2018/11/09発行 ジャピオン992号掲載記事

中村武彦のプロスポーツから見る経営学

第33回 事業を育てる


3年計画で拡大狙う
プロパティーを育てる

今年立ち上げ、2月にハワイ・アロハスタジアムで開催したプロサッカーの国際大会、パシフィックリムカップ(Pacific Rim Cup)。次回の2019年の開催に向けて、すでに準備に取り組んでいます。

先日はパートナーである株式会社ドームの安田秀一代表取締役と、日本で改めて固い握手を交わしてきました。

単年でなく複数年
萎縮せずに成長を

大会に参加するプロクラブは今月中に発表する予定で、現在も交渉はまだ続いていますが、昨年に引き続き、アンダーアーマーの日本のライセンシーであり、スポーツ事業を手掛けているドームとの協業も決まり、まずは開催へ前進したことで、心強く感じています。

この大会は、もともと単年では終わらせず、3カ年にわたり開催する計画を立てています。そして、それぞれの大会で柱としている考えがあります。

今年は、ハワイが誇りに思える、そして地域貢献できるプロスポーツイベントの構築がテーマでした。

来年は、日米で協力し、ハワイを国際的なサッカーイベント開催地にすることを目指します。そして3年目となる、2020年には、大会のプラットフォームを拡大し、環太平洋地域のプロ・サッカー・リーグも巻き込むことで、世界的にも権威のある国際大会に成長させること。さらに、この地域のサッカーの発展に寄与するというものです。

とはいえ、1回ごとの大会規模が大きいため、どうしても単年での損益計算書に目がいきがちです。そうすると、コスト削減ばかりに意識がいってしまい、ついつい次の大会を拡大していくことに萎縮してしまうことになります。

プロスポーツビジネス全般にいえることですが、こうしたスポーツ事業では、「プロパティーを育てる」という目的を基盤に、「投資」を考えることが非常に大切です。事業計画も貸借対照表で見ることを心掛け、この事業に関与する全員が共通認識として持つことも非常に重要です。

その上で毎年重要業績評価指標を設定し、測定方法までも全員で共有をしていくことで、翌年の投資箇所の判断がしやすくなります。

まさに、ドームとの会議でも、「このイベントの価値を高め育てていく」ことを繰り返し繰り返し確認し議論しています。

考える基準は
追加か拡大か

パシフィックリムカップは四つのプロ・サッカー・チームがトーナメントを行うだけではなく、地元のコミュニティー、パートナー企業、そして大会の資産価値を高めるため、その周辺に付加価値を生み出すことが必要だと考えています。

前年度と比較して余計な追加コストなのか? それともイベント拡大につながる投資なのか? ということが事業判断になります。投資であれば当たり前ですが、それに対してどれだけのリターンがあるのかをロジカルに可視化する必要があります。

来年は、今年からバージョンアップさせようと考えているイベントがあります。例えば今年の大会で無料で実施したKeikiサッカークリニック。当初は70人の定員で準備をしていたところ、募集開始48時間で300人が殺到するという、子供たちの興味の高さを知るうれしい誤算がありました。

来年は高校生を絡めるイベントを検討中で、さらに2020年には大学生も加え、この大会を中心にしたあらゆるイベント、関連事業を絡めて、ハワイでのサッカーウイークというプロパティーに育てたいという考えが基盤にあります。つまり、この例でいえば、追加コストではなく、あくまで拡大であるという判断になるわけです。

夢は壮大ですが、大きくなればなるほど投資は増加します。難しいのが、繰り返しになりますが、「昨年と比較してコストが増えてしまう」という考えだけでは、拡大に萎縮をしてしまうということです。

投資はせずに事業拡大を目指したい気持ちは分かりますが、それではスケールしないので、そこそこの事業で終わってしまう。それを回避しなくてはいけません。

この部分はドームの赤倉吉典CMOからアドバイスを受けながら、パシフィックカップ拡大に努めていきたいと考えています。

今年もパフィシックリムカップを株式会社ドームと協業で開催する。写真は同社安田代表取締役(左)と中村氏

中村武彦

中村武彦
マサチューセッツ大学アマースト校スポーツマネジメント修士取得、2004年、MLS国際部入社。08年アジア市場総責任者就任、パンパシフィック選手権設立。09年FCバルセロナ国際部ディレクター就任。ISDE法科大学院国際スポーツ法修了。FIFAマッチエージェント。リードオフ・スポーツ・マーケティングGMを経て、15年ブルー・ユナイテッド社創設。

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