2016/02/12発行 ジャピオン851号掲載記事

堀古英司の経済ミラクルキャッチ!

第20回 マイナス金利、アメリカでも?

マイナス金利の導入
その狙いと影響は?


 日本銀行は1月29日、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和の導入」を発表し、日本の金融政策史上初めて、マイナス金利を取り入れました。この決定は各メディアでも大きく取り上げられ、この発表直後から日本の株価は大幅に上昇、発表前118円台半ばだったドル円相場は、一時121円台半ばのドル高・円安水準を付ける場面がありました。

 ただ既にご存知かと思いますが、これによって皆さんが日本にお持ちの円預金から金利が差し引かれていくわけではありません。日本の銀行は中央銀行である「日本銀行」にお金を預けるとわずかな利子がもらえますが、このうち一部の金利をマイナス0・1%にして、「日本銀行にお金を預けたら罰金を取りますよ」とすることによって、代わりにそのお金が民間への貸出に回るように促すことを目的としたものです。

銀行に預金するか
現金を保有するか

 それではなぜ、普通の銀行預金はマイナスにならないのでしょうか。一見、そんなことをしたら預金が引き出されるだけだから、と思われるかもしれません。

 しかし実は、銀行預金をマイナスにすることは不可能ではありません。現金を保有していると、災害や盗難によってなくなってしまうリスクがあります。特に預金金利がマイナスになったら多くの人が現金を保有する事になるでしょうから、それを狙った泥棒が急増すると予想されます。従って貸金庫やそれに準じた保管方法を確保することが必要になるでしょう。

 そう考えれば、例えば今回のようなマイナス0・1%程度でしたら、銀行に1万ドル預けていても年間10ドル徴収されるだけの話ですから、保険料や管理費と思えば、預金金利をマイナスにしてもそれほど大きな影響はないはずです。

 ただマイナス0・5%、1%となっていけば工夫が必要になります。皆さんは本格的に銀行預金を引き出し、現金の保管方法を考えるようになるでしょう。

経済の活性化が
マイナス金利の狙い

 しかしそもそも、金融当局がなぜ、金利をマイナスにしているかを考えてみて下さい。それは皆さんに、預金を引き出して現金を保有して欲しいからではなく、お金を使ったり、投資したり、という形で、経済が活性化する方向に行ってほしいからなのです。ですので、当然そうなるように、すなわちマイナス金利の効果が出るように、さらなる策を講じてくるはずです。
それはどのような策でしょうか。

 それは、政府や中央銀行が現金に使用期限を付けることです。例えば、「今流通している現金は今年いっぱいまでしか使えませんよ」とすることです。そして今年いっぱいまでしか使えない現金と、来年いっぱいまで使える現金であれば、当然後者の方が価値が高いわけですから、価値に応じて両替レートも設定されることになるはずです。

 念のため、将来デフレ傾向が強まってアメリカでもマイナス金利が導入されるような時は、そのような、今とは全く異なる世の中になっているというイメージトレーニングをしておくのが良いでしょう。

マイナス金利は
アメリカでもあるか?

 それではそうなる可能性はどのくらいあるのでしょうか?全くないとは言えません。アメリカの中央銀行に当たるFRBのイエレン議長は昨年11月下院での議会で、「(アメリカ経済が)著しく後退していくような場合は、マイナス金利を含むあらゆる対策を検討する」と証言しています。

 日本だけでなく、既にヨーロッパのいくつかの国では政策金利がマイナスになっていますし、実はアメリカでも、一部機関投資家向けの預金金利は既にマイナスになっています。このような措置を講じても、現在もまだ、先進国を中心とするデフレとの戦いは継続中なのです。

 最後に、それでは将来、住宅ローンを借りたら、逆に利子がもらえる時代も来るのではないか、それまで住宅の購入は見送ろう、と考える方もいらっしゃるかもしれませんので一言。

 「安心して下さい。それはないですよ!」

堀古英司

堀古英司
■ニューヨークに拠点を置く投資顧問会社、ホリコ・キャピタル・マネジメントLLC最高運用責任者。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」をはじめ、メディアに多数出演。著書に「リスクを取らないリスク」。関西学院大学時代、アメフト部で活躍。

今週の用語解説

マイナス金利政策

1月29日の金融政策決定会合で、金融機関が日銀に預ける資金の金利を一部マイナスにする「マイナス金利政策」が導入された。これは、金融機関が日銀に保有する当座預金の一部に対して、マイナス0.1%の金利をつけるというもの。マイナス金利を導入することで市場金利が下がり、融資や株式投資などに資金が向かい、企業収益や賃金の改善を通じて景気回復や物価上昇につながる効果を期待しての政策で、2月16日から実施する。日本の金融政策で同政策の導入は初めてとなる。

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