2018/01/12発行 ジャピオン949号掲載記事

中村武彦のプロスポーツから見る経営学

第23回 日本のスポーツビジネス


スポーツビジネス発展
日本でも人材育成盛ん

 先日、パシフィック・リーグ・マーケティング(PLM)が主宰をするビジネススクールに招かれて講義を行いました。これはプロ野球パ・リーグが同リーグに所属する球団の職員向けに、2017年のオフシーズンから開講しているスクールで、米国のスポーツビジネスや一般的なビジネスについて学ぶことができます。

 その目的は、①業界全体の人材育成、②業界内人材流動性促進による新規人材の確保、③上記による株主への価値貢献としています。

 受講する球団側としては、①大リーグ(MLB)をはじめ、米国のスポーツビジネスを体系的に学ぶこと、②球団ビジネスに直結する一般的なビジネスを体系的に学ぶこと。さらに、③球団間の人材横連携を深めることができます。そして、ここで学んだ知識を活用し、各領域で明確なアウトプットを出すことをゴールとしています。

 スポーツ分野にフォーカスした講座は日本国内でのスポーツビジネス発展に伴って、最近多く開催されるようになりました。

 Jリーグでは、私自身が海外事業開拓という立場から講座企画立案にかかわっているスポーツ・ヒューマン・キャピタルでは、球団職員だけでなく一般向けに開放した「教育・研修コース」を通じて、「スポーツ経営人材育成」をはじめ、スポーツ組織の持つさまざまな課題を解決するパートナーとしての役割も果たしていこうと考えています。

 特に、「教育・研修コース」は、スポーツ経営人材の育成に留まらず、「スポーツに携わっていきたいと思う人」と「スポーツの場」とのマッチングにも注力するという特徴があります。

PLMでの講義

 PLMの講座は、各球団が人を米国に視察に行かせるためには日程的にも費用的にも限界があること、また、米国視察に行っても、時間に限りがあり、本当に有益な情報を得られていない可能性があるため、ならば日本で開催しようという発想です。その中で、野球界の関係者が米国視察をしても、訪問することがないMLS(メジャーリーグサッカー)の戦略を話してほしいということで声を掛けていただきました。内容は以前もこのコラムで解説しましたが、MLBや他のメジャースポーツにもない独自の枠組みや戦略を構築しているMLSの特徴について。さらに昨今、米国で若年層や移民層を大きく取り込んでいるMLSが、昔サッカープロリーグが破綻した経験を生かし、どうやったら全体最適でリーグ経営やクラブ経営ができるかを徹底的に考えて実行していることなどを話しました。

 米国のスポーツビジネスではチームのオーナーが個人であることが多く、投資的意味合いが非常に強く、またそれを可能にする1部リーグ、2部リーグ間の昇降格がない仕組みだからこそ成り立つ考え方が多く存在します。米国外の大部分のリーグでは理論上、自分でチームを作って一番下のリーグから勝ち続ければ1部リーグに昇格できたり、負けると下部リーグに降格して収入が減るという、コントロールできない「勝敗」が大きな影響力を持ちます。そのため投資をしづらいだけでなく、強化費をふんだんに確保していないといけません。

 これに対して米国のプロスポーツは入れ替え戦がないので、限られたオーナーしかリーグに参加できず、どんなに負けても降格することがないため、勝敗以外のインフラやフロントスタッフに安定的に投資ができる仕組みにについても語りました。またリーグを限られたオーナーたちで共同経営をするので、リーグの最大の魅力である戦力均衡化がコントロールすることができ、皆で協力してリーグの価値を高めることが可能となります。

 これをそのまま日本に当てはめることは乱暴ですし、仕組み的に不可能ですが、そのロジックだけでもお伝えすることが出来ればと考え、講義をさせていただきました。特に米国内でもこのリーグ共同経営というものを極端化しているのがMLSで、リーグとチームの共存共栄が大前提にあり、どこかのチームだけ自分さえよければいい、という考えのもと独り勝ちをしても面白くないだけではなく、リーグの価値は上昇しないということを解説しました。

発展が加速

 私が日本を飛び出した2002年にはスポーツビジネスを学ぶ環境は日本には皆無でしたが、約15年経過した今、授業として学べる大学が増えました。またJリーグやパ・リーグのように、スポーツ団体自らこのようなプログラムを立ち上げています。

 こうした、興味がある人が誰でも学べるという状況を見ると、日本におけるスポーツビジネスの拡大は、ますます加速化するのでは、と期待が高まります。

スポーツビジネスの発展に伴い、日本でも人材育成を目的としたパシフィック・リーグ・マーケティング(プロ野球パ・リーグ)、スポーツ・ヒューマン・キャピタル(Jリーグ)などが立ち上げられている

中村武彦

中村武彦
マサチューセッツ大学アマースト校スポーツマネジメント修士取得、2004年、MLS国際部入社。08年アジア市場総責任者就任、パンパシフィック選手権設立。09年FCバルセロナ国際部ディレクター就任。ISDE法科大学院国際スポーツ法修了。FIFAマッチエージェント。リードオフ・スポーツ・マーケティングGMを経て、15年ブルー・ユナイテッド社創設。

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