2018/07/13発行 ジャピオン975号掲載記事

中村武彦のプロスポーツから見る経営学

第29回 ワールドカップの値段


FIFAの予算
約6710億円

波乱やドラマが続くFIFAワールドカップ・ロシア大会。この号が発行されたときには、3位決定戦、決勝戦を残すのみとなります。この原稿は、準決勝目前に執筆しています。個人的には黄金世代と呼ばれる選手を多数擁するベルギー代表、そして次世代のスターがそろっているといわれるフランス代表、どちらが決勝に進んでも、優勝候補として期待をしています。

視聴者34億人

各誌の報道では、今大会は34億人がテレビで試合を視聴すると予想されています。2014年ワールドカップ決勝は世界中で10億人が視聴したそうです(FIFA調べ)。この世界中を熱狂させるワールドカップ。ビジネス的見地から見ても、いろいろと面白い数字があちこちで発表されています。

今回のコラムでは、そんなワールドカップにまつわるお金の話をいろいろと解説していきます。

スポーツビジネスで収入の礎となるチケット。今大会での最低価格は110ドルでした。これは開催国のロシアに住む人にだけ提示された価格です。それ以外のチケットは最高で約1100ドルといわれ、大会開幕前には240万が枚販売されました。

今大会では強豪国のイタリア代表、オランダ代表が予選落ちをしていますし、私たちの住むアメリカの代表も北中米カリブ海地域では断トツの実力を持ちながら、まさかの予選敗退をしました。

それでもチケット購入者の内訳はロシアのファンが約87万枚、2位はアメリカのファンで約8万9000枚と発表されました。

総予算6710億円

ワールドカップで優勝をした場合の賞金は約41・8億円です。そして全32チームに支払われる賞金総額は約440億円。日本代表もベスト16まで進出をしたので、約23億円の賞金を受け取ることとなります。もしグループステージで敗退していた場合の賞金は約10・5億円。今回、賛否両論を巻き起こしたポーランドとの試合ですが、勝利したことでさらに約12・5億円を得られた計算になります。

これらのコストを支払うFIFAの総予算は約6710億円(2015〜18年)で、18年の収入だけで約4400億円。うちマーケティング権料総額はフォーブスによると約1800億円(同)で、これは次の4年間で約2000億円に増加すると予想されています。放映権料も大きな収益源です。放映権料は約3300億円(同)の収入があるといわれていますが、こちらも次の4年で、約3850億円にまで増加するといわれます。

ここでも今大会では代表が敗退したアメリカが登場します。FOX社はFIFAに対して、18年と22年ワールドカップのアメリカ国内の放映権料として約467億円と巨額を支払っています。さらに26年には、アメリカ・カナダ・メキシコ共催大会の開催が決まっていますから、放映権の争奪戦が今から予想されますが、この3カ国共催の大会では、FIFAは約1兆5000億円の収入を得るという予想まであります。

ニュースメディアのビジネスインサイダーでは、出場国それぞれの選手市場価値総計を算出する面白い特集を組んでいました。それによると、出場全選手の年俸総額は約1兆6000億円。最も市場価値が高い代表国は総額約1300億円のスペイン代表。ロナウド、メッシ、ネイマールの年俸総額はワールドカップ出場国の市場価値総額下位9チームを上回る結果となりました。ちなみにわれわれの日本代表は、32チーム中25位の約90億円です。

代表に投資?

ワールドカップで優勝をするために代表チームへの投資をするという考え方もあります。各国サッカー協会の年間予算のうち、大きな割合が代表強化に割かれます。そこには監督の給与なども含まれ、4年間でどれくらい代表強化に投資をし、ワールドカップでどれだけ回収できるのか? という考え方をすることもできます。しかし完全に勝敗に依存をしたモデルになりますので、投資といえるのかどうかは人によって意見が分かれるものと思います。

今回はワールドカップにまつわる数字をいろいろと取り上げましたが、このような観点から見てみるのもまた違った面白さがあるのではないかと思います。

さあ、注目の決勝戦。熱戦が続いたワールドカップも本当にあっという間ですね!
(参照=ビジネスインサイダーフォーブス

FIFAワールドカップ・ロシア大会の決勝が行われるモスクワのルジニキ・スタジアム。優勝チームは約41・8億円の賞金を得ることになる

中村武彦

中村武彦
マサチューセッツ大学アマースト校スポーツマネジメント修士取得、2004年、MLS国際部入社。08年アジア市場総責任者就任、パンパシフィック選手権設立。09年FCバルセロナ国際部ディレクター就任。ISDE法科大学院国際スポーツ法修了。FIFAマッチエージェント。リードオフ・スポーツ・マーケティングGMを経て、15年ブルー・ユナイテッド社創設。

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