2018/07/06発行 ジャピオン974号掲載記事

共感マーケティング

第184回 慎独タイム

 SNSが生活の隅々にまで浸透した私たち現代人の一日は、「反応」で過ぎていってしまいます。へたすると、人生最後の日まで、「反応しつづけ」て走っていくのかもしれません。メール、フェイスブックメッセージ、ラインへの返信、投稿コメントへのレス、折返しの電話…。

 一通りの反応が終わって、さて、「自分のこと(仕事や余暇)」をしようとすると、また新たなボールが飛んできます。それらに返球していたら、あっという間に一日が過ぎる。

 ヘタすると、寝る直前にもまたメッセージが飛んできて、寝室までスマホを持ち込まないと気持ちが落ち着かない…、これ、あなたの姿じゃないですか? 実は私、こんな日常を送っています。

 先週も、妻の誕生日を祝うために近隣へ一泊二日旅行に出掛けたのですが、「ちょっと待って、これの返信済ませたら朝食会場へ行くから」のありさま。プロジェクトが三つ重なっていて、「何がなにやら」の状態です。左右の腕で皿回ししながら綱渡りしているような。

慎独

 そんなせわしない折、久しぶりに読んだ「大学」(四書五経の一つ。孔子の弟子・曾子の著とされる)から、次の一節が浮かび上がってきました。

 「故に君子は必ずその独りを慎むなり」

 繰り返し2回出てきます。「慎独(ちんどく)」には二つの意味があります。一つは「誰も見ていない独りの時でも、後ろめたいことはせず、ちゃんとしよう」というもの。

 ゴルフで「見てなきゃ何でもあり」というジョークがあります。誰も見ていなければOBゾーンに落ちたボールをそっと動かすのもあり、バンカーから手で出すのもあり、というやつです(笑)。政治家が得意のプレーじゃないかと思いますが、まあ、やっちゃいかんですよね。目覚めが悪いし、お天道さまに顔向けできない。

 もう一つの意味は、外界との接触をオフにして、独り自分の内面と向き合う。今の私に必要なことはこれじゃないか。タイミング良く、知人が計画中のリゾートホテルのプランを聞く機会がありました。

 私はこれまでリゾートは、タイ、バリ、シンガポール、志摩観光ホテル、ハワイ、フィジー、マイアミなどなど、いっぱい体験しています。でも、リゾートって場所じゃないんですね。マンハッタンのど真ん中でもリゾートできます。それは、「オフ」です。

 「慎独(独りをつつしむ)」できる場所であれば、自分と向き合える、外の時間の流れから解放される…。そんな話を知人にしているうち、そうか、「慎独」はいつでもどこでもできるんだ、そして、それは「反応な毎日」の中でとてもとても重要な時間なのだ、と気づきました。

忙しさに終わりなし

 忙しいです。毎日、あっという間に時間が過ぎます。そして、自営業だから特になのかもしれませんが、休日、早朝深夜、お構いなしに仕事できてしまいます。やればやるほど「TODO」が減っていくのではなく、むしろ減りません。次つぎと生まれるのが「TO DO」の性質のようです。ならばちょっと、ほんの5分でもいいので、時間を取って、慎独タイムを取りませんか?

 慎独タイムを取ったから、その時間の分仕事が片付かないとしましょう。それでいいのです。
 人生は有限。しかもあっという間。「Life is very very short.」。自分と向き合う時間の一つも取れないで、それ以上に重要な仕事なんてありません。

 あー。これ、私が自分に向けて書いてるなあ!!(笑)

阪本啓一

今週の教訓
自分と向き合う時間、取りましょう

阪本啓一
■ブランディング・コンサルタント。大阪大学人間科学部卒業後、旭化成入社。2000年に独立し渡米、ニューヨークでコンサルティング会社を設立。06年、株式会社JOYWOW創業、現在取締役会長。地球と人をリスペクトする、サステナビリティ経営の実現に取り組む。『共感企業 ビジネス2.0ビジョン』『ゆるみ力』などの著書・訳書、講演活動も多数。
www.kei-sakamoto.jp
電子メディア開店! www.orange-media.jp

阪本が選ぶ 読めば分かるこの一冊

ヒットの崩壊

「あらゆる分野で『ヒット』が生まれなくなっている今の時代を読み解くためのキーになるのではないかと思う。」(本文から引用)

 「国民的なんとか」が消えて久しいです。高度経済成長時代は均質な購買動機でした。そして、みんなが口ずさめるヒット曲がありました。ところが、「いま、ヒットしてる曲って何?」と聞かれて、即答できますか? そういえば、カラオケにはとんと行かなくなりました。

 昨日、セミナー受講生25人に「最近カラオケ行く人~」と聞いたら、手を挙げたのが3人。他の大半は「以前は行っていたけど、最近、行かなくなったなあ」でした。ヒット曲が消えたのと同時に歌が生活の中から消えたのかもしれません。

 本書では、私の持論である「マイクロインタレスト化」が音楽の世界で顕著に表れていること、そして、「応援されるブランド」の時代であることが明らかです。音楽とは関係ない業界の人にとっても、参考になるデータや知見が満載。

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