2015/12/25発行 ジャピオン845号掲載記事

堀古英司の経済ミラクルキャッチ!

第17回 FRBが9年半ぶり利上げ

金利引き上げの
市場への影響を予測


 12月16日、アメリカの中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)は、それまで7年間続いていた事実上のゼロ金利政策を解除し、政策金利を0・25%引き上げることを発表しました。

 7年前といえば金融危機のまっただ中。その3カ月前にリーマンブラザーズが破綻し、金融危機が次々と大手金融機関に飛び火、実体経済にも大きな影響を与え始めていて、事態収拾の手掛かりがまだ全く見えない状況の時でした。あれから7年たち、われわれの生活はほとんど元通りになっています。株式相場は最高値を更新しましたし、ドルは金融危機前の水準を回復、ニューヨークの不動産価格は金融危機前よりも高い水準にあります。

利上げの意味合いは
「正常な状態に戻す」

 このような中で数少ない、当時のままだったものの一つが金利だと言えるでしょう。金融危機後、一時は10%に上った失業率が、直近では5%にまで下がり、アメリカの中央銀行の使命の一つである「雇用の最大化」が達成されつつある中、金利を引き上げる事によって「金融を引き締める」というよりも、「正常な状態に戻す」という意味合いが強いのが、今回の利上げだったと思います。

 金融市場ではこの1年近く、「利上げはいつあるのか」が話題になってきました。そういう点では満を持して実施された利上げですので、この利上げ単体が経済に大きな影響を与えることはないでしょう。(個人的には、2014年に出版した著書で15年中の利上げを予測していたので、ぎりぎりセーフで助かりましたが。笑)。代わりに今後市場では、どのようなペースで金利が引き上げられていくか、どれくらいの水準まで金利が上がるのか、そしてそれは株式市場にどのような影響を与えるのか、が大きなテーマになっていくと思われます。そこで今回はズバリ、それらを予測してみたいと思います。

最終的な政策金利は
2%台になると予想

 利上げ後、5年物国債の利回りは1・7%前後で取引されています。大ざっぱに申し上げると、5年間の平均が1・7%になるように金利が推移していく、と想定することができます。という事は、早いペースで金利を上げていくと手前の平均が上がりますから、先の方の水準は高くてはいけないことになります。逆にゆっくり金利を上げていくのであれば、先の方の水準は高くても良い、ということになります。これらの前提を元に、可能性の高い利上げペースを描いていくと、利上げペースは遅くて年2回、早くて年4回、利上げペースが遅い場合は最終的な政策金利の水準は2・5%程度、早い場合は2%という数字が出てきます。要するに、ここ20年ほど、利上げと言えば5%や6%台まで行くものでしたが、最近の経済情勢の下、今回はせいぜい2%台が精一杯ということなのです。

当面の株式投資に
不安要素はなし

 それでは次に、利上げによって株式相場はどのような影響を受けるか、です。これまでのパターンは「長期金利が短期金利を上回っている間は株式相場は上昇を続け、長期金利が短期金利を下回る傾向が見え始めたら株式相場は下落を始める」というものです。景気が良い間は長期金利が短期金利を上回っているものですが、景気が悪くなると逆転し、株式にも悪影響になりますので当然といえば当然です。これを今回に当てはめるとどうなるでしょうか。

 現在、長期金利(10年物国債利回り)は2・3%前後で取引されています。最近の例では、利上げが始まったからといって長期金利が大きく上昇することはあまりありませんので、現在0・25~0・5%の政策金利が2%近くになるまで、株式相場は上昇し続け、その後、長期金利が短期金利を下回る傾向が見え始めたら要注意、ということです。

 政策金利が2%近くになるのは、早くても17年でしょうから、今回久しぶりに利上げが始まったからといって当面、株式投資を怖がる必要はないということになります。

金利引き上げを発表したFRB議長のジャネット・イエレン氏

堀古英司

堀古英司
■ニューヨークに拠点を置く投資顧問会社、ホリコ・キャピタル・マネジメントLLC最高運用責任者。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」をはじめ、メディアに多数出演。著書に「リスクを取らないリスク」。関西学院大学時代、アメフト部で活躍。

今週の用語解説

政策金利利上げ

中央銀行が景気の過熱やインフレを抑えるため、市場の短期金利を誘導する目標を引き上げること。アメリカでは2008年のリーマンショック以来続、事実上のゼロ金利政策が続いていたが、FRBの委員会は「今年の雇用状況が大きく改善し、目標とする2%の物価上昇率の実現に確信が持てる」ことを理由に挙げ、政策金利を0.25%引き上げることを決定。これを受け、16日のニューヨーク市場は220ドル以上値上がりし、17日の東京株式市場でも日経平均株価が400円以上値上がりした。

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