2015/10/30発行 ジャピオン837号掲載記事

堀古英司の経済ミラクルキャッチ!

第13回 憧れのフェラーリ、NY市場上場

フェラーリ上場!
車も株も超リッチ


 10月21日、イタリアの高級自動車メーカー、フェラーリ社がニューヨーク証券取引所に上場しました。公募価格52ドルに対して初値60ドルを付けるなど、最近ではかなり話題を集める新規上場となりました。
 
 フェラーリは恐らくほとんどの男性にとって憧れの車であり、将来お金持ちになったら一度はオーナーになりたい、という夢を持つ人も多いのではないでしょうか。
 
 私はこの春、アブダビへ行き、フェラーリ・ワールドというテーマパークに足を延ばす機会がありました。ディズニーランド同様、広大な施設で大人から子供まで楽しめるようになっていて、訪れた人に対してブランドイメージを高めると共に夢を与える、非常に魅力的なテーマパークになっていました。中東への旅行を計画されている方は、ぜひ足を運ばれることをお勧めします。

利益に対して割高
PERは約41倍!

 上場当日はニューヨーク証券取引所前に、歴代のフェラーリの車が並べられていました。
 
 私はクラシックなものが好きなので、すぐにカリフォルニアSWBという1961年のモデルに目が行ったのですが、オークションなどでは何と、1000万ドル以上で取引されているとのことでした。その2台隣には、フェラーリ社初のハイブリッド車であるラフェラーリが置かれていました。こちらは140万ドルでしたが、世界限定の499台は既に売り切れとのことでした。
 
 このように車も超リッチなフェラーリですが、上場したフェラーリ株も、車に勝るとも劣らないリッチぶりなのです。会社が上場するに当たって公表した資料によれば、2014年の純利益は2億3000万ユーロ。これに対して上場後の時価総額は95億ユーロとなっています。要するに、株価は利益の約41倍で取引されているということになります。
 
 この株価に対する利益の割合を株価収益倍率(PER)と呼びますが、欧米の大手自動車メーカーの場合、おおむね10倍前後で、ゼネラルモーターズ(GM)に至っては7倍です。フェラーリ株が、いかに利益に対して割高で取引されているかが、お分かりいただけると思います。


フェラーリが持つ
他メーカーにない魅力

 もちろん、フェラーリには他の欧米の自動車メーカーが持っていない価値があります。それは前述のような、多くの人が持っているフェラーリというブランドに対する憧れであり、長年経っても価値が保たれるという信頼であり、デザイン力であり、技術力です。
 
 実際、フェラーリ株を保有しているフィアット・クライスラーのCEOは、「フェラーリの価値を他の自動車メーカーと比べるべきではない。圧倒的なブランド価値を誇るプラダやエルメスと比べるべきだ」と発言しています。ちなみにプラダやエルメスの株価収益倍率は20倍後半から30倍後半ですが、もちろん少しでもフェラーリ株を高く売りたいが故の発言です。



フェラーリ株は
はたして投資向きか?

 
 それではそもそも何故、プラダやエルメスの株式はこのように高く評価されるのか?それは利益率が高い「おいしいビジネス」だからです。
 
 プラダもエルメスも、粗利益率は70%近くあります。要するに皆さんが購入する100ドルのプラダやエルメスの原価は、たった30ドルだということです。それでも多くの人が「高い」とか文句を言わずに(いや、むしろ高いからこそ)喜んで買っていくので、おいしいビジネスになっているのです。
 
 しかし自動車となるとそうはいきません。フェラーリも自動車メーカーの中では粗利益率は高い方ですが、それでも45%です。そもそもの値段が値段だけに、利益率を高くしようとすると手が届く人が少なくなって売上が落ちてしまいますし、比較的生産数を絞ることを売りにしているので、量産によって利益を伸ばす戦略も取れません。
 
 このように考えていくとフェラーリは、やはり株価も超リッチと考えざるを得ないのです。将来フェラーリを購入するのが夢という人は、フェラーリ株投資でその夢を実現する、という考えは持たない方が良さそうです。


ニューヨーク証券取引所への上場を示す、フェラーリの真っ赤な旗。取引所前にはF1マシンをはじめ、同社の高級車がずらりと並んでいた

堀古英司

堀古英司
■ニューヨークに拠点を置く投資顧問会社、ホリコ・キャピタル・マネジメントLLC最高運用責任者。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」をはじめ、メディアに多数出演。著書に「リスクを取らないリスク」。関西学院大学時代、アメフト部で活躍。

今週の用語解説

株価収益倍率(PER)

株価収益率(Price Earnings Ratio、略してPER)とは、「会社の利益と株価の関係」を表しており、その株の割安かどうかを測る指標。一般的に、株価収益率が低ければ低いほど、会社が稼ぐ利益に対して株価が割安であり、高ければ高いほど割高だといえる。成長力の期待が高い銘柄の株式ほど株価収益率が高くなるが、期待値が低下したり、成長が期待を下回った場合、株価が急落する恐れがある。株価収益倍率を導く計算式は「時価総額÷純利益」。時価総額とは「株価×発行済み株式数」のことを指す。

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