2019/03/08発行 ジャピオン1009号掲載記事

共感マーケティング

第218回  「愛ならどうする?」

コンサルティングの際、決算報告書(貸借対照表と損益計算書)を3期分用意していただきます。雄弁だからです。

決算報告書は雄弁

貸借対照表は、向かって左が資産、右が負債です。左側(資産)は、上が一番大きく、下になるほど小さい逆三角形型、右側(負債)はその逆、上が一番小さく、下に行くほど大きくなるのが理想です。

「資産」は「流動資産」から下へ行きます。現金および預金、売掛金、商品、製品、原材料、貯蔵品…と、現金化しやすい順に並びます。「固定資産」は有形固定資産として建物、機械装置、車両運搬具と、現金化しづらい資産です。

「負債」は「流動負債」から。1年以内に返済しなければならない負債です。「固定負債」は金融機関の長期借入金など1年以内に返済しなくても許される負債。そして一番下が「純資産」。株主資本として資本金、利益剰余金で、自分のお金なので自由に使えます。これが多いほど自由度が高まる。

3年間の推移を見てみると、まず、現金預金の増減が分かります。もちろん、増える方が良い。売掛金が増えているとその理由を聞きます。

あるクライアントで、前期までなかった手形がありました。OEM(相手先ブランドによる生産)メーカーが財務的に厳しいので、これまで現金支払いだったのを手形にしてくれ、と言われたとのこと。じっくり背景をヒアリングすると、その業界が構造的に縮んでいることが分かりました。「OEMはしなやかに離脱していく」という戦略を決めました。

また、あるクライアントで、不思議な項目があるので社長を問い詰めると、「いやー、実は車買っちゃって…」とアタマをかきます。

会社の活動はすべて「利益を上げるため」に行われるものであり、「費用」の定義は「利益を上げる助けになるもの」です。それ以外は「費用」として認められません。上場していない小さな会社であれ、ここを外すと、経営力が弱くなります。ゴルフでOBラインを自分で動かしたり、野球でストライクゾーンを自分の解釈で広げたりするようなもので、腕を磨けません。

愛ならどうするか

損益計算書で、売上高から原価を引いた「売上総利益」と、そこから「販売費及び一般管理費」を引いた「営業利益」のバランスも大事です。売上総利益が増えているのに、営業利益が減っていたら、「販売費及び一般管理費」の何かが増えていることになります。細かく見ていきます。広告宣伝費、荷造運賃、教育費、役員報酬、給与手当、賞与、減価償却費…。バランスを見ると、圧倒的に賞与が大きい。

経営は、見えるものだけではなく見えないものにも配慮する必要があります。決算報告書で見えるものとは数字です。見えないものとは、人の気持ちです。「給与は生活費だから動かせないとしても賞与は…」となるのが普通の流れです。しかし、ここで一呼吸置きます。「愛ならどういう答えを出すだろう?」。賞与を削れば営業利益は増えます。しかし、それによるみんなのモチベーションはどうなる? とはいえ、他に選択肢はないし…。悩みます。ここが大事なのです。悩んで、悩んで、悩み抜いた結果は、必ず伝わります。「愛ならどうする?」を数字と一緒に考える習慣をつけましょう。

阪本啓一

今週の教訓
見えないものを大切に

阪本啓一
■ブランディング・コンサルタント。大阪大学人間科学部卒業後、旭化成入社。2000年に独立し渡米、ニューヨークでコンサルティング会社を設立。06年、株式会社JOYWOW創業、現在取締役会長。地球と人をリスペクトする、サステナビリティ経営の実現に取り組む。『共感企業 ビジネス2.0ビジョン』『ゆるみ力』などの著書・訳書、講演活動も多数。
www.kei-sakamoto.jp
電子メディア開店! www.orange-media.jp

阪本が選ぶ 読めば分かるこの一冊

グッドバイブス ご機嫌な仕事

「あなたは2種類の選択しかできない。ひとつは恐れや不安に基づいた選択、もうひとつは愛に基づいた選択である」(本文から引用)

人生で大きな比重を占める「仕事」。仕事をご機嫌にやりたい。人生もご機嫌に過ごしたい。恐れや不安をなくしたい…本書は、丁寧に、ていねいに読者に寄り添い、語り掛けてきます。著者は冒頭、「本書は速読ではなくゆっくりと読み進めてください」「『早く読破したい!』という気持ちを静められたら準備は完了です」。

「独りで生きている」という「バラバラ意識」から、「世界の中で生かされている」という「ひとつ意識」へ。先日夕食に入った店で、泡のないスパークリングワインを出されたのですが、私は「ひとつ意識」をマスターしていたため、キレずに済みました(笑)。彼も私も同じひとつの世界に生かされているものであり、「分離」はしていないのだと。働く人すべてにお薦めしたい良書です。

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