2018/12/07発行 ジャピオン996号掲載記事

中村武彦のプロスポーツから見る経営学

第34回 変化遂げるスポーツビジネス


最新スポーツビジネス
デジタル分野に注目

今年はまさに「スポーツイヤー」と言える1年だったのではないかと思います。振り返ると、数えきれないほどの大きなスポーツのイベントが開催されました。

個人的にはロシアで開催されたFIFAワールドカップが印象に残っています。世界規模の大イベントであり、総売上は史上最高の60億ドルといわれ、14年の前大会の収益を25%も上回りました。この発展に驚くのと同時に、この大会がどこまで大きくなっていくのだろうかと関心を寄せています。

変革の1年

私個人にとって、また会社にとって2018年は大きな変革の年でした。2月にハワイでサッカーの国際大会、パシフィック・リム・カップを復活させました。スタッフの数も増やし、3年前に起業をしたときにはこれほどの規模のイベントを運営するとは予想をしていませんでした。ひとえに理解者たちからの支援のたまものです。

そしてもう一つ、大きかったのは、プロの「eSports」チームを設立したことです。「eSportsとは何か」とよく聞かれます。以前、当コラムでも紹介したことがありますが、まず聞かれるのが、「テレビゲームがスポーツなのか?」という質問や、「戦闘系のゲームのどこがスポーツなのか?」といったことです。

同じビジネスモデル

プロのゲーマーでも世界レベルになると、秀でた反射神経や、長時間プレーをするための体力も求められるのでフィジカル的な要素も多分に存在します。

ただし、この分野にプロスポーツチームやスポーツ団体が参入している理由としては、ビジネスの側面をみるとして、大きく分けて二つの理由が存在します。

一つ目は、ビジネスモデルが、スポーツ事業のビジネスモデルと同じであること。これまでも何度か解説していますが、主な収益源はチケットセールス(入場料)、スポンサーセールス、放映権料、そしてスタジアム収入となりますが、競技が異なっても、「eSports」でも同じです。ゲームで対戦をする2チームを取り巻く収益源が他のスポーツの試合のそれと変わらないため、既にそのビジネスモデルで運営をしているスポーツ団体としては参入しやすい。なので、若者たちの間で人気を得ているテレビゲームの対戦でも、これを当てはめていることになります。

例えばFCバルセロナがサッカークラブだけでなく、バスケットボールチームやフットサルチームなど違う競技のチームを経営しているのと基本的には同じ理屈となるのです。

若い層を取り込む

「eSports」のは、ファン層が非常に若いという特徴があります。そのため、既存のプロスポーツではカバーしきれなかったファン層を取り込めるという要素があります。

アメリカで今一番若い層にリーチできるといわれるプロサッカーですらファン層は18歳~34歳といわれていますが、「eSports」では、さらに若い層をターゲットとすることが可能なので、その層の獲得を目的に参入してくるスポーツ団体が増加しています。

特に、ある程度の年齢に達すると買い替えることが少ない商品をアピールするために、若いうちからリーチをしたいという意向があり、そのようなスポンサーに営業に行く際には「eSports」のファン層というのが注目を浴びているわけです。

弊社ではEA社のFIFAというサッカーゲームのプロチームを設立したのですが、欧州でも多くのクラブが「eSports」部門を設立し、アメリカではNBAやMLSが「eSports」のリーグ、そして日本でも今年、「eJリーグ」が開幕しました。

弊社のチーム所属選手たちは日本代表レベルにありますので、FIFA eワールドカップや、FIFA eクラブワールドカップにも日本を代表して出場しました。

ゲームの種類によっては、年間の優勝賞金が数億円にも達する選手も登場しているこの分野は、今年日本でも大きな話題となり、19年以降、さらに注目を浴びていくと思います。

スポーツビジネスも旧態依然のままではなく、デジタル分野の拡大に伴い近年、大きく、そして急速に変化を遂げています。

そうした変化に乗り遅れないためにも、来年も色々とスポーツビジネスの動向を紹介させていただくことができれば幸いです。

世界各国でe-Sprotの大会が行われ、会場ではプロのゲーマーが対戦する。サッカーゲーム、FIFAなどをはじめあらゆるゲームで競われる(写真は2017年、ドイツ、ケルン)

中村武彦

中村武彦
マサチューセッツ大学アマースト校スポーツマネジメント修士取得、2004年、MLS国際部入社。08年アジア市場総責任者就任、パンパシフィック選手権設立。09年FCバルセロナ国際部ディレクター就任。ISDE法科大学院国際スポーツ法修了。FIFAマッチエージェント。リードオフ・スポーツ・マーケティングGMを経て、15年ブルー・ユナイテッド社創設。

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