2018/02/09発行 ジャピオン953号掲載記事

中村武彦のプロスポーツから見る経営学

第24回 パシフィックリムカップ


悲願の大会の復活
単年で終わらせない

 この原稿をハワイで書いています。以前本稿でも紹介した「パシフィックリムカップ」(2月8日~10日開催)の準備のためにここにいます。大会のパートナーホテルのハイアットリージェンシー内に大会本部を設置し、スタッフ一丸となって頑張っています。

 以前も書きましたが、この大会は、マサチューセッツ州立大学アマースト校の大学院時代に書いた私の卒論がもともとの土台になっています。そしてメジャーリーグサッカー(MLS)に入社し、3年後の2008年に第1回を「パンパシフィック選手権」という名のもと開催しました。デービッド・ベッカム氏の参加があり、大会はJリーグ、ガンバ大阪の優勝で幕を閉じ、大成功を収めました。

 その後、他のオーナーがMLSからこの大会を買い取り、舞台はロサンゼルスに移りました。09年にロサンゼルスで開催されたこの大会は、プレシーズンキャンプを行うにはまだ肌寒いことや、アジアのチームが参加するには移動距離が遠いこともあって、ハワイでの開催のときのような成功には至らず、この大会は一旦終了することになりました。

大会の復活のため
自らオーナーに

 私自身もこれを契機にスペインのFCバルセロナに転職、自分の企画をもう二度と見ることはないと思っていました。

 FCバルセロナを退職し、リードオフスポーツマーケティングで勤務しているときにESPNリージョナルから、「またこの大会をハワイで開催しないか」という話をいただき、コンサルタントとして企画立案、そして競技部分の責任者として、12年に再びハワイでこの大会を「ハワイアンアイランズインビテーショナル」という名で復活させました。ただ、そのときは、ESPNの予算や方針の変更により、複数年にわたって継続されることなく、またもや1回の開催で終了をしてしまったのです。

 自分が書いた卒論が基になっているということもあり、そこから6年間この大会のオーナーとなる興行主を探し続けましたが、簡単にはいきませんでした。「もう無理かな」と思うことも多くなっていましたが、最終的に自分が大会のオーナーになって復活させるしかないと考えるに至ったのです。

 リスクを背負うことで失敗したときの不安はもちろんありますが、自分でやらなければ、いつまた他の人の都合で大会が移転されたり、開催中止になるか分からないと考えたからです。

飛躍の原動力となる
スポンサーとの出会い

 自分がオーナーになると決めてから1年ほど経過したとき、タイトルスポンサーとして、アメリカのアンダーアーマーの日本総代理店である株式会社ドームの社長の安田秀一さんと出会いました。新しい価値の創出、スポーツを通して社会を豊かにするという考えを持ち、グローバルな視点を持った人で、大会の意義に共感していただき、17年11月についに「パシフィックリム・カップ」と銘打って、大会の復活を目指すことになりました。

 そこから半年ほどかけてスタジアムの確保、参加する4チームを探し、契約交渉を行い、他のスポンサーへの営業、その他の数えきれないほどの調整や交渉、そして何よりも運営チームの構築に奔走しました。

 実はその前年もスポンサー候補が出てきたものの、最終的には資金を集めきることができず、時間切れで中止を決断しないといけない過去がありました。今回は同じ思いをしたくないと考え、タイムリミットギリギリまで粘り、何とかスタートラインに立つことができたのです。通常国際大会をプロデュースする際は、半年前には概要を発表するものなのですが、11月の発表ということは4カ月前という、これ以上はもう譲れないというところで発表にこぎつけました。

ここまでも奇跡
でも継続開催が目標

 自分が経営するブルー・ユナイテッドは正社員が四人しかいません。そこから、「これは」と思うスタッフたちに仲間入りをしてもらい、最終的に運営チームは総勢13人。予算は08年当時のおおよそ半分。運営スタッフも半分という中で、ニューヨーク、東京、ホノルルの時差、アメリカ、日本、スペインという三つの国から来たスタッフ、それに伴う文化の違い。それを乗り越えてニューヨークから指揮しました。

 これだけでも奇跡といえるのですが、今までの大会のように単発で終わるものではなく、今回は何年も先に続く大会の設計をしており、今度こそは悲願を達成すべく、最後の準備に取り掛かっています。

 この原稿を皆さまが読むときには大会は既に開幕していることと思いますが、どうか応援のほどよろしくお願いいたします。

【大会情報】
Pacific Rim Cup

@ Aloha Stadium, Honolulu

試合は大会公式ウェブサイト(www.pacificrimcup.com)で視聴が可能。ニューヨーク時間では2月8日(木)午後10時から、バンクーバー・ホワイトキャップス(MLS)と、いわきFC(東北社会人サッカーリーグ)、9日(金)午前1時からコロンバス・クルーSC(MLS)と、コンサドーレ札幌(Jリーグ)が対戦。10日(土)午後9時から敗者同士、11日(日)午前12時から勝者同士が対戦する。

パシフィックリムカップは8日から開催中

中村武彦

中村武彦
マサチューセッツ大学アマースト校スポーツマネジメント修士取得、2004年、MLS国際部入社。08年アジア市場総責任者就任、パンパシフィック選手権設立。09年FCバルセロナ国際部ディレクター就任。ISDE法科大学院国際スポーツ法修了。FIFAマッチエージェント。リードオフ・スポーツ・マーケティングGMを経て、15年ブルー・ユナイテッド社創設。

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