2019/03/22発行 ジャピオン1011号掲載記事

共感マーケティング

第220回  マーケティング会計

「マーケティング会計」という用語は一般的なのか分かりませんが、私は「カレーうどん」のように「二つのいいとこ取りをしようじゃないか、つまり、マーケティングと会計のおいしいところをミックスして考えよう」との発想で使っています。

マーケティングも会計も、簡単に言えばより良くもうけるための手段。ものの見方・考え方にいいとこ取りで取り入れましょう。

なぜ意見が対立するか

例えば、現在日本ではコンビニ本部と加盟店の間で意見の対立があります。加盟店は24時間営業を見直したい、本部はノー。

対立の理由は、会計で考えると簡単に分かります。もうけの構造が違うのです。コンビニは本部が経営していることは少なく、セブン―イレブン・ジャパンで言うと、全2万店強の98%が加盟店フランチャイズ・チェーンです。「粗利分配方式」という独自の契約をしており、売上高から商品などの原価を引いた粗利を本部と加盟店とで分配します。その比率は契約条件によって違いますが、本部が4〜6割。

加盟店のもうけは、粗利から販管費を引いた営業利益が鍵になります。販管費で最も大きな比率を占めるのが人件費。働き手が少ないので、時給を上げざるを得ない。かつ法律で夜10時以降は25%以上割増しなければなりません。これらが販管費を増やし、営業利益を減らします。

本部は粗利なので、売り上げが増えれば増えるほどもうかる。人件費が上がろうが関係ない。つまり、24時間店を開けていたほうが、もうかる。
 
売り上げはP(商品単価)×Q(販売量)です。このうち、Pは本部が決めるので、加盟店では動かせない。Qは端的に言うと来店客数で決まります。立地がものを言う。

また本部は、道路を一つ隔てた向かいに新しい店を開くなんてことを平気でします。これまでのQが半分になってもおかしくありません。つまり、加盟店は売り上げの二つの要素PとQ両方とも自由度がない経営をしなければならない、ということになります。知人の農家からおいしい野菜を安く仕入れられても、店で売るわけにはいかない。

このように、ほんの少しの会計マインドを持っているだけで、「今はもう、コンビニ経営はうまみが小さいな」と分かるのです。

水面を可視化する

マーケティングは四つのステップがあります。「つくる」、「伝わる」、「耕す」。価値を設計し、商品をつくる。伝えたい人に伝わるようにする。顧客と対話の仕組みを作って関係性を耕す。紙幅の関係で詳細は割愛しますが、この三つを同時に考えます。作ってから、「さて、これをどう売りましょう」というのは、なし。

四つ目のステップが「損益分岐点予測」。新商品が「いくらで、何個売れるのか。何日かけて損益分岐点を超えるのか」を計画しておく。原材料は変動費、売れ行きに比例して増えます。売り上げマイナス変動費が限界利益、1単位売れるごとに得られる利益です。固定費÷(1―変動費率)が損益分岐点売上高(水面)。何日かかって水面を超えるのか。発売日から起算し、カレンダーの色を赤で塗っておきます。水面を超える日以降を青で塗る。これが全員目にできる「マーケティング会計」。

「予定より3日早く水面超えた!」。お祝いですね。

阪本啓一

今週の教訓
いつになったらもうけが
出るか可視化しましょう

阪本啓一
■ブランディング・コンサルタント。大阪大学人間科学部卒業後、旭化成入社。2000年に独立し渡米、ニューヨークでコンサルティング会社を設立。06年、株式会社JOYWOW創業、現在取締役会長。地球と人をリスペクトする、サステナビリティ経営の実現に取り組む。『共感企業 ビジネス2.0ビジョン』『ゆるみ力』などの著書・訳書、講演活動も多数。
www.kei-sakamoto.jp
電子メディア開店! www.orange-media.jp

阪本が選ぶ 読めば分かるこの一冊

トルストイ民話集 人間にはたくさんの土地が必要か

「行ってきな、イワン、先へのばしちゃいけねえ。火はしょっぱなに消せ、でねえと、どんどん火の手があがって間にあわねえことになるだ。」(本文から引用)

四つの短編。引用は「火は放っておけば消せない」から。父親の代はとても仲良く暮らしていたお隣同士。息子の代になり、ささいなことから犬猿の仲となります。互いに相手の家族をやり込めようとする日々。イワンは隣の主人ガヴリーロをむち打ちの刑にすることに成功します。ガヴリーロは納得しません。「イワンにも自分と同じ痛みを味わわせてやる」。そしてイワンの家に放火します。ガヴリーロの家にも延焼し、村の半分が灰になってしまいます。

人類が生まれた時からずっと、今も世界のどこかで国や民族間で戦争が起こっています。許すということ。自他共にワンネスであること。トルストイがこの話を書いた1885年から現在に至るまで、文明は進化したのかもしれませんが、一番大事な心の問題は前進したとは言えないようです。

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