2014/10/10発行 ジャピオン783号掲載記事

共感マーケティング

第1回 来店理由を聞こう

  
生データを収集

 バーチャルなネットショップでも、実際に存在するリアル店舗でも、来店してくださったお客さんに、「なぜ当店を知ったのですか?」と来店理由を聞くようにしましょう。

 ネットショップであれば、購入フォームの中に「当店を知ったきっかけを教えてください」というコーナーを設けます。実際にこれを導入している人に取材すると、「面倒だから書いてくれないかと思っていたら、思いのほか、内容もしっかり書いてくださる方が多い」とのことです。店舗であれば、初めてのお客さんは大体分かるので、レジで代金精算の際に会話を交わしましょう。

 「どうしてうちを知っていただいたのですか?」

 リアル店舗のコンサルティングをする際、スタッフとして店頭に立ち、来店客と会話しますが、主に知りたいのは「来店理由」です。

 レストランの場合、最初にメニューを渡し、お水を出す際、ちょっと聞いてみるのです。

 「本日はご来店ありがとうございます。どうしてうちのことを知っていただいたのですか?」

 なぜ、来店理由を聞くのか。それは、マーケティングの成果を知る最も分かりやすい方法だからです。実行しているマーケティング施策の何が的を射ていたのか―。

 レジの下にノートを用意し、時間の隙間を利用して、書き込みます。一週間単位で、その書き込みを読み返してみるのです。可能であれば、30分から1時間かけ、スタッフ全員で「来店理由会議」をやりましょう。口コミ、友人の紹介であれば、何が口コミされたのかが重要です。「食後のデザートがおいしかったから」とか、「接客が気持ち良かったから」など、押さえるべきポイントは「理由」です。

 これらの生データこそが、次のマーケティングに活かせる重要な鍵となります。資源(予算、時間、人、エネルギー)は限られていますから、優先順位を付ける必要があります。また、効果のないマーケティング施策をやめる根拠にもなるのです。

  
お客さんの「声」を分析

 商売ですから、波はつきもの。客足がなぜか引いてしまった場合、この生データがあれば打つ手が見えます。

 マーケティングはSTP、つまりセグメンテーション(segmentation:どういうシーンで利用してもらうのか)、ターゲティング(targe- ting:どんなお客さんに来て欲しいのか)、ポジショニング(positioning:他店にはないとんがりは何か)に基づいて戦略を立てます。ところが、戦略立案はあくまで店の都合です。ここに来店理由が入ると、顧客の視線が加わります。「誕生日など記念日に利用してもらいたいと思っていたけど、実際は友人たちとの懇親会などの利用が多いみたいだね」といった軌道修正こそが、店の繁盛を加速してくれるのです。

 

   
   

阪本啓一

今週の教訓
お客さんからの生データを知ることが、一番簡単なマーケティングです。

阪本啓一
■ブランディング・コンサルタント。大阪大学人間科学部卒業後、旭化成入社。2000年に独立し渡米、ニューヨークでコンサルティング会社を設立。06年、株式会社JOYWOW創業、現在取締役会長。地球と人をリスペクトする、サステナビリティ経営の実現に取り組む。『共感企業 ビジネス2.0ビジョン』『ゆるみ力』などの著書・訳書、講演活動も多数。
www.kei-sakamoto.jp
電子メディア開店! www.orange-media.jp

阪本が選ぶ 読めば分かるこの一冊

絞り出し ものぐさ精神分析

もうすぐ80歳になるが、わたしの人生は、自由意志とはかかわりなく、あたかもたまたま出会った偶然事に左右され、流され、決められたかのようである。(本書より引用)

 
 著者は1977年のデビュー作『ものぐさ精神分析』で、国家は幻想、時間も幻想、愛と性、自我もすべて幻想ーという唯幻論を展開しました。当時、大学生だった私はこの論に大いに刺激を受け、卒業論文の論拠として使わせてもらった記憶があります。

 その著者も80歳を超え、文字通り、これが最後の雑文集とのことです。相変わらずキレ味鋭い文章で、快刀乱麻を断つ醍醐味(だいごみ)を存分に味わえます。特に、日本の組織がややもすると自閉的になり閉じてしまい、意思決定者が自分をそのポジション(社長など)にしてくれた先の社長などの恩人のおかげでまっとうな判断ができなくなる、という論には大いに賛成です。ブランドを活かすも殺すも組織次第、と考えている私は、強い論理的援軍を得ました。

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