2018/08/10発行 ジャピオン979号掲載記事

共感マーケティング

第189回 創る人・受ける人

 「これだけがんばってるのに、給料が上がらない。オレたちがこんなに利益出してるのに、隣の課が足引っ張るからだ。こんなの不公平だ。やってられない。辞めます」

 こうして2人辞めました。Aは同業他社へ、Bは同じ業種で独立しました。よくある話です。私の見立てでは、AもBもうまくいきません。なぜか。辞める動機です。

 「自分はがんばっている→なのに給料に反映されない」。一見、論理的に筋道が通っているように見えます。しかし、「がんばっている」というのは、「与えられた目標をクリアした」ことが根拠です。その目標は自分が作り出したものではありません。与えられたものです。ここに問題があります。ならば、目標をクリアできなかったら、給料を下げますか?そもそもあなたのその目標は会社の経営にいかなる貢献をしたのか、数字で話せますか?おそらく難しいでしょう。

受けるから創るへ

 ここに「受ける人」の限界があります。目標を自分で創り出したなら別の話ですが。

 同業他社へ行ったAは、行った先でも同じような不満を抱えます。メンタリティーが「受ける人」だから。

 同業で独立自営したBは仕事の受注で苦労します。繁盛する独立自営業者は、仕事を「受ける人」ではなく「創る人」だからです。コツは、「戦わない」「違うことをする」です。

 既に他社でもできる仕事をこっちに持ってきて受注しようとすれば、いきおい「じゃ、価格は安くできるんだな?」になります。価格競争は、宇宙で一番つまらない競争です。業界全体にダメージ与えますし、「何のために独立したの?」になります。

 この時代、職業は多様化し、働き方もさまざまあります。しかし、働く人には2種類あります。2種類しかいません。会社にお勤めか、自営か、ではありません。仕事を自分で創る人と、仕事を誰かから受ける人です。会社員でも、仕事を自ら創り出す人はいます。自営業者でも、受ける仕事ばかりやっている人がいます。

 利益が出たり、本人の成長につながったりするのは、言うまでもなく「創る人」です。

創って創り続ける

 思えば私が独立してからの20年は、仕事を創り続けてきた歴史です。

 メルマガを配信し始めたのが1995年。「阪本って誰やねん?」という時に「阪本塾」という個人のビジネス私塾を開講したのが2000年です。日本でも私塾は珍しい時代でした。コンセプトやネーミングも、次々生み出しました。

 「とんがり」「とんがったモチーフ」(1995年)、「エクスペリエンス・マーケティング」(96年)、「土足マーケティング」(99年)、「商売のトライポッド」(96年)、「お祭り型市場」(2000年)、「顧客参加型市場」(00年)、「リーダーシップ・プレーン」(04年)、「リンクエコノミー」(08年)、「ゆるみ力」(08年)、「ブランド・ジーン」(14年)、「瞬間の経営」(16年)、「所有を捨てる」(18年)、そして今年、まったく新しいビジネスモデルの出版社創業。思えば、一風変わったコンサルティング会社JOYWOWも、「創造した」と言っていいと思います。創ってつくってつくって「止まると死ぬのじゃ」です(笑)。

 芸能界でも、創った人が残っています。小泉今日子は「小泉今日子」という職業を創造しました。アイドルから、次々とメタモルフォーゼして。

 メニューの開発、接客の方法、顧客対話の方法など、創る対象は山ほどあります。そして、創れば、「戦わない」安全地帯へ行けるのです。

阪本啓一

今週の教訓
創造の喜びを!

阪本啓一
■ブランディング・コンサルタント。大阪大学人間科学部卒業後、旭化成入社。2000年に独立し渡米、ニューヨークでコンサルティング会社を設立。06年、株式会社JOYWOW創業、現在取締役会長。地球と人をリスペクトする、サステナビリティ経営の実現に取り組む。『共感企業 ビジネス2.0ビジョン』『ゆるみ力』などの著書・訳書、講演活動も多数。
www.kei-sakamoto.jp
電子メディア開店! www.orange-media.jp

阪本が選ぶ 読めば分かるこの一冊

火の鳥 黎明編、未来編

「もういちど人間は新しく生まれて新しい文明をきずくのですよ」(本文から引用)

 手塚治虫のライフワーク。出版社によってさまざまなスタイルが出ています。各編のどれから読んでもつながっています。不老不死の火の鳥が人間の欲に満ちた歴史を見守る。鳥といっても人間の目にそう見えるだけで、実体は生命エネルギー。時間は太古から、超未来まで。いつの時代でも、人間の欲は変わらない。そして、その欲のために悩み、哀しみ、滅びていく。

 宇宙の大きな時の流れの中で見ると、人間なんて、ちっぽけな存在。どの巻も面白く、テーマが興味深いですが、まずは黎明編と未来編がおすすめ。この二つは密につながっています。読後、自分の悩みや不安が消えていることでしょう。そう、宇宙の悠久の時の流れの中では、すべてが小さく、取るに足らないものに見えてきます。商売でもうかった、損した…小さいちいさい(笑)

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