2019/02/08発行 ジャピオン1005号掲載記事

共感マーケティング

第214回  目標は変化するためにある

経営目標でも個人の目標でもいいですが、目標は、達成するためではなく変化するためにあります。

達成できる目標は可知、つまり、自分の「知っている範囲内」で決定したものであり、成長の結果達成できたものではない、と思っていい。達成できない目標設定こそが大事です。目標とは現状との落差です。落差があるには理由があります。知性はその理由を探ることで磨かれます。

受験で大事なことは満点を取ることではなく、落ちないこと、合格ラインを超えることです。楽勝の受験をしては、成長できません。つまり、受験というものは、志望校に合格するための勉強を通じて変化することが大事なのです。合否など、実はどっちでもいい。

対で磨かれる

楽勝は無理だけど挑戦したい、という思いが「落差の認識」を生み、知性が磨かれ、対を探します。

「荘子」に大鵬(たいほう)という、とても大きな鳥の話が出てきます。お相撲さんの大鵬はここからもらったんでしょうね。水に翼打つこと3000里、龍巻に乗じて9万里の高みに昇っていきます。いかに大きな鳥か、ということを荘子が言いたいのかと思うと、実はそうではなくて、大鵬が天翔けるためには、その下に、大鵬と同量の空気の粒がなければならない。つまり、対の存在が必要である。荘子は続けます。

「水の積むこと厚からざれば、大舟を負うに力なし」

大きな舟も、同量の水がなければ、働けない。宇宙はすべて対で成り立っています。大鵬と空気、舟と水。「競合」も対です。対があるから、こちらが磨かれる。

さて、目標に話を戻します。経営計画で目標を設定するとき、「達成できそうもない数字」にします。なぜなら、変化するしかないから。まず、現状の洗い出しをします。事実の整理。間違えてはいけないのが、ここで「希望」を整理してしまうこと。ふわふわした希望。社長が「今期は○円の経常利益を出すぞ! ついては各部門、目標数値を出してほしい」チャレンジングな経常利益目標です。部門長たちは、鉛筆なめなめ、実力以上の数字を社長に提出します。社長はそれらを合算して、目標数値になることを確認し、今期目標が決まりました。これ、素人の経営です。希望の合算に過ぎません。

「どうもうちは目標を決めても、その通りにならない」

当たり前です。各部門長は、社長の挑戦目標数字に合うように希望を提出しただけで、現状との落差を事実ベースで整理していないのですから。

阪本が経営指導するときは、ここにメスを入れます。事実の整理。実力の認識。落差の認識。

「現在の」人員、商品、マーケティング、社員メンタリティー、戦略、ワークスタイルで達成は無理と認識する。ならば、それらすべてをどう変化させるか。それはなぜか。落差を認識し、現在を変化させるのが部門長の仕事です。数字出して終わり、なら、新人でもできる。対の発想をすることで、人は変化できます。個人の能力でいうと、「苦手なこと」が対になります。苦手はしなくていい。でも、苦手を認識し、それを得意なことでカバーできるように知恵を出す、変化する。

「私、数字が苦手なんですー」。ならばそれを何でカバーするのか。そこが落差を埋める知恵なんです。変化イコール成長です。

阪本啓一

今週の教訓
パーソナルが鍵です

阪本啓一
■ブランディング・コンサルタント。大阪大学人間科学部卒業後、旭化成入社。2000年に独立し渡米、ニューヨークでコンサルティング会社を設立。06年、株式会社JOYWOW創業、現在取締役会長。地球と人をリスペクトする、サステナビリティ経営の実現に取り組む。『共感企業 ビジネス2.0ビジョン』『ゆるみ力』などの著書・訳書、講演活動も多数。
www.kei-sakamoto.jp
電子メディア開店! www.orange-media.jp

阪本が選ぶ 読めば分かるこの一冊

ロック・ミュージシャン名言集

「『結局人の心を動かすのに必要なのは、”魔法”なんだ、”奇跡”なんだよ』ボノ/U2」(本文から引用)

2008年の本です。ロックミュージシャンの言葉は、世間常識から逸脱しているので、こちらの頭が揺さぶられる快感があります。

ザ・フーのピート・タウンゼントなんか、まず友達にはなりたくないぶっ飛び感があります(笑)。だからこそ世界に刺さるし、人々が熱狂する。仕事も同じ。コンフォートゾーンにいるだけでは刺さらない。一歩前に踏み出す勇気と背負う決意。彼らロックな人々が手に入れ、失い、最後に残ったものは。彼らの人生観、お金観、世界観に触れることで、なぜかとても気持ちが安らかになります。

お風呂に入りながらペラペラ好きな場所を開いて、読む。できれば中の誰かの音楽を流しながら。人生の楽しみは、こういう時間です。好きな音楽の人の言葉はやはり共感できる、という発見もしました。

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