2015/09/11発行 ジャピオン830号掲載記事

心と体のメンテナンス

子宮筋腫と治療法(後編)

豊富にある治療選択肢 妊娠計画の有無で判断

将来妊娠を希望する場合、子宮筋腫はどのように治療しますか?

 症状がなければ、直ちに治療する必要はありません。生理時の出血量が多く、貧血がひどい場合や、妊娠しにくい、あるいは早産や流産を繰り返している人で、筋腫以外に原因が見つからない場合は、手術によって筋腫を取り除きます。

 筋腫摘出手術は、開腹、腹腔鏡下、子宮鏡下の三つに大別され、筋腫がある場所によって適切な方法を選びます。

 子宮鏡下手術とは、膣から子宮に内視鏡と専用器具を入れ、子宮の中を見ながら筋腫を削り取る方法です。腹部を切開しないので、開腹や腹腔鏡下手術と比べて体への負担が少なく、術後の回復が早いのが特徴です。ただし、この方法は、子宮内腔に突出している粘膜下筋腫しか対象になりません。

 腹腔鏡下手術は、腹部に1センチ程度の切開口を数カ所作り、そこから内視鏡と器具を入れて行います。傷が小さくて済む優れた術式であり、大きな筋腫は電動式組織細切除去器具(モルセレーター/Morcellator)という器具を用いて細かく砕いて取り除きます。しかし、ごくまれに筋腫と思って手術をしたのに実は悪性の肉腫で、この方法を用いたために腹腔内に悪性細胞を撒き散らしてしまうケースがあり、米食品医薬品局(FDA)は、モルセレーターの使用を制限する動きに出ています。


手術以外の方法はありますか?

 症状が軽い場合は、薬で抑えます。最もよく行われるのがピル(経口避妊薬)の処方です。女性ホルモンの一つであるプロゲステロン(黄体ホルモン)の作用によって、生理が軽くなり、生理痛が軽減することも多いようです。生理痛には、鎮痛剤の併用も効果的です。

 IUD(Intrauterine device)と呼ばれる子宮内避妊器具(写真)のうち、プロゲステロンを放出するタイプを子宮内に装着することもあります。ピルと同じ効果を期待でき、妊娠したいときはIUDを取り出します。

 ピルもIUDも、筋腫を取り除いたり、小さくしたりする効果はありません。月経過多や月経痛といった筋腫の症状を一時的に緩和するために使います。

 一方、プロゲステロンのデメリットは、乳がん発症リスクが若干上がることが挙げられます。


将来妊娠を希望しない場合の治療選択肢は?

 ピルやIUDのほかに、筋腫につながる血流を遮断する子宮動脈塞栓(そくせん)術、集束超音波治療、マイクロ波子宮内膜アブレーションなど、切らずに筋腫だけを壊死させる、あるいは破壊する方法があります。

 集束超音波治療では、磁気共鳴断層撮影装置(MRI)で子宮を見ながら、超音波で筋腫を破壊します。日本でよく行われるようですが、米国では一般的ではありません。マイクロ波子宮内膜アブレーションとは、子宮の内側から電磁波を照射し、子宮内膜を壊死させる治療です。

 これらの治療は、ほとんどが日帰りで行われます。月経過多の治療に有効ですが、妊娠を希望する人には適しません。


子宮全摘のメリットと体への影響は?

 妊娠はできなくなりますが、筋腫による症状が解消され、筋腫だけを取る場合と違い、再発の恐れもありません。手術は開腹または腹腔鏡下で行われ、筋腫だけの摘出と比べて、むしろ出血量は少なくなります。

 子宮を全摘する場合、一般的に卵巣は残します。性器によるホルモン分泌は卵巣で行われており、卵巣がある限り、ホルモンバランスの崩れと、それに伴う体調変化の心配はありません。性生活への影響がないことも、さまざまな研究で報告されています。

 しかし、卵巣があることで、卵巣がんのリスクは残ります。卵巣がんは、早期発見が難しい病気です。そのため、閉経後の人には、子宮と同時に卵巣の摘出も勧めることが多いです。

 子宮筋腫の症状は、人によって治療が難しいこともあります。生活の質を重視し、子宮全摘を希望する人がいる一方で、全摘が安易に行われ過ぎているという指摘もあります。治療のメリットとデメリットを理解し、納得した上で治療に取り組みましょう。

※ 来週は、エリック・K・チャ先生に最新の審美施術について伺います。


子宮内避妊器具IUD(ピンクの子宮模型の内側にあるT字型のもの)の例。手前の棒状の器具で子宮内に挿入する。子宮筋腫にともなう月経過多を軽減する効果がある
スクリーンショット 2015-09-06 8.33.55

安西弦先生
Yuzuru Anzai, MD

産婦人科医師(Board Certified)。日本で医師免許取得後、1986年からマウントサイナイ大学病院(当時)で子宮体がんと乳がんの基礎研究に従事、産婦人科臨床研修修了。ニューヨーク大学(NYU)大学病院産婦人科勤務を経て、現在ニューヨーク・ミッドタウンOB/GYN院長。産婦人科一般診療と検診、分娩、内視鏡手術などを手掛ける。NYU医学部産婦人科助教授。米国日本人医師会・会長。

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