2017/01/13発行 ジャピオン898号掲載記事

中村武彦のプロスポーツから見る経営学

第7回 スポーツビジネスの今


政府、球団巻き込み
人材育成機関が創設

 日本では「スポーツを通じた社会の発展」を目指し、2015年10月1日にスポーツ庁が創設されました。

 同庁は関係省庁の中核となりスポーツ行政を総合的・一体的に行うことを使命としています。創設に当たり、鈴木大地初代長官がスポーツ政策の課題の一つとして、「スポーツビジネスの拡大」を標榜したことは、私自身にとっても非常に感慨深いものでした。

 私がスポーツビジネスを学ぶため、発祥の地アメリカに来たのが2002年のことです。当時、日本では実践的に学べる場所がなかったために選んだ道でした。あれから15年が過ぎ、Jリーグ、Bリーグ、プロ野球など日本のプロスポーツに対する考え方が、ここまで飛躍的に成長したことは喜ばしいことです。


日本政府が主導で
スポーツ産業発展

 産業が成長するためには言うまでもなく、従事する人材が必要です。日本ではまだそこまで手が回っていない状態でした。

 「これからはスポーツで稼ぐ時代だ」と言う鈴木長官は、同庁の1周年記者会見で、スポーツ市場規模を現在の5・5兆円から2015年までに15兆円にする目標を掲げました。そのために、経済産業省と共同で16年2月にスポーツ未来開拓会議を立ち上げ、スポーツ産業の活性化の方策について議論を行っています。

 同6月には、中間報告で、鈴木長官は、「これまで訴えてきたのは、スポーツにはビジネスとしての潜在力があり、スポーツ市場を拡大し、その収益をスポーツ団体や環境の充実に再投資する、という好循環を生み出し、国民の健康増進や地域の活性化を図ることができる、ということです」と述べ、政府が「スポーツの成長産業化」を戦略として位置付けたことも発表しました。

 そんな中、Jリーグが日本でのスポーツビジネスに携わる人材育成の将来を見据え、村井満チェアマン主導の下、15年から立命館大学と連携してスポーツクラブの経営人材育成プログラム「Jリーグ・立命館『JHC教育・研修コース』Jリーグ・ヒューマン・キャピタル(JHC)」を開講しました。

 スポーツマネジメントを大学の学科として備えることは一般的ですが、プロスポーツ団体が自らのノウハウや、アクセスを用いてこのようなプログラムを始めたのはアジアでは先進的な取り組みです。


日本の強みを生かす
育成機関の特徴

 このプログラムには他にはまねできない大きなことがいくつかあります。一つ目は川淵三郎キャプテン、村井Jリーグチェアマン、岡田武史氏、大河正明Bリーグチェアマンなど、スポーツ組織を率いる豪華な講師から、高い視座のもとでの選択や判断の裏側を教えてもらえます。決してきれいごとだけではない裏側の苦悩などに触れられるのはこのコースの特長です。

 二つ目はヤフー! ジャパンや、経営共創基盤などビジネス界のトップランナーに協力を仰ぎ、経営に欠かすことのできない知識やリアルを教えてもらうことができます。

 三つ目に米国内のスポーツマネジメントでトップを走るマサチューセッツ州立大学アマースト校(UMASS)、スペインISDE法科大学院との提携をベースにした質の高い講義とインターンシップなどが展開されます。

 四つ目にモジュールごとにテーマを設定し、実際のJクラブ社長やスポーツ組織のマネジメント経験者に対してプレゼンテーションを行い、その場でフィードバックをもらえます。

 五つ目に成績優秀者と条件が見合う卒業生を対象に、希望を勘案したうえでスポーツ界へのキャリアデザイン支援を行っています。

 六つ目にクラブやリーグの実際のデータや資料、実際に今起こっているスポーツ界での課題やテーマをもとに進められ、そして机上の空論にならないように実際のスポーツ現場に出向いて参加するフィールドワークなど一般的な講座ではまねできない構成です。


サッカーに留まらず
全スポーツ界に貢献

 世界に目を向けますと、国際サッカー連盟(FIFA)が同様のコンセプトで通称「FIFAマスタープログラム」というものを2000年に設立、同様にレアル・マドリーMBAをエウロペア大学とレアル・マドリードの提携で開講しています。

 JHCでは私は「国際事業開発」を任されており、JHCの運営から、営業マーケティング、そしてUMASSやISDE、MLSなど海外主要機関との提携をすることでゲスト講師や教材など海外の秀逸なコンテンツの仕入れ、監修、展開を手掛けています。

 この通りJHCはここまではJリーグを中心に運営されてきましたが、冒頭に出て来たスポーツ庁との連携が深まる中で、Bリーグや、プロ野球などとも連携し、昨年よりサッカー界だけにとどまらない、競技の枠を超えた、将来のスポーツ経営を担う人材の開発と育成を行い、社会に大きく貢献していくスポーツ・ヒューマン・キャピタル(SHC)として独立しました。これは今年の5月より開講予定です。

スポーツヒューマンキャピタルは、将来のスポーツビジネスを担う人材育成を行う

中村武彦

中村武彦
マサチューセッツ大学アマースト校スポーツマネジメント修士取得、2004年、MLS国際部入社。08年アジア市場総責任者就任、パンパシフィック選手権設立。09年FCバルセロナ国際部ディレクター就任。ISDE法科大学院国際スポーツ法修了。FIFAマッチエージェント。リードオフ・スポーツ・マーケティングGMを経て、15年ブルー・ユナイテッド社創設。

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