2016/02/26発行 ジャピオン853号掲載記事

堀古英司の経済ミラクルキャッチ!

第21回 ドル円相場が日本の株価に与える影響

進む円高ドル安
どうなる日本の株価


 去年6月に125円台を付けていたドル円相場は、その後じわじわ反転。今年に入って一気にその勢いを増し、2月初旬には一時111円台を付けました。去年7月、ドル円相場がまだ124円の時にこのコーナーで「ドル円相場は110円割れに向かう」と予想しましたが、ようやくほぼその水準を達成しました。

 1990年代くらいまでは、貿易などからなる、日米の経常収支の動向がドル円相場の大きな変動要因でした。当時はまだ資本の移動が自由ではなく、ドル円の売買が発生するのは輸入・輸出などの貿易が大きな要因だったからです。

 しかし資本の移動が自由になった今では、その通貨を持っていてどれだけの実質的な金利がもらえるか(これを実質金利と言います)が中長期的なドル円相場を決定する要因となっています。

保有する通貨選びは
実質金利がキーに

 円を持っている人が、そのまま円で保有すべきか、それともドルで保有すべきかを検討するに当たって重要なのは、まず名目金利でしょう。例えばドルの名目金利が2%で、円の名目金利が0%だったら、ドルで保有したいと思うでしょう。しかしそのような表向きの数字だけにだまされてはなりません。名目金利ではなく、期待インフレ率を差し引いた実質金利に目をやらないといけないのです。

 インフレとは、物価が上昇する、と同時に、通貨の価値が下落する、ということを意味します。例えばドルの期待インフレ率が2%で、円の期待インフレ率がマイナス1%だったら、実質金利は、ドルが0%、円が1%なので、円を持っているほうが有利になるのです。ドルの名目金利は2%ですが、ドルの価値が2%低下するので、実質的な金利は0%。円の名目金利は0%ですが、円の価値が1%上昇するので、実質的な金利は1%となるからです。

ドル安円高の原因は
実質金利差の縮小

 昨年はほぼ1年中、「アメリカの利上げはいつ始まるか」が市場の大きなテーマだったので、アメリカの実質金利は比較的高い水準が維持されていました。しかし昨年12月、待ちに待った利上げという大イベントが終了し、年明けには世界的に株価が下落したことなどを受けて、ここに来て実質金利が大きく低下してきています。一方の日本は1月末にマイナス金利の導入を発表しましたが、たかが0・1%マイナスにしたくらいで日本の実質金利にはほぼ変化はありません。この結果、日米実質金利差が急速に縮小し、最近のドル安円高につながったというわけです。

 日米実質金利差から弊社のモデルが算出したドル円レートは現在も108円を示しており、最近の相場が円高というよりも、ようやく日米実質金利差が示す適正水準に戻ってきた、というのが適切な認識だと考えています。

アベノミクス
経済効果は出たか?

 さてここで重要なのが、ドル円相場が日本の株式市場に与える影響です。左上の図をご覧いただいて分かる通り、日本の株式相場は、ドル円相場にほぼ連動した動きをしています。

 アベノミクスが株価の上昇につながっているといわれますが、これを見るとほぼ100%ドル円相場=日米実質金利差のおかげ、ということが分かります。ということはアベノミクスが掲げてきた三本の矢のうち、本当に効果が表れているのは第一の矢、金融政策のみだということです。第二の矢である財政政策は消費税引き上げによって破綻していますし、第三の矢である成長戦略はそもそも効果が表れるのに時間がかかるので、当然といえば当然です。そしてその効果が出ていた金融政策も、一部は金融引き締め方向に転じたアメリカのおかげだった、ということができます。

 その日米金融政策の差がもたらしてきた実質金利の差が縮小していくとなると、この先ドル円相場は、そう簡単に円安方向に戻りそうにありません。となると、日本の株価の上昇も当面望めなくなるということになるのです。

堀古英司

堀古英司
■ニューヨークに拠点を置く投資顧問会社、ホリコ・キャピタル・マネジメントLLC最高運用責任者。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」をはじめ、メディアに多数出演。著書に「リスクを取らないリスク」。関西学院大学時代、アメフト部で活躍。

今週の用語解説

アベノミクス

第2次安倍内閣が掲げる、デフレ脱却を目的とした経済政策パッケージ。「安倍」と「エコノミクス」とを掛け合わせた造語。「金融政策」、「財政政策」、「成長戦略」の3本の矢で長期のデフレを脱却し、名目経済成長率3%を目指す。「金融政策」はインフレターゲット(物価上昇率の目標)を2%に設定。「財政政策」の対策規模は総額20兆円で、公共事業が主体となる。「成長戦略」は研究開発・イノベーション創出促進、省エネルギー・再生可能エネルギー投資の促進、新ビジネスへのチャレンジなどを骨子としている。

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