2019/02/01発行 ジャピオン1004号掲載記事

共感マーケティング

第213回  共感される店

この連載のキーワードでもある「共感」。商売に大事です。では、どうすれば共感される商品や店を作ることができるのでしょう。

最近よく耳にするのが「好きを仕事に」というフレーズです。しかしこれは誤解を生みかねません。好きでやっていても、それが自分以外の誰かの役に立たなければそれは趣味です。お金を出してするのが趣味、お金をいただくのが仕事。お金、時間、労力をかけたものがやがて仕事に、商品になります。

商売は、川の流れを作ること。エステサロンを始めたとします。最初は売り上げが安定しない。売り上げは、言い換えれば、顧客数です。顧客数が安定していないわけです。つまり、川の流れになっていない。言うなれば、川からこちらの田んぼに水路をちょこっと作って、水を恵んでもらっている段階です。

流れのできている商売は、川になっています。商売を育てる、というのは川幅を広げること。水量は商品力。品ぞろえや、魅力ある商品がどれだけそろっているか。これは一朝一夕にできるものではありません。

品ある人、品のない人

お金、時間、労力をかけ、創意工夫していくプロセスで、商人として磨かれます。

品が出てくる。お金持ちになっても品は上がりません。しかしながら品を上げれば商売がうまくいき、お金の流れが良くなり川ができます。なぜなら、品というのはその人や店に生まれるのではなく、人と人との間、人間(じんかん)で化合されるものだから。

品のない人と品のある人の違いは、前者が「どう? すごくない? オレって、やばくない?」と、他者承認欲求で動き、後者は自分の価値観で動いていることです。ツイッターで100万円ばらまく行為が品なく見えたのは、他者承認欲求の魂胆が透けて見えるから。京都の老舗が格好いいのは、「他者承認など、知ったこっちゃない」ロックな姿勢だからです。価値観、つまり、ブランドをしっかり意識している。

共感は間に生まれる

共感とは、人と人の間に化合されるものであり、「共感しなさい」とコントロールできるものではありません。あくまでその店や商品と顧客の間に生まれる感情なのです。顧客の気持ちのアンテナの何かにリンクするとき、それは物語を生みます。パーソナルなものであるほど強い。

私の新刊「ロック本」でオリジナル・サウンドトラックをアップルミュージックに用意し、聞きながら読んでください、としたのは、音楽の力を借りて思い出とリンクさせ、読書体験をよりパーソナルなものにしたかったからです。

顧客との会話

ドラッグストア、コンビニ、スーパーなど、「会話が不要な店」で付加価値を生み出すのは難しい。

大量生産されて大量消費される前提の商品が並び、販売スタッフもAIや機械で置換可能な役割しか期待されません。一方、小さなレストラン、販売数量が限定された商品、お得意さまで成り立っているブティックに共通しているのが、顧客との会話です。会話のおかげで、買い物体験をよりパーソナルなものに仕上げられます。共感される店とは、パーソナルストーリーをうまく引き出してくれる場所なのです。

阪本啓一

今週の教訓
パーソナルが鍵です

阪本啓一
■ブランディング・コンサルタント。大阪大学人間科学部卒業後、旭化成入社。2000年に独立し渡米、ニューヨークでコンサルティング会社を設立。06年、株式会社JOYWOW創業、現在取締役会長。地球と人をリスペクトする、サステナビリティ経営の実現に取り組む。『共感企業 ビジネス2.0ビジョン』『ゆるみ力』などの著書・訳書、講演活動も多数。
www.kei-sakamoto.jp
電子メディア開店! www.orange-media.jp

阪本が選ぶ 読めば分かるこの一冊

荘子物語

「茶碗も土瓶も、必要なところはどの部分かといえば、中の空虚な何もない無のところだ。」(本文から引用)

著者は大漢和辞典を編纂した東洋思想の巨人。全ての達人と同じく、難しいことを分かりやすく語ってくれます。孔子を祖とする儒教は「ちゃんとやろう」が基本なのに対し、老子・荘子の老荘思想は「これでいいのだ」。まさにバカボンのパパで、どちらが良いではなく、陰陽、両方必要です。

老荘思想は「虚無」を扱うので、「世間を斜めに見る」「世俗から一歩離れる」ようなイメージがありますし、そういうスタンスで論じる本が多いのですが、本書を読むと、ビジネスに活用できる現世的な話も満載です。道(タオ)の考え方はとても重要で、ロックに通じます。つまり、他者承認を求めるのではなく、無から始まっているし、無があってこその有のはたらき。自分が大切にしている価値観を見定めなさい。失うことを恐れるな、と。

あわせて読みたい

バックナンバー

NYジャピオン 1分動画


ただいま配布中発行

特集
イースター(復活祭)は、キリスト教の行事として...

   
Back Issue 2019
Back Issue 2018
利用規約に同意します