の循環の向上、ストレス緩和なども、鍼治療の効果として挙げられます。気とは、体内を流れる無形のエネルギーのこと。気の循環を促すことで、熱の体外放出を助けます。

 漢方医学では、体の「陰陽バランス」を重視し、バランスが整った状態が健康で、乱れた状態が病気や不調、またその原因と考えます。皮膚は、肺、胃、膵臓の状態を主に反映しており、特にアトピー性皮膚炎の場合、肺の陰が弱っていることがよくあります。ヒート、つまり体に熱がこもる原因は、大抵はこういった内臓の陰陽バランスの乱れに関係しています。

 そのため、初診時は体質とともに陰陽バランスも調べ、鍼治療によって、例えば弱った肺に働き掛け、乱れたバランスを整えます。

 漢方薬も、体質改善と陰陽バランスの調整に有効です。体質と、どの臓器に問題があるかによって、患者に適した内服薬を処方します。また、漢方成分の塗布薬(クリーム)には、痒みを抑え、皮膚を強く滑らかにする効果があります。

 赤ちゃんには、鍼治療は行わず、塗布薬と内服薬で治療します。内服薬は、粉末にしたものを水やジュースに溶かして飲ませます。

 

 

日常生活で注意することは?

 辛い食べ物や揚げ物、酒類は、体内で熱を生む原因になるので避けましょう。シャワーはぬるま湯を使うこと。熱い湯を浴びると、一時的に痒みを忘れられるという声も聞きますが、後に肌が乾燥し、痒みを悪化させてしまいます。下着は、通気性の高い綿素材がいいでしょう。

 質の高い十分な睡眠も大事です。ただ、痒くてよく眠れず、それ自体がストレスになり、症状が悪化する人は少なくありません。

 

治療失敗の理由と、成功の鍵とは?

 個人差はありますが、通常、治療開始から2~3週間で症状は改善します。しかし、そこで治療を止めると、ほぼ例外なく再発します。それは、体質が変わっていないからで、体質を完全に変えるには、数週間程度では無理で、もっと時間がかかります。症状改善後も「メンテナンス治療」を続けることが、体質改善と再発防止に何より重要です。

 メンテナンスを含む治療期間は、患者の年齢と重症度、症状がどれくらいの期間出ているかによって決まります。発症から間もない1、2歳の子供は、2~3カ月も治療を続ければ十分です。しかし、何年も症状緩和と再発を繰り返している場合は、数カ月から最低半年の治療が必要です。

 ステロイド塗布薬と内服薬による治療を長年続けてきたが、次第に症状が悪化し、もはやコントロールが難しいという人も、根気よく体質改善に取り組めば、アトピー性皮膚炎は必ず治せます。症状が慢性化して50年以上の重症患者が、メンテナンス治療を終了後、日常生活で気にならない程度にまで状態がよくなり、数年後の今も再発していないという例もあります。

 皮膚疾患に強い鍼灸師は、治療経験も豊富です。アトピー性皮膚炎は治らないとあきらめてしまわず、まずは専門家に相談してください。

※ 来週は、睡眠薬・抗不安剤について精神科の松木隆志先生に伺います。

 

患者の体質と陰陽バランスによって、最も合った漢方薬を処方する。漢方成分の塗り薬には、皮膚の痒みを抑え「強くする」効果がある
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リン・ゼン先生
Ling Zheng, LAc

ニューヨーク州免許取得鍼灸師(LAc=Licensed Acupuncturist)。中国福建医科大学卒業後、病院勤務や世界保健機関(WHO)医師団での活動などを経て来米。全米鍼・東洋医学認定委員会(NCCAOM)認定鍼灸師(Diplomate of Acupuncture)。鍼と漢方薬を組み合わせたアトピー性皮膚炎とアレルギー治療で定評がある。他にも痛み治療など。マンハッタンで1994年に開業。患者の6割が日本人。

LZ & Manhattan Acupuncture, P.C.

TEL
212-689-1773
WEB
http://www.lzacupuncture.com
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