2018/11/23発行 ジャピオン994号掲載記事

共感マーケティング

第203回  プレゼンテーションのメンタル

企画を通す、商品を売る、転職に成功する…。

考えてみれば働く日々はプレゼンテーションの繰り返しです。私は会社員時代建材営業を19年やりました。独立してからはセミナーやカンファレンスでスピーチする仕事、つまり、人様の前でプレゼンテーションすることでお金をいただいてきました。

大事なのはメンタル

その体験から、お話しましょう。とはいえ、うまいプレゼンテーションの方法ではありません。プレゼンテーションのメンタルについてです。なぜなら、プレゼンテーションの方法は、人それぞれ個性を生かすのが良くて、「これが正解だ!」という型にはめるのは面白くないからです。好きにやっていい。大事なことは、プレゼンテーションの成否ではなく、プレゼンテーションのメンタルです。

人は仕事を通じて成長したいと願っています。成長のためのプレゼンテーションにもかかわらず、メンタルをやってしまっては何にもなりません。大事なことは、プレゼンテーションではなく、メンタルなのです。

四つあります。第一に、「なぞらない」。事前に練習するのは大事。でも、練習のポイントを「記憶」にしてはいけません。聴いている方は「あ、なぞってるな」というのが丸分かりです。そうなるとあまりに予定調和で、聴く興味が失せます。やはりプレゼンテーションの醍醐味(だいごみ)はライブ感。なぞるのではなく、瞬間瞬間「生み出す」気持ちで臨みましょう。

そのためには、伝えたい核を一つに絞ります。絞った上で、その核について24時間考え続ける。たとえば、「仕事にアートが必要だ」という核だとすれば、「アート」というアンテナを張る。地下鉄に乗ってても、街を歩いていても、アートが引っ掛かってくる。それが自信につながります。表現のさまつなあれこれなど、どうでもいい。「自分はあれだけ考え続けてきたのだ」と自分で自分に太鼓判を押してやるのです。そして、本番では、その核から生み出されてくる言葉に身を任せる。

第二に、「流れ」を大事にする。準備の段階で起承転結を意識していると思います。でも、「なぞらない」姿勢でやっているとごちゃごちゃになることも。スライドを使うとそういうことはないかもしれませんが、だから面白くなくなります。プレゼンテーションは聴衆との感情の交流がメイン。

一方的に話して終わり、というの程つまらないものはない。何か思わぬ反応、「そこ、笑うとこちゃうけど」というのがあったりします。そういう「おいしい」チャンスは拾う。強引に設計図通りに話を持っていこうとしない。ハプニングこそ、楽しく、印象に残るのです。

反省はしなくていい

第三に、スライドは「写真のみ」。写真やビジュアルを見せるのは効果的です。でも、文字を添えるのは不要。文字で伝えたい情報は言葉で。そして、聴衆が誤解せぬよう伝える。そうしないと、話し手に緊張感が生まれません。そう、緊張感があなたを成長させるのです。せっかくの成長の機会を逃してはもったいない。流れで、スライドが前後しても、それはそれで面白い。

第四に、反省しない。プレゼンが終わって、あれがうまくいったこれがミスった、など振り返らない。済んだことです。自分が一番分かってます。次回の糧になるに決まってます。だから反省会などしてはいけません。


阪本啓一

今週の教訓
これ一回じゃないから

阪本啓一
■ブランディング・コンサルタント。大阪大学人間科学部卒業後、旭化成入社。2000年に独立し渡米、ニューヨークでコンサルティング会社を設立。06年、株式会社JOYWOW創業、現在取締役会長。地球と人をリスペクトする、サステナビリティ経営の実現に取り組む。『共感企業 ビジネス2.0ビジョン』『ゆるみ力』などの著書・訳書、講演活動も多数。
www.kei-sakamoto.jp
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阪本が選ぶ 読めば分かるこの一冊

今日の芸術

「現代人は、部品になった」(本文から引用)

本書は1954年の刊行。つまり、岡本太郎が大阪万博で太陽の塔を創る16年も前のことです。日本がODAの力を借りて新幹線を走らせ、名神高速道路を作り、イケイケドンドンが始まる頃。岡本太郎は既に現代の工業化社会、経済中心社会「だからこそ」芸術が必要不可欠なものである、と論じています。新しい。

その後、資本主義社会はさらに発展し、日本はお金持ちに。でも、この幸せ感の薄さはどうでしょう。減らない自殺。病的な犯罪…。岡本太郎が本書で主張する「他の条件によってひきまわされるのではなく、自分自身の生き方、その力をつかむ」ための芸術。今こそ、読むにふさわしい時代だと思います。ただ鑑賞するのではなく自分が創り出すことであり、言いかえれば、自分自身を創ること。ここに芸術の意味がある。

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