2019/02/22発行 ジャピオン1007号掲載記事

共感マーケティング

第216回  弾を売れ

コンタクトレンズとは長いお付き合いです。1981年からなので、40年近い。最初はハードレンズ。一度買うと、高価なものなので、2年とか大切に使い続けました。ニューヨークに引っ越ししてからはソフトレンズに変え、以来、ずっとソフトです。

コンタクトレンズの深い狙い

広島にいた頃、ゴロゴロと異物感があったので医師に相談すると、何と、レンズに鉄粉が刺さっていました。市街電車が走っているので、その線路から飛び散ったのだろうとの所見です。

一度あることは二度あると、それ以降、レンズはアメックスカードで買うことにしました。ショッピング・プロテクションがついているので、万が一同じことが起きても保障してくれます。げんにその後また鉄粉が刺さって、アメックスのおかげで新品になりました。

コンタクトレンズメーカーはこの40年の間に、マンスリー(1カ月月交換)、2ウイーク(2週間)、1ウイーク、デイリーと次々に新製品を発売しました。現在私はデイリーを装用しています。出張が多く、メンテナンスキットを持ち歩くのが大変だからです。

コンタクトレンズメーカーの深い狙いを感じます。仮に「もつ間は使い続けるよ」というレンズが1万5000円だとします。2年使うとすると96週ですから、1週当たり156円、1日22円です。1カ月タイプは5760円、つまり1日192円、デイリー30日分2288円、1日76円です。こうして計算してみると、使い続けるタイプのレンズが最も安く、1カ月タイプが一番高くて9倍、デイリータイプでも4倍かかります。

つまり、コンタクトレンズメーカーの新製品は、顧客に従来の4倍から9倍多く支払わせることに成功したのです。しかも2年ごとではなく、少なくとも1カ月ごと(1カ月タイプもデイリータイプも1カ月分が単位)に売り上げが立つようになっている。製造機械は同じですから、固定費はこっちの方がよほど経営効率が高い。

鉄砲を売るな、弾を売れ

経営の鉄則に「鉄砲は売るな、弾を売れ」があります。コンタクトレンズは当初鉄砲ビジネスでした。ところがこのように、弾ビジネスに転換しています。プリンタもそうですね。本体はたとえ安く売っても、インクカートリッジが定期的に売り上げを生み出してくれる。純正カートリッジって、高くて驚きますよね。

ペンギンマジックはマジック用品のネットショップで、弾ビジネスです。アマチュアのマジック愛好家の「観客」はたいてい友人か家族。つまり、一つのネタだけではやがて飽きてしまいます。そこで次々と新しいネタを購入したくなる。ディアゴスティーニと同じく、狭いインタレストに的を絞った、素晴らしい弾ビジネスと言えます。

このように、狭いインタレストを満たすプラットフォームを作ってしまうのが弾ビジネスのコツです。購買のきっかけを用意しておくのも大事。サイトにある「12個のトリックネタを無料で差し上げます!」で、メールアドレスを集めることができます。トリックネタを知ったら、試したくなるのが人情。購買につながります。同好の顧客同士のコミュニティーも、プラットフォームを強くしています。

阪本啓一

今週の教訓
プラットフォームを作ろう

阪本啓一
■ブランディング・コンサルタント。大阪大学人間科学部卒業後、旭化成入社。2000年に独立し渡米、ニューヨークでコンサルティング会社を設立。06年、株式会社JOYWOW創業、現在取締役会長。地球と人をリスペクトする、サステナビリティ経営の実現に取り組む。『共感企業 ビジネス2.0ビジョン』『ゆるみ力』などの著書・訳書、講演活動も多数。
www.kei-sakamoto.jp
電子メディア開店! www.orange-media.jp

阪本が選ぶ 読めば分かるこの一冊

生物と無生物のあいだ

「秩序は守られるために絶え間なく壊されなければならない」(本文から引用)

ニューヨーク観光名物サークルラインで本書は始まります。ヨークアベニュー66丁目、ロックフェラー大学。ここにかつて在籍していたオズワルド・エイブリーという、地味な研究者について語り始めます。丁寧に、愛を込めて。若き生物学者、ジェームズ・ワトソンとフランシス・クリックがノーベル賞を受賞した二重らせん遺伝子の正体。その正体に到達するための「前奏」がまさにエイブリーの研究成果「遺伝子がDNAである」のおかげであること。これについて福岡先生はじっくり、ミステリーを解いていくように筆を進めます。分子生物学の話ですが、会社経営にも応用できる内容が満載。

ワクワクして、ページ数が少なくなるのが惜しい。日本では現在インフルエンザが流行していますが、ウィルスとは何かについても勉強になります。

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