2015/10/23発行 ジャピオン836号掲載記事
足のタコ・ウオノメ・イボの治療法(後編)
しつこい「イボ」 ウイルスが原因
足の裏や指の間にできるイボ(warts)について教えてください。
ウイルスは、皮膚にできた小さな傷から感染します。ウイルスが表皮にとどまっているうちは、痛みも痒みもないことがほとんどです。しかし、どんどん増殖し、歩行時の圧迫などによって表皮の内側の真皮に達すると、小さな出血が始まります。
患部は、全体的に硬く平べったいこともあれば、皮膚が隆起してデコボコになることもあります。皮膚の角質層が肥厚したタコ(callus)の下に、イボが隠れていることもあります。
タコもウオノメも、歩いたり体重を支えたりといった刺激に対し、体の防御メカニズムが角質層を厚くして対応することで生じます。
タコの場合、普通は痛くありませんが、不快に感じる人もいます。一方、ウオノメは、歩いたりして患部が刺激を受けるたびに、硬くなった芯が皮膚に深く入り込み、神経が圧迫されて痛みを感じます。人によっては激痛のため、パッドを使って患部に体重がかからないようにしたり、尿素入りクリームで軟らかくしたりする必要があります。
イボができやすい人とは?
病気で免疫力が低下している人、免疫を抑える治療を受けている人、亜鉛が不足している人も、ウイルスや細菌全般に感染しやすいので注意が必要です。同じ状況でも、イボができる人と、できない人がいるように、体質にも関係があるようです。
イボはどのように診断しますか?
ウイルス性疣贅のほとんどは、見た目で診断できます。
まず、患部の指紋の有無を調べます。タコができても指紋はなくなりませんが、イボは表面がツルツルになり、指紋が消えて見えません。次に、針を刺した跡のような、複数の小さな点からの出血があるかを調べます。指紋消失と点状の出血がイボの特徴で、これらがあるとイボと診断されます。
どのように治療しますか?
重症のイボには、凍結療法が一般的です。急速に冷やすことで自己治癒力を刺激し、白血球を呼び寄せ、ウイルスを退治し、傷んだ組織の回復を促します。患部に炎症が起きて水ぶくれになり、それが徐々に縮小して完治します。
従来は液体窒素をスプレーなどで塗布する方法が主流でしたが、窒素が散って健康な皮膚を傷める危険があるのと、窒素の温度が低すぎて痛みを感じ、治療を続けられない人もいました。しかし最近は、ペン型の新しい凍結療法用医療機器によって、痛くない程度に温度を調整し、イボを正確に狙えるようになりました。当院が導入したペン型機器の場合、施術時間は1カ所40~60秒。ピリピリという刺激はありますが、普通は麻酔不要です。2週間に1回の治療を最低6回続けます。
凍結療法で治らないときは、レーザーで焼きます。凍結療法と同じように、患部に炎症を起こして治癒を促します。1、2回の治療で完治を期待できますが、熱で皮膚深部が損傷し、痛みの新たな原因になることもあるため、まずは凍結療法を試します。
自宅でのケアも非常に大事です。硬くなった皮膚を削った後の抗生物質や亜鉛クリームの塗布、亜鉛サプリメント摂取、胃薬のシメチジン服用を必要に応じて指導します。亜鉛とシメチジンには免疫力を向上させる働きがあり、イボができにくくなるといわれます。パッドや靴の中敷きを使い、患部に圧力がかからない工夫も必要。適切な治療と日常ケアで、しつこいイボも治ります。
イボは予防できますか?
※来週はアトピー性皮膚炎治療について、鍼灸師のリン・ゼン先生に伺います


林美香先生Mika Hayashi, DPM
足病医学博士(DPM=Doctor of Podiatric Medicine)。ニューヨーク大学関節疾患専門病院(NYU Hospital for Joint Diseases)提携医師。米国足病医学会(ABPM)公認足病専門医師。足の骨折、ねんざ、腱鞘炎、関節炎、かかとの痛み、水虫、イボ、むくみ、しびれなど、足の病気や悩み、けがの治療と手術が専門。日本の医学学会で講演も多い。
林美香足病科クリニック