2016/03/11発行 ジャピオン855号掲載記事

堀古英司の経済ミラクルキャッチ!

第22回 アメリカ経済、リセッション入り?

来るの? 来ないの?
リセッションの恐れ


 最近、市場関係者の一部で、アメリカ経済が近々リセッション(景気後退局面)入りしてしまうのではないか、との見方が出ています。

 一般的にリセッションとは、2四半期連続でGDP(国内総生産)がマイナス成長になることを指しますが、公式には全米経済研究所がその判断を下すことになっています。経済がリセッション入りすると、皆さんのビジネスや生活を取り巻く環境にもさまざまな変化が出てきます。企業が倒産して受け取れると思っていた収入が受け取れなくなったり、預けていたお金が返ってこなくなったり、最悪の場合、いきなり会社からリストラされてしまうこともあるでしょう。

 近々リセッション入りが予想されるなら、住宅など大きな買い物を検討している方は、いったん見送った方がお得かもしれません。景気に上下動の波があることは避けられないので、もし本当にリセッションが訪れるなら、そのタイミングを知ることは、多くの方にとって有益だと思います。

ポイントとなるのは
時期、経済指標、株価

 なぜ近々リセッション入りの見方が出ているのか?いくつか理由が挙げられます。第一に、左上の図でご覧いただける通り、過去50年、リセッションは平均6年半に1度訪れています。前回のリセッション終了が2009年6月でしたので、平均的には、今年の初めからリセッションが始まっていてもおかしくない、というものです。

 第二に、昨年後半から製造業を中心にさえない経済指標が相次いでいて、これが次第に悪化していくという見方。第三に、株価は経済の先行指標と言われますが、その株価が年初から世界的に下落している、これはリセッションの予兆だ、という見方です。

 ただ結論から申し上げますと、私はアメリカ経済が近々リセッション入りする可能性は極めて低いと考えています。前述の通り、リセッションというのは、GDP成長率が2四半期連続でマイナスにならなければなりません。アメリカの場合、GDPの7割は個人消費ですので、実質的には個人消費がマイナスにならないとリセッションは起こらないということです。

個人消費は好調
金利も理由にならない

 その個人消費の現状はどうかというと、絶好調です。特にこの1年半ほどの原油価格急落によってガソリン価格が低下し、このメリットは時間を掛けてアメリカの消費者に広く及んでいくはずですので、この先も、個人消費が落ち込む理由は特に見当たりません。 歴史的には、オイルショックなど、原油価格高騰によってリセッションに陥ったケースはよく見られますが、その逆はないのです。

 また過去のパターンを見てみますと、リセッションは金融引き締めの最終局面からしばらくして起こっています。中央銀行が金利を引き上げ過ぎて、企業の利払い負担が増えたり資金を借りにくくなったり、また銀行の資金調達コストが上がって貸しにくくなったりして次第に景気が落ち込んでいくというパターンです。

 しかし今回はまだ、昨年12月に1度金利を上げただけで、金利はまだまだゼロに近い状態です。

時代の進歩と共に
景気の波は穏やかに

 それでも景気のサイクルから言って、6年半が経過したらそろそろではないか、という意見もあるかもしれません。しかし今一度左上の図をご覧いただければ、金融危機を除いては、数十年前に比べて最近の景気の波は緩やかになっていることがお分かりいただけると思います。

 これは恐らく、テクノロジーの発達によって情報が早く行き渡るようになって企業が柔軟に在庫調整をしやすくなり、昔のように企業が在庫を抱えてにっちもさっちもいかなくなる、という状況が起こりにくくなっていることによるものと思われます。実際リセッションに至らない軽度のマイナス成長なら、11年にも14年にも既に起こっています。ですので今回は皆さんに、こう申し上げたいと思います。

 「安心して下さい。今回リセッションは来ませんよ!」

堀古英司

堀古英司
■ニューヨークに拠点を置く投資顧問会社、ホリコ・キャピタル・マネジメントLLC最高運用責任者。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」をはじめ、メディアに多数出演。著書に「リスクを取らないリスク」。関西学院大学時代、アメフト部で活躍。

今週の用語解説

GDP(国内総生産)

Gross Domestic Productの頭文字。国内で一定期間内に生産されたモノやサービスの付加価値の合計額。「国内」であるため、日本企業が海外支店などで生産したモノやサービスの付加価値は含まない。GDPは、その国の経済力を計る、最も重要な数値となっており、その伸び率によって、「経済成長率」が計算される。GDPには名目GDP(実際に取り引きされている価格で推計されたもの)と、実質GDP(物価の変動分を除外して計算したもの)がある。経済成長率を見るときは、主に実質GDPを見る。

NYジャピオン 1分動画


ただいま配布中発行

巻頭特集
バッグス・バニーやトムとジェリー、そしてディズ...

   
Back Issue 9/14/2018~
Back Issue ~9/7/2018
利用規約に同意します
おすすめの今週末のイベント