2018/09/21発行 ジャピオン985号掲載記事

共感マーケティング

第194回 2ー6ー2

人が集まって仕事するとき、不思議に当てはまる法則があります。

「2—6—2の法則」。先頭切ってみんなをリードするのが2、真ん中の6は浮動票で、「行くなら行くし、行かないなら、行かない」自分の意見がない。最後の2は完全ぶら下がり。つまり、10のうち、貢献するのが先頭の2だけという。

面白いことに、「ならば先頭の2だけでチームを組めばいいのでは」と、選抜隊で仕事をしても、見事にその中で2—6—2が生まれる。人間、不思議な生き物です。

なぜか動かない
経営者塾有志30人で肉フェスに出店することになりました。資金は各自の出資で賄いました。私は専門なので、マーケティングを設計、我ながら完璧なプランができました。ところが。動かないのです。

メンバーは全員経営者です。だから会社に戻れば2—6—2の先頭の人。

出資しているから、ちゃんとやらないとリターンが望めない。なのに、見事に動かない。真ん中の6だったり、最後の2で、何もしない。必死になって取り組んでマーケティングを動かしているのはコアなメンバーのみ。

これには戸惑いました。それまで私は、「2—6—2を生むのは、組織内のステータス、つまり、雇われマインドがそうさせている」と考えていました。

雇う側になれば、全員がしゃかりきになって先頭走るだろうと。ところが、見事に違いました。だから人間、面白い。そして気づいたのです。「2—6—2の6以下は、本人の質が原因ではない。環境の成せる技である」と。

環境が思考を決める
本人の質が原因ではなく、本人の置かれた環境で取り組む姿勢が決まる。

経営者塾で考えてみましょう。彼らは勉強会に参加しています。その中で、肉フェス出店が決まった。マーケティングも決まった。もちろん、勉強になるから、できることには一所懸命取り組みたい。

しかし、人によっては「社員の問題」「取引先との問題」「金融機関との問題」「プライベートな問題」などの方に優先順位を割きたい。経営していれば、いろいろな問題があります。これを環境といいます。

「勉強会には勉強だけでいいんじゃないの?それより、目の前のこの問題の方が大事」と考えてもおかしくありません。ごく納得できる話です。

店や会社に、「問題な人」は必ずいます。そういう人たちも、本人の「質」を問うのではなく、「何かしらの環境に置かれているのではないか」と、環境に目をやってみる。すると、親の介護で悩んでいたり、育児問題で夫婦関係にちょっと悩ましい問題があったり、環境面で、「仕事どころじゃない」問題を抱えていることがあるものです。

それを突き放して、あくまで仕事のことだけを話題にし、「ちゃんとやらなきゃ、だめじゃん」と言ったところで、話は前進しません。本人が一番よくわかっているのです。環境面で、「何か手伝えること、ない?」「そういえば、**さんも同じようなことで悩んでいたことがあったなあ」などをフランクに話し合うことができたら、また違う風が吹いてくるかもしれません。

理論でなく、パッション
今回の体験から、私は、マーケティングやブランディングの理論はもちろん大事だけど、動かすのは人間。人間のパッションがなければ何も動かない、ということを心底感じました。学びました。あらためて、深い人間理解が必要だと痛感した次第です。

阪本啓一

今週の教訓
パッションが決めます

阪本啓一
■ブランディング・コンサルタント。大阪大学人間科学部卒業後、旭化成入社。2000年に独立し渡米、ニューヨークでコンサルティング会社を設立。06年、株式会社JOYWOW創業、現在取締役会長。地球と人をリスペクトする、サステナビリティ経営の実現に取り組む。『共感企業 ビジネス2.0ビジョン』『ゆるみ力』などの著書・訳書、講演活動も多数。
www.kei-sakamoto.jp
電子メディア開店! www.orange-media.jp

阪本が選ぶ 読めば分かるこの一冊

人間臨終図巻 1

「『私がいない間の映画はみんなコケればいいんだ』(夏目雅子)」(本文から引用)

全4巻。古今東西、職業もまちまち、923人の臨終の様子を描いた奇書。引用した夏目雅子の言葉は、白血病と知らされず入院していた際のもの。彗星(すいせい)のごとく現れた女優は、27歳で亡くなります。27歳ですよ。うちの子供より若い。

10代、20代、…49歳で亡くなった人々と、年齢別にまとめてあります。Kindleで読むと、目次からタップして即座に飛べるので便利。アンネ・フランク16歳、ジャンヌ・ダルク19歳、樋口一葉24歳、滝廉太郎24歳…みんな若くして大きな仕事を成しています。夏目漱石49歳。

いったい自分はこの歳になるまで何をしておったのだ、とつい思ってしまいますが、まあでも、人はそれぞれお役目というものがありますから。聖徳太子が48歳で亡くなったとは初耳でした。

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