2016/06/10発行 ジャピオン868号掲載記事

中村武彦のプロスポーツから見る経営学

第1回 スポーツマネジメントとは

スポーツはビジネス
その収益源はどこか

 ニューヨークにはプロスポーツ球団がいくつもあります。読者の皆さんの中にも何かの競技の、どこかのチームのファンで、熱心に応援している人や、スタジアムでもよく観戦するという人も多いと思います。当コラムでは、プロスポーツの「ビジネスとしての側面」を紹介することで、より一層プロスポーツへの皆さんの関心を高めること、また一見特殊に見えるビジネス形態のからくりを解説し、お仕事でも役立つヒントを提供できればと思っています。

 まず、本題に入る前に私が何者か、なぜこのコラムを書くことになったのか、自己紹介を交えてお話しいたします。私は昨年、スポーツマネジメント会社、ブルー・ユナイテッドを立ち上げました。主にMLS(メジャーリーグサッカー)の国際事業コンサルタント兼スカウト、Jリーグ・ヒューマンキャピトルの国際事業開発担当、コロンビア大学での招待講師、FIFA公認のマッチエージェントとして活動しています。大きなくくりで言いますと、日本と海外サッカーの架け橋になる目標を掲げて、さまざまなプロスポーツ関連事業に携わっています。

欧州では文化・歴史
アメリカでは投資対象

 プロスポーツの位置づけは、国によって変わってきます。サッカーを例に取ってみると、欧州は町の文化や歴史、シンボルとしてチームが存在します。ですからイングランドプレミアリーグのマンチェスター・ユナイテッドが身売りしてロンドン・ユナイテッドになるということは限りなくないといえます。

 しかし、アメリカでは投資対象としてフランチャイズがどんどん売買され、チームが移転を繰り返します。ですから、欧州とアメリカで考えても、プロスポーツビジネスの根底やスキームも異なってきます。

 そうした状況にあるアメリカのプロスポーツ球団は、時に地盤もなければ何もない新しい都市に移転し、ゼロからビジネスを立ち上げ、お客さん獲得を始めなくてはなりません。こうした背景から、スポーツマネジメントが生まれ、今もなお進化し続けているのです。

勝利が商品でない理由
強いチームは安泰か?

 スポーツ「ビジネス」というくらいですから、もちろん慈善活動ではありません。プロスポーツはお客さん(ファン)に、商品(試合やチーム関連商品など)を販売して収益を得る営利事業です。

 その上で、魅力的なチームを作るにはどうしたらよいか考えてみましょう。プロスポーツファンの人は、球団経営者の視点で見る理解が深まり、より楽しむことができますよ。

 スポーツビジネスにおける収益源は、主に次のようなさまざまなものがあります。

①チケットの売り上げ、②放映権の売り上げ、③スポンサー料金の売り上げ、④スタジアムでの物品やフードなどの売り上げ、⑤チームのライセンシングのロイヤリティー料金など。

 多くのチームは、強いチームを作ることを目指します。そのために、より良い選手(その多くが高額年俸を払う必要があります)と契約するために、収益を拡大させます。逆に収益を拡大できなければ、「強いチーム」を構築することができないと考えるでしょう。

 ちなみにここでいう強いチームとは、所属するリーグで常に優勝争いに食い込んでくることを指します。

 ただし、どんなスポーツでも勝つこともあれば、負けることもあります。八百長でもしない限り、「勝利」という要素は、100%保証されません。リーグ優勝も、優勝は必ず1チームで、その他は負けることが決まっています。ですから、「勝利」は「商品」として経営土台にすることはできず、あくまで魅力でしかないのです。実際のところ、強いチームを作ればファンが増えて経営が安定するわけでもありません。強さだけで経営ができるのであれば、ビジネスとして携わる経営者は不要なはずです。

 スポーツビジネスにおいては、勝つことで儲けようと考え、最初から選手に全て資本をつぎ込んでしまうと経営破たんする可能性が高くなり、非常に不安定な経営となります。

 勝利、強さだけが商品ではないというのが、スポーツ経営の難しさでもあり、面白さでもあります。

 次回からは、各球団の経営方法などをより具体的に見ていく。

プロスポーツチームの主な収益には、チケット、放映権、スポンサー料金、スタジアムでの売り上げ、ライセンシングのロイヤリティー料金などがある

中村武彦

中村武彦
マサチューセッツ大学アマースト校スポーツマネジメント修士取得、2004年、MLS国際部入社。08年アジア市場総責任者就任、パンパシフィック選手権設立。09年FCバルセロナ国際部ディレクター就任。ISDE法科大学院国際スポーツ法修了。FIFAマッチエージェント。リードオフ・スポーツ・マーケティングGMを経て、15年ブルー・ユナイテッド社創設。

今週の用語解説

スポーツマネジメント

スポーツ、イベントに関連したビジネスの経営に必要な知識や技術を学ぶ学問として確立している。アメリカでは大学および大学院の学科として一般的になっている。プロスポーツの球団やリーグの事業の経営方法から、スポーツに関連したマーケティング、施設運営、スポーツ経済学、スポーツ法学、スポーツ広報、イベント運営、スポーツ財務などを学ぶ。日本の大学でも近年、経営学部の中で、スポーツマネジメント学科を設ける大学が増えている。ちなみに、北米のプロスポーツ事業の収益はフォーブス誌などの報道によるとおよそ600億ドルに上る。

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