2015/10/30発行 ジャピオン837号掲載記事

心と体のメンテナンス

アトピー性皮膚炎と鍼・漢方薬治療(前編)

体質改善し根本治療 ストレス解消も工夫

アトピー性皮膚炎(atopiceczema)における、西洋医学と漢方医学の考え方の違いは?

 アトピー性皮膚炎は、長期にわたる皮膚の炎症と、痒みのある湿疹を特徴とする皮膚疾患です。乳幼児から大人まで誰にでも起こる可能性があり、子供のころに発症し、成長とともに治る人もいれば、成人後に再発したり、初めて発症したりする人もいます。
 
 患者のほとんどで、異物の侵入から体を守る免疫の働きが異常に強いことも、この疾患の特徴です。免疫が、本来無害のものにまで攻撃を仕掛ける結果、不必要な炎症が起こります。そのため西洋医学では、ステロイド塗布薬と内服薬、その他の免疫抑制薬によって症状を抑える対症療法が中心で、痒みのない落ち着いた状態を維持することが治療の目標です。
 
 しかし、いったん慢性化したアトピー性皮膚炎は、症状のコントロールが難しく、薬の副作用のために治療を続けられない、続けたくないという人もいます。
 
 対照的に鍼や漢方薬による治療は、「体質」の改善によって症状の原因を解消し、根本治療を目指します。患者の年齢や重症度、症状がどれくらい続いているかによって、短くて数カ月、症状が数年続いている場合で最低6カ月程度の体質改善に根気よく取り組むことで、再発を予防し、完治を期待できます。

 

体質は、どのように調べますか?

 初回診察時に、症状とその期間、体調、病歴などを詳しく聞いた上で、皮膚や舌、脈を観察します。
 体質とは、例えば「ドライ・ヒート(皮膚は乾燥しているが、体内に熱がこもっている)」「ウエット・ヒート(体内に余分な湿気や熱がある)」などがあります。ドライ・ヒートの場合、暖房によって空気が乾燥する冬にアトピー性皮膚炎の症状が悪化しやすく、ウエット・ヒートの場合、湿度の高い夏に悪化することが多いです。
 
 本来健康な舌はピンク色で、舌表面に付着した苔状の舌苔(ぜったい)は明るい白色をしています。しかし、例えば体内に余分な熱があると、舌全体が赤かったり、舌苔が濃い黄色だったりします。舌の状態からも体質を知ることができ、例えば舌の腫れは、体内の過剰な湿気を示します。

 

 

体の陰陽バランスとは何ですか?

 体質の次は、体内の余分な熱や湿気といった異常の原因を探ります。大抵のケースで内臓の機能低下が関係しており、それに影響を与えているのが体の陰陽バランスです。
 
 漢方医学では、万物はすべて陰陽に分類され、陰陽のバランスが整っている状態が健康で、乱れた状態が病気や不調であり、その原因と考えます。陰は主に内臓の働きに、陽は無形のエネルギーである「気」に関係しています。
 
 皮膚は、肺、胃、膵臓の状態を主に反映しています。特に肺との関わりが知られ、アトピー性皮膚炎患者の場合、肺の陰が弱っていることがよくあります。こういった体の陰陽のバランスも、脈と舌を観察して調べます。
 
 鍼や漢方薬治療では、体質改善に直接取り組むとともに、体質異常の背景にある陰陽バランスの乱れにも働き掛けます。そのため、患者の体質と陰陽のバランスを正しく見極め、それに合った治療計画を立てることが極めて重要です。

 

体質は、どのように調べますか?

 初回診察時に、症状とその期間、体調、病歴などを詳しく聞いた上で、皮膚や舌、脈を観察します。

 脳がストレスを感じると、免疫の働きを抑制するホルモンが分泌され、アトピー性皮膚炎が悪化します。痒みがひどくなり睡眠が妨げられると、ますますストレスが溜まって免疫力が低下し、症状がさらに悪化するという負のサイクルに陥ります。
 
 ストレスは症状を悪化させるだけでなく、発症や再発の引き金になります。来米したばかりの日本人は、新生活や職場環境の変化がストレスになり、日本で落ち着いていた症状が再発するケースも少なくありません。体質改善によって、こうした再発も防げます。
 
 鍼治療は、ストレス緩和に即効性があります。耳のツボを刺激して中枢神経システムに作用させ、ストレス解消を促します。心身ともにリラックスし、夜もぐっすり眠れるようです。

※ 後編は鍼や漢方薬治療の狙いと、日常生活での注意点について伺います。

 

鍼治療では、治療部位によって長さや太さの違う鍼を使い分ける。治療中はリラックスして、治療台にあおむけになったまま寝る患者もいる
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リン・ゼン先生
Ling Zheng, LAc

ニューヨーク州免許取得鍼灸師(LAc=Licensed Acupuncturist)。中国福建医科大学卒業後、病院勤務や世界保健機関(WHO)医師団での活動などを経て来米。全米鍼・東洋医学認定委員会(NCCAOM)認定鍼灸師(Diplomate of Acupuncture)。鍼と漢方薬を組み合わせたアトピー性皮膚炎とアレルギー治療で定評がある。他にも痛み治療など。マンハッタンで1994年に開業。患者の6割が日本人。

LZ & Manhattan Acupuncture, P.C.

TEL
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