2017/12/08発行 ジャピオン942号掲載記事

中村武彦のプロスポーツから見る経営学

第22回 新しい枠組みの大会


リーグ横断して対戦
「環太平洋」の強化

 この度、「パシフィックリムカップ」を来年2月8、10日に開催することになりました。これは、日本の2クラブと、アメリカのメジャー・リーグ・サッカー(MLS)の2クラブが、毎年ハワイのアロハスタジアムで対戦する大会です。

始まりは卒論から

 実はこの大会の草案は、私自身が大学院時代に書き上げた卒業論文にまでさかのぼります。この卒業論文を草案にして、MLS勤務時代の2008年に、第1回を実施しました。

 アイデアとしては、アメリカ国内で、アジアのチームが参加する定期的な大会は存在せず、一方、日本でもアメリカのチームと対戦する定期的な大会もないことから、この二つを掛け合わせればユニークなのではないかと考えたのが発端です。

 日本でプレーする選手は、チームがAFC(アジアサッカー連盟)アジアカップに出場し、アジアのチームと対戦することはあっても、日本代表に選出されない限り、非アジア圏のチームと試合をする機会はほとんどありません。ワールドカップ(W杯)ではアジア予選を勝ち抜いた後は、アジア以外の国々と対戦をしないといけないのが現実です。

 パシフィックリムカップ大会は、そうした状況にある日本人選手たちに、国際的な試合経験をもっと積んでもらい、日本サッカーのレベルを上げてほしい、また日本サッカーが国際化してほしいという思いが根底にあります。

環太平洋という枠

 世界各地にサッカーの国際大会は存在します。ワールドカップはもちろんですが、強豪クラブがひしめく欧州ではUEFAチャンピオンズリーグがあり、こちらも実力あるクラブが多い南米にはコパリベルタドーレスなど、リーグを横断する大会が存在します。

 環太平洋地域に目を向けると、JリーグもMLSも開幕してから約20年強。オーストラリアのAリーグやその他のリーグも若いものが多く、サッカーにおいては新興の地域です。

 ですが、欧州のクラブが毎年交互にアジアツアーや、北米ツアーを実施していることからも分かるように、この地域はプロサッカー界にとって、「ラストマーケット」として商機があると認識されています。だからこそ、この地域のリーグが連携し、大会を開催することは、将来のサッカーの発展にもつながると考えています。

ハワイで開催する意味

 もう一つ大きな特徴としてはハワイが開催地である、という点です。まず、環太平洋地域のチームが集結するのに位置的に公平である点が挙げられます。

 また、ハワイと言えばリゾート地の印象が強いですが、実はスポーツの切り口で見ると、プロアスリートたちがトレーニングをするのに適した環境と施設、そしてホスピタリティーがあります。

 ハワイでは毎年催されていたNFLのオールスター戦、プロボウルが撤退し、メジャーリーグのプロスポーツ観戦の機会が減りました。そうした背景からも、パシフィックリムカップの開催は、地元からは厚い歓迎を受けています。

 また日本とのつながりが深いハワイで、日米両国からチームが参加することは、観光業にも貢献できると考えています。

さらなる狙い

 スポーツビジネスの観点から、この大会のメリットを数々挙げてきましたが、もう一つの狙いは、Jリーグはじめ日本サッカーとMLSの交流を促進させることにあります。

 両リーグの海外事業開拓のコンサルティング業務を請け負い、日夜奮闘していますが、まだまだ双方の交流が非常に少ないことは否めません。この大会が両リーグがさらに近づくためのプラットフォームになることも願っています。

 さらに言えば、JリーグはAFCのリーダー的な存在であり、MLSはCONCACAF(北中米カリブ海地域)のリーダーと言えます。この二つの連盟の距離が縮まることで、将来的にもっと力を持ち、UEFAなどとも肩を並べる存在にしたい。大会の位置付けは、プレシーズンの親善大会ではありますが、それぞれのリーグ、連盟のプライドを賭け真剣勝負として見応えのある試合が繰り広げられるはずです。

 今回、アンダーアーマー日本総代理店のドームコーポレーションの理解と支援があり、ハワイでは6年ぶりとなるMLSとJリーグのクラブの対戦が実現しました。

 日本からの出場クラブは今年、ハワイ州と姉妹提携した北海道からコンサドーレ札幌。ドームコーポレーションがいわき市と共に立ち上げ運営している、いわきFCは、東日本大震災時アメリカから受けた「トモダチ作戦」へのお礼の意を表すために参戦。

 MLSからは今季西地区プレーオフに進出の古豪バンクーバーホワイトキャップスに、東地区決勝まで進出をしたコロンバスクルーという名門クラブが二つそろって参戦します。

パシフィックリムカップが行われるアロハスタジアム(ホノルル)。2008年の同大会もここで開催された(www.pacificrimcup.com)

中村武彦

中村武彦
マサチューセッツ大学アマースト校スポーツマネジメント修士取得、2004年、MLS国際部入社。08年アジア市場総責任者就任、パンパシフィック選手権設立。09年FCバルセロナ国際部ディレクター就任。ISDE法科大学院国際スポーツ法修了。FIFAマッチエージェント。リードオフ・スポーツ・マーケティングGMを経て、15年ブルー・ユナイテッド社創設。

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