2016/05/27発行 ジャピオン866号掲載記事

堀古英司の経済ミラクルキャッチ!

最終回 リスクを取るに当たって

正しい知識を持った
リスクテイカーに


 世界的に金利がゼロ、またはゼロに近い状態が続いている中、リターンを得ようと思えばリスクを取らなければなりません。ハイリスク・ハイリターン、ノーリスク・ノーリターンの法則は、金融の世界では当然のこと。皆さんの生活においても、多くの場面で当てはまると思います。

 特にアメリカは日本に比べてより、取ったリスクが公平に報われる環境が整っていると思いますので、「よし、リスクを取ってみよう」という方も多いと思います。

 しかし前回書かせていただいた「短期勝負に出ない」「リスクの整理」の他に、リスクを取る前に気を付けていただきたいことが二つあります。

「想定外」とは
分析不足の言い訳

 一つは、リスクとリターンのバランスを徹底的に分析した後か、ということです。世の中には、リターンがリスクに見合うように見えても、実はリスクは思っていたよりずっと高かった、という事象はたくさんあります。

 リスクを取ってみたものの、実際には想定外のもっと大きなリスクが存在していた、となれば、そもそもリスクを取らない方がよかったということになります。そこでもう一度、あらゆるリスクをつぶせているか、想定外のリスクは無いか、を徹底的に分析してみて下さい。

 例えば金融危機の前、アメリカの銀行は大手自動車メーカーのゼネラルモーターズ(GM)に多額の融資をしていました。そして多くの銀行は「工場や土地を担保に取っているから、もしものことがあっても大丈夫」という姿勢でした。しかし2009年、いよいよGMが連邦破産法を申請しアメリカ政府が救済に入るという時、政府代表の交渉人は銀行団にこのように言いました。

 「政府が救済せずにGMの工場周辺が廃墟になったら、担保である工場や土地の価値は二束三文になり、銀行には多額の損失が発生するだろう。それが嫌だったら債権カットに応じろ」

 担保を取っているから融資は安全と踏んでいた銀行は、結局これによって大幅な債権カットに応じざるを得なくなったのです。

 私は「想定外」というのは分析不足の言い訳だと考えています。よく分析しておれば事前に想定できた事象を想定できないでいると、リスクとリターンのバランスが大幅に崩れてしまうということです。

全てを失わないよう
リスクをコントロール

 二つ目は、もしもの時に取り返しの付かなくなるような大きなリスクを取ってはならない、ということです。1990年代前半、私は初めてマンハッタンで、住宅ローンを借りてアパートを購入しました。その後、不動産価格は値上がりを始め、その値上がり益を元にまた住宅ローンを借りる、ということを繰り返しているうちに、一時アパートを20件ほど保有していたことがありました。不動産は値上がりを続けていましたし賃貸収入は入ってくるので、当初は毎月利息だけで数万ドルという支払いもそれほど気になりませんでした。

 しかし2000年のある日、その毎月数万ドルの利払いができなくなる夢を見たのをきっかけに急に恐ろしくなり、その後数年で大半のアパートを売却しました。もしも金融危機の時にもまだそれらのアパートを保有していたら、間違いなく首が回らない状態になっていたと思います。

 特に若い人は取ったリスクが失敗に終わったとしても、それが致命的なものでなければいくらでも再挑戦のチャンスはあります。そのためにもリスクを取る際にも、失敗時に全てがダメになってしまわないように、あらかじめ取るリスクをコントロールすることが重要だと思います。

 さあ、ここまでリスクを取る準備が出来たら、もう怖いものはありませんね!アメリカンドリームを実現すべく、皆さんがリスクテイカーとして成功し、さまざまな分野にその成果を還元していかれることをお祈りしています。

 1年間の短い間でしたが、今回で本コラムは最終回となります。これまでお読みいただきまして、ありがとうございました。

アメリカンドリームを実現すべく、リスクテイカーとして成功しよう!

堀古英司

堀古英司
■ニューヨークに拠点を置く投資顧問会社、ホリコ・キャピタル・マネジメントLLC最高運用責任者。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」をはじめ、メディアに多数出演。著書に「リスクを取らないリスク」。関西学院大学時代、アメフト部で活躍。

今週の用語解説

GMの救済

ゼネラルモーターズ(GM)は1908年に創業。2007年の自動車販売台数は、トヨタ自動車グループと僅差で世界一(937万台)であったが、サブプライムローン問題に端を発する世界金融危機の影響で、北米での売上が大きく落ち込み、09年6月1日に連邦倒産法第11章の適用を申請し国有化された。13年12月9日に米財務省が保有するGMの株式を全て売却し、国有化が終了した。公的資金として投入した500億ドルのうち、390億ドルは株式の売却で回収し、残りはGMの資産の売却で回収した。

NYジャピオン 1分動画


利用規約に同意します
おすすめの今週末のイベント