2018/12/21発行 ジャピオン998号掲載記事

共感マーケティング

第207回  あと一歩踏み込む

営業マン時代、先輩に教えられたことが、「あと一歩踏み込め」です。「何かお世話になったとする。お礼を何でするか。電話? メール? そこまでは誰でも考える。踏み込め」。けげんな顔をしている私に先輩は「お礼に行け」。続けて「『電話やメールで済むことを、わざわざ足を運んで(時間と交通費かけて)来てくれた』ことが感謝の気持ちを本当に伝えることになる。人との関係は短期で見るな。長期で見よ。長期で見るということは

『手間暇掛けて育てる』ということだ」

この教えがその後の私にどれだけ役立っていることか。特に、人との関係を長期的に育てる視点は独立自営業者にとっては命綱で、短期の損得勘定で見ないことにつながります。「まあ、今回は思うより少ないギャラだったけど、長いお付き合いをしたいから」と思えば納得です。

そこまでやるか

この考え方は、仕事だけではなく、プライベートでも役立ってます。

妻から「友達と会食したいのでなじみのレストランを予約してほしい」と依頼を受けました。こういう依頼は危ない。クライアントなら速攻でやりますが、家族なので、つい後回しになりがちです。昨日がその当日。朝、「予約してくれたよね?」「もちろん!」と返したものの、実は自信ない。予約した気もするが、してない気もする。

午後、都合をつけてレストランに行って予約確認し、「ちょっと待てよ、踏み込めないか?」と自問して、その場でスパークリングワインをオーダーし、代金を支払いました。これでサプライズのギフトになるし、妻も友人の前で鼻が高いでしょう。

「そこまでやるか」が、印象に残る秘けつです。例えば、私は勉強会の配布レジュメに、1ページずつ、自分の名前イニシャル刻印を押します。これが「阪本オーソライズのレジュメである」という印です。参加者は、「それだけ価値ある情報がこのレジュメに込められているし、何より、そんな価値ある勉強会に自分は参加しているのだ」という満足感が生まれます。そして、毎回、手書きのメッセージカードを用意します。

一人一人違う言葉を書いて。ほんの一言なんですが、これは「貼り出して毎日眺めてます」という人がいたりして、人気です。

うれしいこと

私の会社はコンサルティング・ファームでありながら、大きな行事は年2回のパーティーという「変わり種」なんですが、「こんなもんでしょ」をとにかく排し、毎回、新しい企画を盛り込みます。100人の参加者の8割は常連さんなので、「既視感」があってはJOYWOWの名がすたる。

今冬パーティーのテーマはロック。世界的な賞を受賞したバルーンアーティストに会場デコレーションをお願いし、現在制作中の本のロゴを使い、ロックな空気感で満たしました。また、プロのアイリッシュアンサンブルにパフォーマンスをお願いしました。CDを持参して販売するというので、景気付けのためリハ中に「ここにあるもの、全種類もらうよ」と、いいカッコしたら2万5000円もして、一気に財布の中身が寂しくなりました。ギャラはお支払いしているものの、やはり当日の現金売り上げはうれしいものだと思うから。これも「一歩踏み込む」姿勢です。

阪本啓一

今週の教訓
踏み込みが、愛です

阪本啓一
■ブランディング・コンサルタント。大阪大学人間科学部卒業後、旭化成入社。2000年に独立し渡米、ニューヨークでコンサルティング会社を設立。06年、株式会社JOYWOW創業、現在取締役会長。地球と人をリスペクトする、サステナビリティ経営の実現に取り組む。『共感企業 ビジネス2.0ビジョン』『ゆるみ力』などの著書・訳書、講演活動も多数。
www.kei-sakamoto.jp
電子メディア開店! www.orange-media.jp

阪本が選ぶ 読めば分かるこの一冊

非営利組織の経営

「通常誰でも知っていることは20年遅れである。政治の世界でも、誰でも知っていることをいっているだけの者は姿を消していく。」((本文から引用)

「非営利組織の」となっていますが、この本はビジョン、マーケティング、資金源開拓など、すべてのビジネスに共通して役立つものの見方・考え方が網羅されています。ドラッカーの考え方は時を超える本質を突いているので、いつ読んでも知的刺激をもらえます。

「重要なことは『する』ことである」「ミッションはすべて長期からスタートしなければならない」「行動は短期的たらざるをえない」「廃棄が、組織を空腹にし、スリムにし、新しいことをできるようにするための鍵」「資金源開拓というのは、寄付者の目線を上げてもらい、組織の成果のオーナーになってもらうこと」「募金に対する反応を決めるものは何か」「誰にとって大事な存在になりたいかについて徹底して考えなければならない」など、示唆に富む文章で満ちています。

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