2018/08/03発行 ジャピオン978号掲載記事

共感マーケティング

第188回 時間をデザインする

 「吾輩は猫である」(夏目漱石)にこんなやりとりがあります。

 「ところが閑中自(おのず)から忙ありでね」

 「そう、粗忽(そこつ)だから修業をせんといかないと云うのよ、忙中自ら閑ありと云う成句はあるが、閑中自ら忙ありと云うのは聞いた事がない」

 楽しいやりとりです。作中、全体がこのようなとぼけた対話で進みます。

忙中閑あり

 現代人の私たちから見れば、「何とのどかな…」という時間の流れ方。そして、明治の頃は、作品を読むと、突然の来客があるのが当然だし、客として訪問した家に出前を取り寄せてそばをすする、というのも「あり」だったんだと分かります。「アポイント」という言葉、いつから日常になったのでしょう。

 一方、現代の私たちは忙しいですよね。本当に忙しい。月1回は沖縄へ仕事で行くのですが、きれいな海を見るのは飛行機の窓から。いつも会議室とホテルの往復、1泊2日でとんぼ返り。横浜に本社があった10年の間、のんびり港のそばを歩くこともなく、港の見える丘公園(オフィスの近くだった!)を散歩することさえ、一度もありませんでした。

 北海道へ行っても、ピンポイントでホテルと会場との往復だけ。大自然を満喫、ということはしません。

 大なり小なり、皆さん、同じような生活をされているのではないでしょうか。セントラルパークを散歩したのは、いつですか?

 そういう私たちだからこそ、「忙中閑あり」の精神を大事にしたい。

 意味は、「忙しい。しかしその中でも心にゆとりを持つようにしようね」。

時間を味方につける

 時計を見るとき、どんなときかというと多くは「あ。あと10分しかない!!」というケースじゃないでしょうか。移動中、仕事中、朝の支度中。

 つまり、「時間に追われている」。だからといって、「時間に追われるのではなく、時間を追い掛けましょう」なんていう訳の分からない非論理的な話をするつもりはありません。時間を追い掛けるって…ウサギなら追い掛けられますが、時間は見えないし。

 お勤めの人は会社や店にいる時間によって収入を得ている側面があります。しかし、それって、「自分の大切な人生の時間を他人に預ける」ことにつながりませんか? 会社やお店は永遠に存在するわけではありません。潮流の速い現代、組織の寿命は人間の生物的寿命より短いのです。

 ならば、自らの時間を自らでデザインする発想を心掛けませんか? 具体的にはどうするか。「9 to 5(ナイン・トゥ・ファイブ)=勤務時間とウイークデーはオン、週末はオフ」という、常識に捉われた考え方を捨てるのです。これは組織が決めた人生の時間割にすぎません。大事な人生の時間を、他人任せではなく、自分でデザインするのです。とはいえ、24時間働けでもないし、組織のルールを無視しなさい、でもありません。

 生きるのも、仕事するのも、「楽しむため」です。

 自営業者も同じ。もうかるから、とか、何となく自慢できるから、とかいう動機で仕事するのは、やめましょう(笑)。楽しむためです。

 ならば、忙中に、「楽しんでる?」と自問する習慣をつけましょう。「楽しんでない」場合、会社や店や上司や取引先のせいにするのではなく、すべて自分が原因です。自分の選択が「楽しんでない」環境を作っています。選択を変えなさい、ということなのです。

 時間をデザインする、イコール、時間を味方につける。人生、楽しみましょう!!

阪本啓一

今週の教訓
楽しみましょう!

阪本啓一
■ブランディング・コンサルタント。大阪大学人間科学部卒業後、旭化成入社。2000年に独立し渡米、ニューヨークでコンサルティング会社を設立。06年、株式会社JOYWOW創業、現在取締役会長。地球と人をリスペクトする、サステナビリティ経営の実現に取り組む。『共感企業 ビジネス2.0ビジョン』『ゆるみ力』などの著書・訳書、講演活動も多数。
www.kei-sakamoto.jp
電子メディア開店! www.orange-media.jp

阪本が選ぶ 読めば分かるこの一冊

ゴールベース法人取引

「お客さまに、もっと寄り添い、そして企業・経営者の夢の実現を応援しよう。」(本文から引用)

 地域金融機関向けの本ですが、一般のビジネスパーソンにも大変役立つ内容です。それは、「ゴールベース」という視点。しかも、短期的な結果を求め過ぎるのではなく、ロングスパンで見る時間軸の捉え方。

 ゴールの設定は重要です。著者が事例に出しているように、「運動して痩せたい」より「運動して半年で5キロ痩せたい」とゴールを設定したほうが実現しそうです。著者とは親しいお付き合いをさせていただいているのですが、何より熱い。

 その彼が、フィンテックなど、時代の急速な流れに翻弄されている銀行、特に地域金融機関向けに書いた1冊です。大志を掲げる企業、ゴールベースアプローチの必要性、優れた企業の条件など、具体的な取材事例を援用しながら、熱く語ります。読後、勇気とやる気が湧いてきます。

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