2018/11/09発行 ジャピオン992号掲載記事

共感マーケティング

第201回 5分で分かるドラッカー

クライアントから、ドラッカーの理論について早分かりできる講義をしてほしい、できれば30分くらいで、と虫のいい依頼を受けました(笑)。その内容を、お裾分けします。このコラム、5分で読めますから、「5分で分かるドラッカー」始まりはじまり。

「奪い合いでなく顧客を創造する」

言うまでもなく、ドラッカーの真髄を表す言葉です。「ビジネスの目的は、利益ではない。利益は会計上の幻想に過ぎない。ビジネスの真の目的は、顧客の創造である」

確かに、これまで社会にインパクトを与えたビジネスは、それまで存在しなかった顧客を創造しました。阪急創業者・小林一三は、一つの端「大阪・梅田」に百貨店を造り、もう一方の端「宝塚」に歌劇と遊園地を作り、線路で結びました。沿線を開発して住宅地とし、「住宅地」には住民、「電車」は乗客、「百貨店」は買い物客、「歌劇」は観客、「遊園地」は家族連れゲストという新しい顧客を創造したのです。天才です。このスケールの大きさを思うと、たいていのビジネスは「既存顧客の奪い合い」という、とても小さく、狭い道を歩いているように見えます。

業績が絶好調のユニクロは「低価格」でこれまでのアパレル顧客を奪ったわけではありません。「ユニクロ」というジャンルを創造してしまったのです。つまり、「ユニクロを利用する顧客」を創造した。ユニクロ王国の中に入ると、ヒートテックやエアリズムなどに出合えます。まさにマジックキングダムであり、アパレル業界のディズニーのようなものです。

問題ではなく
機会に焦点を

ビジネスは日々発生する「問題」解決の面があります。ドラッカーは、「問題ではなく、機会に焦点を合わせよ」と言います。

確かに問題は解決したとしても、マイナスが水面ゼロになるだけです。それに比べて機会は、うまく捕まえれば、成長の糧になります。「成長とは量の拡大ではない。新しいものを生むことである」。日に新た、日々に新たに、また日に新たならん。歌舞伎が古典だけではなく、若手を中心に新作へ積極的に取り組んでいる(ワンピース、NARUTO、あらしのよるに)のは、機会に焦点を合わせているからです。能はその点、現代の観客になじみある新作が見られないように思われます。「ドラゴンボール」など、生の世界と死の世界が交わる世界観なので、能にぴったりだと思います。

マーケティングは
営業をなくす目的

さえあれば、わっせわっせと売り込まなくても、つまり、営業しなくても売れる。企業活動の中心にはマーケティングがあり、トップから現場に至るまで全員が理解し、「何をすればいいのか」が行動レベルで浸透している必要があります。

ただ、本当に営業が要らないか、というとそういうわけではありません。ドラッカーはセールスをイメージしています。セールスと営業とは似ているけれど、違う。特に日本の優れた営業マンは、むしろ顧客のニーズを肌感覚で嗅ぎ取り、全身で傾聴するスポンジのような力を持っています。私は彼らを「マーケット・スポンジ」と呼んでます。マーケティングだけではなく、マーケット・スポンジとの合わせ技こそが、真の力を発揮できるのでしょうね。

ドラッカーは倫理と真摯(しんし)さという表現をします。私流に言うなら、「あり方を磨け」です。あり方がやり方を規定します。川の源流で、そこが濁ればすべてが濁ります。

阪本啓一

今週の教訓
ビジネスの目的は顧客の創造である

阪本啓一
■ブランディング・コンサルタント。大阪大学人間科学部卒業後、旭化成入社。2000年に独立し渡米、ニューヨークでコンサルティング会社を設立。06年、株式会社JOYWOW創業、現在取締役会長。地球と人をリスペクトする、サステナビリティ経営の実現に取り組む。『共感企業 ビジネス2.0ビジョン』『ゆるみ力』などの著書・訳書、講演活動も多数。
www.kei-sakamoto.jp
電子メディア開店! www.orange-media.jp

阪本が選ぶ 読めば分かるこの一冊

ドラッカー全教え

「彼は、人がなにをしているのか、それをどうしているのかだけでなく、どういう人になるのかまで気にしていた。」(本文から引用)

著者はドラッカー本人から直接学んだ中で、特に「コンサルティング」に絞って本書をまとめています。「実践なくして成果なし」「自分の頭で考える」「歴史書を読む」「正しい目を持つ」「営業はいらない」「倫理と真摯さ」…。ドラッカーは世界最高のコンサルタントだと思いますが、彼のコンサルティングの骨組みについて整理された本はこれまで出てませんでした。その意味で画期的な一冊です。
 
「私の武器は無知。知らないからこそ、正しい選択ができる」。この言葉は、励みになる。理論ももちろん魅力的ですが、「驚くほど控えめな自宅」
「特に大きいわけでもない居間で世界的企業の経営者をもてなしていた」素顔にひかれます。

秘書も持たず、自分で電話かファクスでやりとりする仕事への姿勢。この辺りこそ、学びたいものです。

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