2017/08/11発行 ジャピオン928号掲載記事

中村武彦のプロスポーツから見る経営学

第18回 eスポーツ


リアルにとどまらぬ
プロスポーツの市場

 皆さんは「eスポーツ」というものをご存知でしょうか? コンピューターゲームやテレビゲームで行われる対戦型ゲーム競技のことで、プロのプレーヤー(ゲーマー)たちが王座をかけて対戦するものです。

 読者の中にもゲーム会社「ElectronicArts(EA)」が制作販売しているサッカーゲーム「FIFA」をプレーしている方も多いかも知れません(ジャピオンの田中編集長もプレーヤーの一人だそうです)。このゲームではプレーヤーとして登録している人の数がなんと、2100万人といわれています。

 日本では、EA社のサッカーゲーム「FIFA」や、ブリザードエンターテインメント社の対戦型シューターゲーム「Overwatch」などのゲームを採用し、プロプレーヤーたちが対戦する「プロ日本eスポーツリーグ」が2016年に立ち上がりました。特にこの「FIFA」は本格サッカーゲームと言われるだけあって、本物のプロサッカーチームとの親和性もあり、海外でもプロサッカーチームが自身のeスポーツ部門を立ち上げ、プロのeスポーツプレーヤーと契約するようになってきました。有名なところで言えば、イタリアのASローマ、ドイツのウォルフスブルグ、スペインのバレンシア、フランスのパリ・サンジェルマン、イングランドのマンチェスターシティー、アメリカのニューヨークシティーFCなど、その数は65クラブにも及びます。

 日本でも東京ヴェルディが唯一のJリーグチームとしてeスポーツチームを立ち上げています。

マイキー&黒豆
プロ選手と契約

 世界でのeスポーツの盛り上がりと、サッカー界におけるeスポーツとのコラボレーションを見る中で、特に海外にいると、その急進性は見逃せないものがありました。

 そこで、弊社としてもまずは日本国内におけるスター選手である嵯峨野昴(マイキー)選手、そして森本貴仁(黒豆)選手とマネジメント契約をすることを決断しました。マイキー選手に関して言えば、日本でプロリーグが立ち上がる前から自身で海外の大会に出場して勝利を重ねてきたスター選手で、EAジャパンの公式FIFAアンバサダーでもあり、2016年の国際大会ではベスト16入りを果たしました。

 日本では昔から、コナミ社の「ウイニングイレブン」というサッカーゲームが人気で、「FIFA」シリーズのメーンマーケットはヨーロッパとなっています。同時に米国では今後MLSを中心にeスポーツへの動きが出てきましたし、この分野へのプロサッカーチームの進出には弊社としても注目をしているところです。

 日本国内の「FIFA」ないし、eスポーツ市場はまだまだ小規模ですが、将来的な可能性は大きいと考えています。

 今後の課題としては、「いかに 『リアルのサッカー』と『バーチャルのサッカー』 を組み合わせ、より面白い『コンテンツ』として『FIFA』を活用していけるのか」「フットボールクラブというブランドだからこそできるPR施策のツールとしてeスポーツが使えるのか」「海外に向けて、海外フットボールクラブeスポーツ部門のコミュニティーに入っていき、そこでの関係性構築を最終的には『リアルシーン』に落とし込む」といったことを考えています。

 そして主要国際大会に出場していき、クラブの知名度向上を目指すことができればと考えています。

リアルとバーチャル
見逃せない共通性

 弊社の本業は「海外のサッカービジネス」ですから、この事業と、これから大きく伸びようとしている日本のeスポーツを組み合わせることができないものかと考えています。

 試合はオンラインで対戦することになりますが、国ごとに通信状況が異なることで試合の勝敗に影響が出たりと未知の要素もあります。ただ、面白いもので、テレビゲームであっても、国ごとのプレーヤーで、プレースタイルがその国の本物のサッカーのスタイルと類似しているというデータがあり、バーチャルとリアルで共通性が入り混じった展開があります。

 弊社でもeスポーツに取り組もうと決めた当初、周囲にこの分野に詳しい人があまりいなかったため、弊社内の若手社員が1年かけて日々勉強をしてきました。その甲斐あって、少しずつこの分野に関して理解できるようになってきたところです。

 マイキー選手は、先日カタール・ドーハで開催された「FIFAインタラクティブワールドカップ」地域予選の「XboxOne」部門で優勝し、8月16日にロンドンで行われる「FIWC Grand Final」への切符を手にしました。弊社としても初のワールドカップデビューとなります。

 eスポーツは、まだまだ勉強しなくてはならないことだらけですが、弊社のモットーである、「日本スポーツの国際化」に寄与できるように、これから研究を怠らず、取り組んで行きます。

eスポーツは、今やその対戦が世界中の注目の的となっている。(写真は2014年にミラノで開かれたゲームコンベンション「Games Week 2014」の様子)

中村武彦

中村武彦
マサチューセッツ大学アマースト校スポーツマネジメント修士取得、2004年、MLS国際部入社。08年アジア市場総責任者就任、パンパシフィック選手権設立。09年FCバルセロナ国際部ディレクター就任。ISDE法科大学院国際スポーツ法修了。FIFAマッチエージェント。リードオフ・スポーツ・マーケティングGMを経て、15年ブルー・ユナイテッド社創設。

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