2018/04/13発行 ジャピオン962号掲載記事

中村武彦のプロスポーツから見る経営学

第26回 来年度大会の準備


世界大会にするため
取り組む四つの課題

「パシフィックリムカップ2018Powered by UNDER ARMOUR」が閉幕して約2カ月が経過しました。清算業務やあいさつ回りも大方終わり、息をつく間もなく、来年、2019年度の大会に向けての準備を開始しています。

今回の大会は、「とにかくやってみないと分からない」という視点で、まさに出たとこ勝負を強いられる場面の連続でした。ただ、今回の大会運営で得た反省材料をきちんと次に生かせるようにしなくてはならないと考えています。改善点は数え出せば切りがありませんが、主だったものを抽出しますと次の四つに集約されます。

出たとこ勝負で挑戦
来年に向けた改善点

一つ目はチームが練習をする天然芝の環境改善。これはわれわれだけでは何ともし難いことなので、開催地のホノルル市と協議をまさに開始したところです。気候や宿泊施設などは申し分ないのですが、いかんせんプロスポーツの大会を開催する機会が少ない場所であるため、「プロ基準」の天然芝の練習場の確保が容易ではありません。もちろん天然芝はたくさんあるのですが、プロが使用するレベルのものとなると、ほとんど見当たりません。こうした環境を改善するべく、プロ仕様に芝生の整備・管理を行うパートナーを探すことから検討をしています。

二つ目の改善点はスタッフへの投資です。前回も書きましたが、今大会を終えて、スタッフ次第で事の正否は決まるものだと実感しました。今回は十数人でチームを編成し運営に当たりましたが、この大会をより大きくしていくために、どこを補強すべきかも見えました。今回の大会で得た利益を最大に投資する先は人材になると思っています。

今回のスタッフは、国際大会はおろか、サッカーの大会の運営に携わるのは初めてだというスタッフが大半を占めました。そのためどうしても「手作り感」が出ていました。大会開催の初期段階から関わり、身を持って経験を積んだスタッフに加え、これをさらに層を厚く、パワーアップしていく必要があります。そうしなくては、世界に出ていくものにはならないですし、ここに投資を最もしないといけないと考えています。

これまで、目の前のキャッシュに判断を誤る経営者も見てきましたが、あくまでも、継続を見据えたパシフィック・リムカップであると考えたとき、スタッフに投資をし、気持ちよく働いてもらわないと先の広がりがありません。

三つ目は試合の質の向上です。プレシーズンなので、各チームともテストマッチの要素が強かったのですが、これをいかに真剣勝負に近づけるかというのも課題です。より真剣勝負として取り組んでもらえるよう、優勝賞金や個人賞などを設けることも視野に入れています。

大会主催者としては単なるトレーニングマッチからモチベーションを少しでも上げるような厚みを加えないといけないと考え、来年度の予算編成では、ここにも予算を割けるように営業努力をしていきます。

地元と一体となり
大会を育てていく

そして四つ目、地元のサポートをもっと得ることです。この大会はハワイに支えてもらわないと長期的な成功はありえないと考えています。実は、今年度の大会ではあえてハワイの地元企業に営業をしませんでした。2008年にこの大会の前身となる大会を実施してはいるといっても、具体的な前例がない、ある意味実態のないものを売ることになるわけです。ですので、まず、大会を観て、触れて、感じてもらった上で、スポンサーになっていただけるかどうかの会話をしようと考えたからです。

全ては将来を見据えた大会の資産価値向上のためで、単年の損益計算書に囚われ過ぎずに、いかに大会の価値を上昇させていくかがポイントです。2019年度からは、地元ハワイのパートナーを増やしていくことで、ハワイに支えられた、環太平洋のシンボルとなる大会に成長させたいと考えています。

来年度大会開催まであと10カ月あります。ですが、時間はあっという間に準備で過ぎていきます。次回は初めて半年間以上かけて準備を進めることができます。これまでは、さまざまな交渉を短い時間の中で同時に並行し、直前で白紙に戻るといった悔しい思いもしました。

次回はそうはならないように、今年の大会の余韻にいつまでも浸らず、引きずらずに、切り替えて進んでいきたいと考えています。

「パシフィックリムカップ2018Powered by UNDER ARMOUR」は、ハワイの地元紙、スター・アドバイザー(2月7日付)でも大きく取り上げられた

中村武彦

中村武彦
マサチューセッツ大学アマースト校スポーツマネジメント修士取得、2004年、MLS国際部入社。08年アジア市場総責任者就任、パンパシフィック選手権設立。09年FCバルセロナ国際部ディレクター就任。ISDE法科大学院国際スポーツ法修了。FIFAマッチエージェント。リードオフ・スポーツ・マーケティングGMを経て、15年ブルー・ユナイテッド社創設。

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