2015/10/16発行 ジャピオン835号掲載記事

堀古英司の経済ミラクルキャッチ!

第12回 福山雅治さんの結婚と株価の関係

福山雅治さん結婚
所属事務所の株急落?


 日本時間の9月28日、人気俳優でシンガーソングライターの福山雅治さんが、女優の吹石一恵さんと結婚したと発表されました。私はちょうど日本にいたのですが、テレビでは緊急ニュースとして取り扱われ、早退を申し出る女性社員が続出したり、ひいては労働意欲の低下から経済成長率が下がるとの見方が紹介されるなど、本当か冗談か分からないような出来事や見方も同時に紹介されていました。
 
 そのようなニュースの中の一つに、「福山さん結婚で所属事務所の株急落」というのがありました。さて、それではこのニュースは本当なのでしょうか、冗談なのでしょうか。

株価急落の原因は
本当に結婚報道だけ?

  福山さんはアミューズという、東証1部に上場しているアーティスト・マネジメント会社に所属しています。株価への影響を配慮してか、結婚の発表は株式市場が閉まった後の午後3時30分であったため、株価が初めてこのニュースに反応したのは翌日29日となりました。そして同日、アミューズの株価は寄り付きから急落となり、前の日(5310円)に比べて8・3%安い4870円で取引を終了しました。
 
 確かにこれだけを見ると、福山さんの結婚がいかにショッキングな出来事であったかを報じたいメディアとしては、おいしい材料のように見えます。ただここで、本当に福山さんの結婚だけが株価急落の原因であったかを考える必要があります。
 
 そこで考慮しないといけないのは、29日の東京株式市場はアミューズだけでなく、多くの銘柄が急落となり、代表的な株価指数であるTOPIXは前日に比べて4・2%も下落していたという事実です。
 
 ここ数年の統計を見ると、TOPIXが1動くと、アミューズの株価は大体0・75くらい動いてきたので、29日に当てはめた場合、株式相場全体が下がった事によって、アミューズの株価も3・2%くらい押し下げられたと言えます。この日、他に大きなニュースが出ていなかったことからすると、逆に言えば8・3%の株価下落のうち、3・2%を除いた5・1%が福山さんの結婚による影響だったということです。
 
 株価はそもそも上がったり下がったりするものですので、5%で「株急落」というのは少し大袈裟ですが、「福山さん結婚で所属事務所の株〝下落〟」というのでしたら本当のニュースだったと言う事ができるでしょう。

福山さんの結婚により
離れるファンの割合は?

  次にもう少し分析を進めてみましょう(以下、あくまでも推計になります)。それは、福山さんが結婚する事によって、本当に5%も株価が下落すべきものかどうか、ということです。
 
 同社にはサザンオールスターズや富田靖子さんなど大物アーティストがいますが、会社資料で「上位3人のアーティストからの収入が約40%」と開示されています。
 
 同社の収入420億円に40%を掛けて3で割ると56億円になります。利益率は約7%ですが、恐らく福山さんの限界利益率はもっと高いと思われるため、その約2倍の14%を当てはめると、利益は約8億円(ちなみに福山さんの年収は約8億円といわれているので、これでちょうど事務所と折半している計算になります)という数字が出てきます。
 
 一方、同社の利益は35億円ですので他の条件が全て一定とすると、市場は、福山さんの結婚によって利益が永遠に5%=1・8億円減少すると予想していることになります。これは福山さん関連のビジネスで同社が得ているであろう利益8億円の約23%。すなわち大雑把に言って、福山さんの結婚によって、概ね23%くらいの(お金を払ってくれる)ファンが離れていくと見込まれているということです。この23%が多いか少ないか。「23%も離れるはずがない」と見れば中長期的にアミューズ株は買い、「いや、もっと離れていくだろう」と見れば売り、となります。
 
 しかしちょっと待てよ? 本来ファンって、福山さんの幸せを祝福すべきものではないのか?? この先は女性心理の分析が必要なようですので、今回はこの辺で失礼させていただくことにします。


結婚を発表した福山雅治さん

堀古英司

堀古英司
■ニューヨークに拠点を置く投資顧問会社、ホリコ・キャピタル・マネジメントLLC最高運用責任者。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」をはじめ、メディアに多数出演。著書に「リスクを取らないリスク」。関西学院大学時代、アメフト部で活躍。

今週の用語解説

TOPIX

東証株価指数のこと。「To- kyo Stock Price Index」を略して、一般的に「TOPIX(トピックス)」と呼ばれている。東京証券取引所第1部上場の全銘柄を対象とした株価指数。東証第一部上場株の時価総額の合計を終値ベースで評価し、基準時である1968年1月4日の時価総額(当初数値は8兆6020億5695万1154円)を100として、新規上場・上場廃止・増減資・企業分割などにより修正され、指数化したものである。日経平均株価と共に日本株のベンチマークとして普及している。

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