2018/07/13発行 ジャピオン975号掲載記事

共感マーケティング

第185回 人「が」動く

 ネットがビジネスの世界に入り込んでくる様を1995年から観察しています。もちろん、外野ではなく、フィールドのど真ん中に立って、自分も経営したりコンサルティングの現場で。

 90年代末から2010年代までの20年は、ネットが経済空間として完成していくプロセスでもありました。ネットが社会に浸透し、スマホ、SNS、アプリが広まっていくことで、企業が情報を独占していたものが、顧客も同等か、それ以上に情報を手にするようになりました。結果、顧客参加市場が生まれました。SNSの場合、企業(フェイスブックやツイッター)はプラットフォームを用意するだけで、顧客が自分でコンテンツを作り出しています。

 大きな特徴としては、「中央集権から分散化へ」。企業が頂点に立ち、「無知な顧客をだまして売る」ことができなくなりました。

オレ、それ、やりたい!

 そしてこの分散化の流れは、組織にも影響を及ぼしています。

 かつての組織はピラミッド、上長の「命令」で人は動いていました…、今も大半の組織の行動動機はこのままですね。企業不祥事は「上の命令だから納得できないけど、仕方ない」といやいやながらやってしまうことで起こります。仕事帰りの居酒屋で上司や会社の悪口が出てくる原因も、すべてこれです。

 「人を動かす」のが「命令」でした。しかし人は本来、命令では動きません。他動詞は無理を生みます。やはり自動詞でなければ。つまり、人「が」動く。人が動くのは、コミットメントしかありません。

 「オレ、それ、やりたい!」というやつです。

 動機が生まれないと、本当の意味でいい仕事はできない。なぜなら私は、すべての仕事はその人の作品であり、処理ではいけないと考えているからです。

共感と納得

 私の主宰する経営者向け勉強会で、「牛肉サミット」(肉フェス/www.gyu-summit.com)に出店することになりました。8月25日と26日の2日間、滋賀県大津市、琵琶湖畔の特設会場で開催されます。他の出店者はみんなプロばかり。そこへ新参者もいいところの私たちが出る意味は、「商売の実践」です。商売には原資が必要なため、全員にヒアリングしました。

 「出資できる?無理しなくていいです。可能な範囲で。出資が無理なら、当日汗流すも立派な参加方法だから」と。

 結果、32人全員が1万円、5万円、10万円…と出資し、194万5000円が集まりました。商売の実践ですから、投資金額はもちろん、いくばくかの利益をリターンさせねばなりません。広報、財務、設備、調理…など、担当チームに分かれ、日夜ネット&リアルでミーティングを重ねています。

 この組織は、当然ですが、阪本が命令しても動きません。各自がその企画やアイデアに共感し、納得しなければ参画してもらえないのです。

 この「人が動くメカニズム」は、広く一般の組織にも応用できます。コミットメントして欲しければ、「共感と納得がセットになっているだろうか」が試金石になります。また、「何を言うかより、誰が言うか」が大事。ピラミッド型組織の場合は、「何を言うかより、どんな肩書きが言うか」が大事でした。「あいつの頼みなら、断れないよなあ。忙しいけど、ま、何とかするか」という動機が本来であり健康的ですよね。

 「すべての仕事を作品化する」という矜持(きょうじ)を持ち、100%の自分をぶつける意気込みで取り組みましょう。

阪本啓一

今週の教訓
すべての仕事は作品です

阪本啓一
■ブランディング・コンサルタント。大阪大学人間科学部卒業後、旭化成入社。2000年に独立し渡米、ニューヨークでコンサルティング会社を設立。06年、株式会社JOYWOW創業、現在取締役会長。地球と人をリスペクトする、サステナビリティ経営の実現に取り組む。『共感企業 ビジネス2.0ビジョン』『ゆるみ力』などの著書・訳書、講演活動も多数。
www.kei-sakamoto.jp
電子メディア開店! www.orange-media.jp

阪本が選ぶ 読めば分かるこの一冊

まっぷたつの子爵

「おまえはおまえの半分を失い、世界の半分を失うが、残る半分は何千倍も大切で、何千倍も深い意味をもつようになるだろう。」(本文から引用)

 主人公は戦争で敵の大砲でまっぷたつになってしまいます。左右に分かれても、半分は悪、半分は善として生きます。悪は純粋な悪で、情け容赦ありません。

 子爵なので、司法・立法・行政の三権を手にしています。そんな悪が生まれたら…平和な村の生活はたちまちひっくり返ります。一方、善も、実はいいことばかりではなく、むしろ迷惑なことばかりやります。正しい人はメーワク。これで分かるのは、この世に「完全な悪・完全な善というものは存在しない」です。

 人間誰しも、悪と善の間をメーターがふらふら振れている。それでこそ人間であり、人生の味わいなのです。さて、物語、最後は一人の女性をめぐって善と悪が対決します。結果、善悪がくっついて元に戻るのですが、人間を救うのは「愛」だという寓意なのでしょう。

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