2018/11/16発行 ジャピオン993号掲載記事

共感マーケティング

第202回  「半分空」を満たせ

「おっと、まだ開いてないの? せめて出勤前には店、開けてよ」「もう閉まっちゃったの? 昼間は仕事で買い物行けないのに」という「不満」を解消したのがセブン−イレブンの発想でした。
 ネーミング通り、朝7時から夜11時までやってますよ。この「コンビニエンス」が売り。さらに発展して、「24時間365日開けてます」となった。

これが今となっては足かせになり、特に早朝深夜スタッフが集まらない。また、「なにも夜中まで開いてなくても良くないですか?」という疑問まで生まれています。社会環境が変化し、それにつれてみんなの認識が変化したのです。

昨日新幹線に乗ってたら「すみません、今日はカートが1台しかないので、**号車から**号車の間だけの営業になります」という車内アナウンスが流れました。人手不足極まれりです。コンビニは外国人で支えられていますが、車内販売はそういうわけにもいかないのでしょう。

ドラッカーは次のように言います(『イノベーションと起業家精神』)。

「『コップに半分入っている』と『半分空である』は量的には同じである。しかし、意味も、取るべき行動も違う。社会の認識が『半分入っている』から『半分空である』に変わるとき、イノベーションの機会が生まれる」

諸行無常

セブン−イレブンの事例で考えると、「小売店の営業時間」にみんなの「不=空」がありました。その空を満たすために早朝深夜まで開店してますよ、と。しかし、環境は刻々と変わる。諸行無常。いったん満ちても、また空になる。どんな空か。「確かにコンビニは便利だけど、ぶっちゃけ高くね? スーパーとかドラッグストアのほうが安くね?」です。

日本の場合、ドラッグストア主要10社の出店増加率は17年度比7%増で、同2%増のコンビニを上回ります。これは肌感覚でも納得です。大阪は北新地の一等地に立つホテルの1階がすべてドラッグストア。中国語の話せるレジスタッフ常設。

一つはインバウンド消費、そしてもう一つは、スーパーマーケットの顧客を奪う狙い。医薬品や化粧品で得られる高い粗利を原資として、お菓子やパン、お酒の価格をスーパーマーケットより低く設定しています。

顧客は賢いので、「いいとこ取り」買い物をしています。お菓子やパン、お酒をドラッグストアで、生鮮品の野菜や肉、魚はスーパーマーケットで。

空を満たす

話題のスマートカーは「空を満たす」アイデアでしょうか。車に「ちょっと寒いんだけど」と話し掛けたら「分かりました。温度を上げましょう」と答えるAI(人工知能)搭載のやつです。「OKグーグル」のようにスマホでできることをただやるだけでは「満たす」と言えませんね。そもそも「空」は存在せず、何かをプラスしただけですから。

「会社まで、現在の道路の混み具合を測定し、一番早く行ける道を走ってくれ」「合点承知!」であれば、「空を満たす」ことになります。

あるメーカーの実話です。測定値(つまりスペック)を一所懸命高めて納品しました。

しばらくして顧客を訪問したら「それにしても御社の製品は着脱がやりやすくて、現場作業員が重宝しているんですよ」。それを聞いて、顧客が評価しているのはあれほど苦労した製品スペックではないことに驚くやら、「着脱かい!」と胸の中でツッコミ入れるやら。

一歩踏み込むのも「空を満たす」きっかけになるようです。

阪本啓一

今週の教訓
成長とは量の拡大ではなく、
新しいものを生むこと

阪本啓一
■ブランディング・コンサルタント。大阪大学人間科学部卒業後、旭化成入社。2000年に独立し渡米、ニューヨークでコンサルティング会社を設立。06年、株式会社JOYWOW創業、現在取締役会長。地球と人をリスペクトする、サステナビリティ経営の実現に取り組む。『共感企業 ビジネス2.0ビジョン』『ゆるみ力』などの著書・訳書、講演活動も多数。
www.kei-sakamoto.jp
電子メディア開店! www.orange-media.jp

阪本が選ぶ 読めば分かるこの一冊

仕事にしばられない生き方

「現代という時代は、そんな知性でさえ、お金と結びつけるのが当たり前みたいになっています。」(本文から引用)

一番響いたシーン。シカゴ。「テルマエ・ロマエ」の大ヒットを受けて、ますます忙しくなり、体力も気力もすべて限界になって。それでも振り絞って仕事した明け方。キッチンで水を飲もうとふと窓を見たら向かいのビルの事務所でせっせと足を動かしている老人の姿。きっと若い頃から、遅れを取らず、負けないように、自分自身を鍛え上げ、走り続けてきた。著者は「私には、できない」と考え、一家でイタリアへ引っ越しします。

私たちは、油断するとつい高度資本主義社会に身も心も絡み取られてしまいます。ちょっと俯瞰してみる。距離を置いてみる。電源オフにしてみる。そして、「自分がやりたいことは何か」「自分にとって幸せとは何か」について考えてみる。強者しかダメ、弱者は自己責任なんていう水臭い社会は、おかしいと思います。

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