2018/12/21発行 ジャピオン998号掲載記事

第7回 MVP

Start-Up

実用最低限の商品
仮説の検証を実践

前回までは、新しい商品やサービスのアイデアの着想から開発、市場調査といった、実際に商品を売り出す前の段階で取り組むことを取り上げてきました。

今回は、いよいよあなたが作り出した商品やサービスを顧客に提供する際に考えるべきことを解説します。

早い変化に対応
素早い商品開発

特に市場の変化が早い商品やサービスの分野では、いかに素早く顧客ニーズに合った製品を世に出せるかが、成功のカギを握ります。目まぐるしく市場が変化する代表格ともいえるテクノロジー業界で、いま最も注目されているのが「MVP=実用最小限の製品(Minimum Viable Product)」を使った立ち上げです。

「MVP」は「必要最小限に機能を絞り込んだ、最もシンプルな製品」のことです。シリコンバレーの起業家、スティーブ・ブランクと、その門弟で「リーン・スタートアップ」の著者であるエリック・リースが提唱しました。

本連載の第4回で「プロトタイプ」について解説しましたが、今回の「MVP」との共通点は、その最大の目的が仮説検証による学びの獲得だということです。ただし、デモ用の張りボテでもよかった「プロトタイプ」と異なるのは、「MVP」がデータを入力すれば必ず動くということです。

三つのタイプで
価値と需要検証

「MVP」と一言で言っても、サービスや商品の違いでたくさんのタイプがあります。ここでは代表例として、三つのタイプのMVPを紹介します。

まず、一般的なMVPの作り方として、ネット上のランディングページ(LP)で仮説検証を進めるパターンがあります。サービスの提供価値に対して、本当にニーズがあるのかを市場に問うことが主な目的です。

例としては、音楽ストリーミングの「Spotify」(2006年創業)が行なったMVP。事業モデルの核となる音楽のストリーミング機能のみのLPでローンチしました。

LPを発展させ、かつLPをベースにサービスを裏側でマニュアル運用するタイプのMVPもよく見掛けるものです。靴のEコマースサイト「Zappos」が1999年の立ち上げ当時、オンラインで本当に靴を販売できるのか確証を得るため、地元の靴屋に商品の写真を撮らせてもらい、それを自社サイトに載せて売れるかどうかテストした例が知られています。

LP以外には、クラウドファンディング「キックスターター」などで商品の完成前に先行販売を受け付け、「プロダクトのコンセプトに同意してくれるユーザーがどれぐらいいるのか」という検証を進めるといった例もあります。

スマートウオッチの革命的商品であった「Pebble」は、この方法により、商品の完成前に購入を希望する消費者から1万ドル以上の資金を調達することができました。

顧客のニーズを把握
時間とコストの削減

一般的に、完成品まで商品開発を続けることには非常に多くの時間とコストがかかります。MVPを活用することで、無駄なコストをかけずに、あなたの製品が市場に受け入れられるかを調査できます。

さらに、MVPの提供を繰り返すことにより、顧客ニーズを正確に、素早く把握すると同時に、収益化のタイミングを早めることができます。

次回は、あなたが立ち上げた新ビジネスの顧客獲得に関する手法や具体例を解説します。

【スタートアップに関する用語】

ランディングページ(Landing Page)
ユーザーが外部からウェブサイトに最初に訪問(着陸)するページ。

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Eコマース(E Commerce)
顧客に対して提供されている、製品やサービスや人材やイメージなどの価値または値打ち。
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チャンネル(Channels)
インターネット上で行われる商品やサービスに関する取引・決済。
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クラウドファンディング(Crowdfunding)
インターネットを通じて一般人から出資を募る活動、または、そのために利用できるサービス。
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奥西正人(まさひと)
RISING STARTUPS代表

2015年にミートアップ「JAPAN NYC Start- ups」を、翌年、「RISING STARTUPS」設立。ニューヨークのスタートアップ企業の交流を目的とした「IF CONFERENCE」、起業を目指す人を支援する「IF Workshop」を開催。www.risingstartups.co

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