2018/06/22発行 ジャピオン972号掲載記事

共感マーケティング

第183回 ヒモ2・0

 白鳥光太という人がいます。しらとりじゃなく、「はくちょう・こうた」と読みます。私の塾生。4年くらい前、岡山県津山市で開催した連続マーケティング講座で知り合いました。

 当時彼はウェブ制作会社の社長。その後、彼の人生も紆余(うよ)曲折あり、現在は経営コンサルタントをしています。
 「講演で話す仕事がしたい」というので、「でも、世の中に講師は星の数ほどいる。何か要素を掛け算しないとブランディングできないね。とんがれないね」と話してました。何があるだろう。

 知人は学習塾を始めるにあたり、フットサルを掛け算しました。「塾×フットサル」、これで強いフック、とんがりが生まれました。ブランディングのコツは掛け算というのは、こういうことを指します。

全部もらいものです

 さて、白鳥くん。講義の休憩中に近寄ってきた。着ているTシャツがユニークなので、褒めました。
 「もらいものです」
 「そうなんや」
 「これ以外(と、Tシャツの上にはおっているシャツを指し)は、今日着ているもの、すべてもらいました」
 「!?」

 意味が分からないので確認すると、文字通り、ズボン、スニーカー、靴下、メガネに至るまで、すべて「もらいもの」だと言います。こうなるとがぜん面白くなってきました。

 「まさか下着は違うよね?」「…あ、そうです。もらいました」。どういうことか。

 彼いわく、「コンサルティングを依頼してくる人って、たいていお金ないんです。だから、現物をいただくことにしました」。非常に理にかなっています。たしかに、経営がうまくいっていればコンサルティングを頼む必要はないわけで。「請求書書くのも、面倒臭いんです」「取引にかかるコスト、お互いにムダと思いません?」。

 だから、居酒屋の売り上げを上げたり、集客の相談に乗る代わりに、飲食無料。ワイファイが飛んでいるので、店の席を借りてクライアントに来てもらいコンサルティングをやったり、パソコンで資料作成したりするそうです。居酒屋がオフィスになってます。店の鍵も預かっている。

 昼前に起きて、居酒屋へ行き、ランチをいただき、その後ずっと仕事したり来客に会い、夕方からはハイボールを飲んだり食事したりして晩飯が終わる。帰宅して、寝る。

 以上、これが白鳥くんの典型的な1日です。

年収60万

 彼の住んでいる地域は車がないと話にならないので乗ってますが、ガソリン代など必要経費は以前経営していたウェブ制作会社から出てます。昔取った杵柄で、会社には現在も定期収入があるそうです。自宅の家賃も会社経費。生命保険は入ってません。鍼灸院のコンサルティングフィーとして施術してもらっているので健康なのです。年収は60万円とのこと(!!)。

 彼は現在、私の勉強会に参加してくれていますが、そのお月謝が年収に占める比率はとても大きい。「大丈夫?」と聞くと「そのために仕事増やしました」。

 「カバンに入る折り畳み自転車があるみたいですし、理想はカバン一つで生活したいです」。白鳥くん、家も、車も、家族も、何もかも不要といいます。もちろんお金も。

 白鳥くんのこの新しい生き方、勉強会・懇親会の話題をさらってしまいました。「ヒモの進化版だね」と誰かが言ったことから、「ヒモ2・0×講師」という掛け算が決まりました。

 「所有を捨てる」を実践している白鳥くん。新しい生き方を身をもって示してくれています。尊敬します。

阪本啓一

今週の教訓
新しい時代が来ています

阪本啓一
■ブランディング・コンサルタント。大阪大学人間科学部卒業後、旭化成入社。2000年に独立し渡米、ニューヨークでコンサルティング会社を設立。06年、株式会社JOYWOW創業、現在取締役会長。地球と人をリスペクトする、サステナビリティ経営の実現に取り組む。『共感企業 ビジネス2.0ビジョン』『ゆるみ力』などの著書・訳書、講演活動も多数。
www.kei-sakamoto.jp
電子メディア開店! www.orange-media.jp

阪本が選ぶ 読めば分かるこの一冊

バッタを倒しにアフリカへ

「子供の頃からの夢『バッタに食べられたい』を叶えるためなのだ。」(本文から引用)

 昆虫学者としてバッタの研究で生きていこうにも、日本はバッタの被害がない。一方、アフリカではバッタが大発生して農作物を食い荒らし、深刻な飢饉を引き起こしているといいます。

 そこで著者は31歳の春、日本の国土のほぼ3倍を誇る砂漠の国・西アフリカのモーリタニアへ向かいました。当時日本人は13人しか住んでおらず、ガイドブックにも載っていない未知なる異国。言葉も通じない、生活習慣、研究習慣も違う中、雪国秋田県出身のバッタ博士がクソ暑いサハラ砂漠で獅子奮迅の活躍をします。

 読み物としても面白いし、「バッタに食べられたい」というクレイジーな科学者の発想も興味深い。ニューヨークという、同じく異国で闘っている皆さんにはさまざまな共感ポイントがあることと思います。エンジョイ!

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