2015/01/01発行 ジャピオン794号掲載記事

心と体のメンテナンス

恋人依存(共依存)(後編)

相手への依存パターン まずは気付くことから

恋人依存の例を、差し支えない程度にお話しいただけますか?

アルコール依存症の夫との間に、共依存が見られる妻のケースをお話しします。夫が仕事を辞めさせられてしまうかもしれないという恐れと、世間体を気にすることもあり、この女性は、「この人を理解できるのは私だけ」と思い、「夫はちょっと体調が悪くて」などと言って夫をかばっていました。そして、表面上を取り繕う努力を始めました。しばらくそれが続いていたので、この女性は「非常事態」をコントロールできる自分に価値を見いだしていたのです。

 しかし、このような状況では、夫はアルコール依存を自分の問題として受け止めることができないため、根本的な問題は解決することができません。

カウンセリングのアプローチは?

多くの方はうつや不安を訴えて、カウンセリングに来られます。しかし、話を聞いてみると、「(問題を持つ)相手との関係を改善したいのですが、どうしたらいいですか」など、相手に問題がある、相手に変わってほしい、イコール、相手を変えたい、と思っているケースが少なからずあります。これが恋人依存の特徴の一つです。

 このケースでも、妻は「夫がアルコール依存なんです。どうしたらいいでしょう」と、相手の問題だと考えていました。

 カウンセラーは、「この関係は不健康なのでやめた方がいいです」とは言いません。まず、本人の気付きを促すことに重点を置きます。一般的に、現在の問題を語るのは抵抗があっても、過去の家族関係や、何年も前の恋愛関係なら話しやすいので、その辺から話してもらいます。

 その過程で、いつも同じような恋愛パターンを繰り返していることに気付きます。長年無意識のうちに構築してきたパターンなので、半年や一年のカウンセリングでは、二度と繰り返さないところまで到達するのは難しいです。しかし、相手の問題ではなく、自分の問題だと気付き、受け入れると、根本的なところが変わってきます。

カウンセリングで改善したケースは?

留学で来ていた20代の女性は、「付き合ってほしい」と言われると、簡単にその男性と付き合うものの、人肌があればいいという態度なので、相手が翻弄(ほんろう)されてしまう、というパターンを繰り返していました。

 この女性は、絵で表現することが得意だったので、毎回スケッチブックに絵を描いてきてもらいました。最初の絵は画用紙が真っ黒に塗られ、その真ん中に深い穴がぽっかりあいているような絵でした。

 この女性は厳しい父親を嫌っていたのですが、実はその父親に愛されること、認められることを渇望していました。父親は怖くて嫌いな存在なのに、今近くにその父親がいないと、代理となる存在を探すわけです。出会ったばかりの男性に簡単について行ってしまうのも、父親がいない穴を埋めてほしいがゆえに、とってしまう行動でした。

 父親に対する自分の気持ち、父親にどうあってほしいのか、などと問い掛けをして絵に描いてもらったところ、カウンセリングの途中で劇的に絵が変わってきました。ぽっかりとあいていた穴は痕跡を留めながらも埋められ、パステルカラーを使うようになりました。穴を埋められるものは外ではなく、自分の中にあることに気付いたということだと思います。

恋人依存は克服できますか?

多くの場合、長い年月を経ての結果なので、まず恋人依存であると気付くまでに時間がかかります。また、長年連れ添ったご夫婦の場合などは、共依存を認めることは、それまでの自分たちの価値観や夫婦関係を否定することにもなりかねないので、なかなか認められない場合もあります。また、気付いても認めたくないがために現実から目を背け、別の共依存対象を探す人もいます。

 でも、一度気が付いたら、同じことを繰り返すことは難しいです。変わりなさいというよりは、言動の選択肢を増やしていき、新しい方法を試してみて、成功体験を味わってもらうというアプローチを取ります。その成功体験によって一進一退を繰り返しながらでも、回復への道をたどることができるようになります。
 
※来週からは、マウントサイナイ病院・内分泌内科専門医の柳澤貴裕先生に、糖尿病について伺います。

静かな環境で自分と向き合うことができるカウンセリングルーム
6

真壁弘子さん
Hiroko Makabe, LCSW, CASAC

クリニカル・ソーシャルワーカー。メリーランド州立大学卒業、大学院修了。1995年からカウンセリングに携わり、2002~06年までボルチモア、ワシントンDCで、薬物/アルコール依存カウンセリングを集中的に行う。06年からニューヨーク勤務。依存症の他ほか、怒り、喪失・死別、DV、家族・対人関係、セクシャル性的マイノリティー、HIV/AIDS、法とのトラブルなどに対応。

TEL
718-930-2688
MAIL
hmakabelcsw@gmail.com
MAP
19 W. 34th St., PH (bet. 5th & 6th Aves.)

バックナンバー

NYジャピオン 1分動画


利用規約に同意します
おすすめの今週末のイベント