2019/01/25発行 ジャピオン1003号掲載記事

共感マーケティング

第212回  キャスティング

日本の正月といえば、箱根駅伝です。私は神奈川県葉山に住んでいた関係もあり、箱根駅伝が大好きで、欠かさずテレビ観戦します。今年は前年まで4連覇した青学を破って東海大が劇的な初優勝を収めました。

駅伝はキャスティング

箱根駅伝は全10区、2日間にわたって競います。当然ながら1区から10区まで、「なんとなく」走る選手を決めている訳ではなく、1区はA選手、2区はB、後半の勝負どころ7区、8区、9区、最後の仕上げ10区は誰と誰。完璧に設計された人選がなされています。つまりキャスティング。

10区それぞれ走路の高低があります。5区は山を上る。6区下る。気候、往路は海風が左から、復路は右から吹きます。10区は都心なのでビル風が強い。各選手の実績記録と、環境対応力などを計算し、「これしかない」というキャスティングをして試合に臨みます。もちろん、世の中すべてのことと同じく、計画通りにはいきません。思わぬハプニングもあります。しかし、きちっとした設計の上のキャスティングさえあれば、「想定外」が起こったとしても振り返りができます。次の試合のための重要なデータになります。

強みをベースに

仕事も同じ。企画やプロジェクト、販売実績なども、すべてキャスティングで決まります。誰に何をなぜ任せるか。これは一人で仕事するフリーランスも同じ。仕事は何らかのカタチで誰かとの共同作業です。その場合、誰と、何を、なぜ組むか。そのためには、「人の強み」を知っていなければなりません。

この場合、「いい人」とかいう話は横に置きましょう。ドライに、「何ができるか」。逆にいうと、自分の苦手は誰か他の人に任せる。私は、在庫管理が苦手です。だから本の在庫管理と出荷はそういうことの得意な外部スタッフにお願いしています。

フリーランスは、「自分の強みは何か」を伝わるように発信しておく必要があります。それも「会計が得意」というような広いものではなく、「在庫管理」のような、絞ったとんがりが大事です。

経営もキャスティング

経営も、駅伝と同じです。「1年走り続けて、結果、これこれのタイム(利益)になった」ではなく「今年度の利益目標はこれだけ残す。だから1月にはこの仕事でいくら利益を、2月は、3月は…、12月はこれこれ。結果、合計すると○○という利益が残る」。つまり、各月にする仕事もキャスティングと見なすのです。1年一所懸命やったけど、これだけしか利益が残らなかった…という発想は「頑張って走ったけど、こんなタイムしか出なかった」というのに等しい。そこはロジックで計算し、キャスティングを設計しないと、成長できません。

販売も同じ。商品Aと商品B。店としては商品Bを拡販したいけど、どうも実績はAの方がいい。こうなった場合、強い商品Aの拡販に予算もエネルギーも使うのが正しい。弱い商品Bは、放置ではなく、価格を下げて売る。売れない原因は、価格と顧客の感じる価値のアンバランス、つまり、プライシングのミスが大半です。売っても売らなくても固定費は同じなのですから、売って現金1ドルでも稼ぐのが良い経営です。

阪本啓一

今週の教訓
企画も、販売も、すべて
キャスティングで決まります

阪本啓一
■ブランディング・コンサルタント。大阪大学人間科学部卒業後、旭化成入社。2000年に独立し渡米、ニューヨークでコンサルティング会社を設立。06年、株式会社JOYWOW創業、現在取締役会長。地球と人をリスペクトする、サステナビリティ経営の実現に取り組む。『共感企業 ビジネス2.0ビジョン』『ゆるみ力』などの著書・訳書、講演活動も多数。
www.kei-sakamoto.jp
電子メディア開店! www.orange-media.jp

阪本が選ぶ 読めば分かるこの一冊

1億2000万人の矢沢永吉論

「どうしても、人間って逃げたくなるときがあるじゃないですか。だけど、永ちゃんは絶対に逃げない。だから、そこで自分が逃げてしまったら、それ以降は永ちゃんのファンって言えなくなると思ったんです。」(本文から引用)

全国の矢沢永吉ファンに丁寧に取材し、生の声を集めました。いやー、すごい。

「『成りあがり』(矢沢の著書)に憧れてオレも横浜を目指した」「コンサートにはこれまで336回行った。とにかく〝生〟で矢沢の汗を見たい」「永ちゃんは常に『本気』だから響く」「クリスマスイブの夜、永ちゃんがおでんの屋台に飲みに来た」…。一人一人の人生に突き刺さる「E.YAZAWA」。かくいう私も、独立しニューヨークに渡ったとき、手にしていたのが永ちゃん2冊目の著作『アー・ユー・ハッピー?』。LAの矢沢邸も見に行きました。

仕事で判断に迷ったとき「永ちゃんならこういう時どうするかな」と考えます。ロックやポップスというジャンルとは別に、「YAZAWA」というジャンルがあって、それは人生哲学でもあるのです。

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