2017/03/10発行 ジャピオン906号掲載記事

中村武彦のプロスポーツから見る経営学

第10回 選手のセカンドキャリア(後編)


「元なでしこ」として
新たな進路開きたい

 前回から特別編として、プロスポーツ選手のセカンドキャリアについて、1月からブルーユナイテッド社で働く、元女子サッカー日本代表(なでしこジャパン)の山口麻美さんに話を聞いている。

 けがをきっかけにプレーができなくなったとき、それまで競技に打ち込んできた選手は何を考え、どのような可能性を見出したのかに迫る。

——右膝に大けがを負い、手術のため日本に帰国されましたが、その後の活動は?

 手術後、岡山湯郷ベルに所属し、リハビリをしていましたが、状態が良くなれば出場し、悪化させ、リハビリに戻るという繰り返しでした。完治していなかったので、再度手術を受け、またリハビリと、精神的にも苦しい時期でした。

——2014年シーズンの途中から、古巣の日テレ・ベレーザに復帰、出場も果たしていますが、「次のシーズンも」とはならなかった?

 ならなかったですね。けがをしてから3年間、再びプレーすることだけが目標でした。古巣に戻って、仲間と練習できただけで満足している自分がいて驚きました。トップレベルでプレーするには、常に高い目標と強いモチベーションを持ち続けないと通用しないことが分かっていたので、きっぱりとやめる決断をしました。

——「その先」にどんなことを考えましたか?

 それまではサッカー選手であることで、自分の価値を表現してきたので、プレーできなくなって、選手以外の知識、経験が、何もないと思いました。何か学び、経験し、知識を得たいと考え、フロリダ州立大学に戻り、勉強し直そうと決断しました。大学ではコーチのアシスタントも経験しました。指導者は、これまでの経験と知識を生かして人のお手伝いができるので、やりがいはあるとは思いましたが、「指導者になりたいか」というと感覚的にピンと来なかった。もっと違った形でサッカーに携わる方法はあるんじゃないかと思うようになりました。そこで、ブルー・ユナイテッドのことを思い出し、インターンを申し出る前に自分なりに調べ、代表の中村に直接話を聞きました。

 ただ、同じスポーツ業界にいても選手とコーチの経験しかなく、スポーツビジネス、スポーツマネジメントに関する知識はゼロでしたから、ここで教えてもらい学んだことが多いです。

——選手として球団運営をビジネスとして捉える機会はなかった?

 岡山湯郷ベルに所属していたときは球団事務所で働く機会もありましたが、スタッフは地域の方たちが手伝っていて、ボランティアが主体で、ビジネスという印象は薄かったです。女子と男子のプロスポーツの違いもあると思います。また日米でのスポーツビジネスの規模や考え方も違いますから、そこに属する選手の意識も違うと思います。

——働いて1カ月。これまでどんなお仕事を?

 Jリーグのチームの広報・企画担当、チケットセールス担当の方の当地での視察に帯同しました。球場や球団、当地のリーグに連絡してミーティングをアレンジメントしたり、当日の案内、通訳もしました。またLAギャラクシー・セカンドチームのファイナルトライアウトのために訪れた選手のコーディネートもしました。トライアウトの際には、私自身も選手として大きなチャレンジを重ねて来たので、1日1日、すべてを出し切るようにアドバイスもできました。

——この仕事に携わった感想は?

  スポーツの要素がありながらもビジネスですから、代表の中村の対応や考え方を見て、「ザ・プロフェッショナルさ」に感銘を受ける毎日で、本当に日々勉強になっています。中村からは、「なでしこを経験し、アメリカのスポーツビジネス業界の仕事をしている人は初めてだ」と言われましたが、今は目の前のことをやるのに精一杯なので、この先どうなるかは分かりません。ただ、サッカーに携わっていたいという気持ちは強くありますし、選手で世界を目指してやってきたので、仕事でも世界を舞台にやっていきたいと思っています。女子サッカー選手、元なでしこ選手として、新たなセカンドキャリアの道を開くためにも、ここで成功したいです。

山口麻美(まみ)さん■東京都出身。1999年、日本女子サッカーリーグの日テレ・ベレーザの下部組織メニーナに入団。2002年にトップチーム昇格。05年にフロリダ州立大学に留学し選手としてプレー。在学中はハーマン杯を同大選手として初受賞。07年に日本代表に初招集され代表デビュー。08年にスウェーデンのウメオIKに入団しリーグ優勝(2回)、UEFA決勝戦進出を経験。09年に米女子プロリーグのアトランタ・ビートからドラフト指名を受け入団。10年にスウェーデンのハンマルビーIFに移籍しプレー。帰国後、岡山湯郷ベルを経て日テレ・ベレーザに復帰、2015年2月に引退。今年1月からブルー・ユナイテッド社でインターンを始め、3月に正式に入社。

中村武彦

中村武彦
マサチューセッツ大学アマースト校スポーツマネジメント修士取得、2004年、MLS国際部入社。08年アジア市場総責任者就任、パンパシフィック選手権設立。09年FCバルセロナ国際部ディレクター就任。ISDE法科大学院国際スポーツ法修了。FIFAマッチエージェント。リードオフ・スポーツ・マーケティングGMを経て、15年ブルー・ユナイテッド社創設。

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