2018/10/26発行 ジャピオン990号掲載記事

共感マーケティング

第199回 教養あるビジネス

ある大企業採用担当の人が興味深い話をしてくれました。

「採用面接時、志望動機について理路整然といくつも並べ立てる人がいます。そういう人はたいていすぐに辞めます。長く勤めてくれる人は、『んー。なんとなく好きだからですねー』という感じです」

非常に納得です。志望動機をあれもこれもと並べ立てる人は、適切な表現ではないかもしれませんが、傲慢(ごうまん)な人なのではないかと思います。つまり、「自分の力を発揮できる利点、これこれこういうものをこの会社は持っている。だから自分は採用されてしかるべきである」。もしかしたら、アメリカでは、こういうメンタリティーが求められるのかもしれません。

しかしですね。分別ある大人なら「自分が何したいのか、何に向いてるのか、正直よう分からんのですわ」なはずです。それより「よく分からないが、ひかれる」と素直に言える人のほうが伸びしろが大きい。「自分は自分でもよく分からないものである」という謙虚さ。これを教養といいます。

場所をわきまえよう

ビジネスは換金装置です。利益を出し、みんなの給与や福利厚生費、保険をまかない、納税する。

しかし、それだけでは必要だけど十分条件じゃない。「ビジネスとは何か」と聞かれたら、私は「生きること」と答えます。24時間、365日、来る日も来る日もずっとやり続けること。これって、生きることと同義です。会社勤めの人も独立自営業者も変わりないです。生きるためには、「あり方」が重要です。あり方とは、大事な人(恋人、親、子ども)に恥ずかしくない、むしろ見てもらいたい姿です。「もうかればそれでいい」というあり方はどうでしょうか。

この原稿執筆時、日本は台風24号に襲われています。沖縄は甚大な被害を蒙りました。いま私は大阪にいます。朝イチで会社へ行き、台風に襲われる午前中に帰宅しようと歩いていたら、あるカフェがランチ案内の立て看板を道路に出してます。メニューと矢印書いて。ついさっき、沖縄の破壊された街の写真を見たばかりの私はこの看板に憎悪を感じました。これ、飛ぶだろう。車が飛ぶんだよ。看板でも飛んだら迷惑なんだよ。人に当たったらどうなる? 普段ならいいよ。お客さん呼び込みの看板、アリだ。しかし、今日のこの状況を判断しようよ。教養がない。あり方がなってない。

教養を持つこと

「インスタ映え」で若い人を中心に人気のレストラン。勉強会後の懇親会で行きました。17人。「皆さん乾杯を合わせたいので、ビールはピッチャーでよろしいでしょうか」

ノーと言っても仕方ないので、言う通りに。ただ、ビールを愛する私としてはピッチャーというバケツみたいなものが好きになれません。はっきり言って嫌いです。あれはビールに対する冒涜(ぼうとく)とすら、思っています。私が思う、くだらないものナンバーワンです。

まあ、言っても仕方ないので、互いにグラスへ注ぎっこして。乾杯! 一口飲みました。発泡酒でした。

ビールと発泡酒は明らかに違う飲み物です。でもきっとこの店がメーンにしているお客さまは、そういうところにこだわらないのかもしれません。しかし。声を大にして言いたい。「ビールといえばビールだし、発泡酒は発泡酒である!」

仕方ないから2杯目はハイボールにしましたが、これも薄い水にスポイトでウイスキーを入れたのか、というくらいのまずさでした。ビールもハイボールも日本が誇るお酒文化です。教養、持とうよ。

阪本啓一

今週の教訓
知識の多寡じゃない。あり方で

阪本啓一
■ブランディング・コンサルタント。大阪大学人間科学部卒業後、旭化成入社。2000年に独立し渡米、ニューヨークでコンサルティング会社を設立。06年、株式会社JOYWOW創業、現在取締役会長。地球と人をリスペクトする、サステナビリティ経営の実現に取り組む。『共感企業 ビジネス2.0ビジョン』『ゆるみ力』などの著書・訳書、講演活動も多数。
www.kei-sakamoto.jp
電子メディア開店! www.orange-media.jp

阪本が選ぶ 読めば分かるこの一冊

変調「日本の古典」講義

「身体のセンサーが全部最高度にまで高まっていなければならないのに、机や床が汚れていたら誰も身体感度なんか上げないですよ。」(本文から引用)

いやはや。この二人の話、いつまでも聞いて(読んで)いたい。古事記から武道から能から論語の六芸から源平合戦から…汲めども尽きぬ知的宝庫。全289ページ、ほぼ全てのページに赤線を引きながらじっくり勉強しました。これで思うのは、文化的アーカイブが豊富であればあるほど、世の中面白くなる、ということ。

ニューヨークは音楽、演劇、映画、ビジネス、メディア、美術、自然(セントラルパークなど)、民族など、文化的アーカイブの宝庫。その歴史や背景を知れば知るほど、ニューヨークが好きになり深い体験になる。

ただ無色透明なレンズを通してくぐるのと、事前にしっかり知識として身につけた上でとは、体験の質が変わってくる。山の民源氏と海の民平家の甲子園決勝戦が源平合戦だったなど、知的興奮間違いなし。

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