2018/06/01発行 ジャピオン969号掲載記事

共感マーケティング

第180回 営業の秘訣

今日は、このコラム読者のためだけに、「営業のコツ」を特別にささやきましょう。

私は会社員時代、建材の営業を19年しました。若いころは、体力にものを言わせて、とにかく訪問件数を増やすことで稼ぐ作戦でした。販売店とパートナーを組み、ローラー作戦と称し、片っ端から設計事務所や建設会社を訪問しまくりました。1日最低でも20件。ところが、いくら足を棒にしても、売り上げは上がらないのです。

やがて、気付きました。「相手は望んでない」という真理に(笑)。むしろ設計に集中したい時間を突然の訪問で奪っていたのだと。必要なら向こうから連絡してくるでしょう。

この思いが後に、「Permission Marketing」を翻訳する際の重要なコンセプト「Interruption Marketing」に、「土足マーケティング」という、われながらぴったりの言葉を当てられた背景にあると思います。では、どうすればいいか。

相手を出世させる

商談の目的を、「自分の担当商品を1枚でも多く売る」から「目の前の人を出世させる」と変えたのです。商品説明でも、見積もり提出でも、イベント企画書でも、すべて、それを読む人がトクするかどうか、で考えます。以降、私の行動のすべての目的がこれに変わりました。今この原稿も、読んでくださっているあなたがトクするように考えています。

あるホテルの建設計画がありました。所長に、「この物件のキモというか、一番大事に取り組んでいるポイントは何ですか?」と聞きました。

以前の私なら、担当商品がどれくらい採用されているのか、予算はどれくらいか、が一番の関心事でした。しかし、そういうのをすべてすっ飛ばして、「現場のテーマ」を聞き出すことにしたのです。

その「テーマ」こそが所長が社内で評価されるポイントなのですから。所長いわく「仕上げをメンテナンスフリーにしたい。そのためには甲子園球場のように、植物を外壁いっぱいに絡ませたい」とのことです。私は「植物は相当な重量になるのではないか?」と考え、技術担当者の力も借りながら、計算してみました。

案の定、植物の重量を支えるために、躯体(くたい)の鉄骨を大きくしなければならないことが分かりました。

他にメンテナンスフリーの材料があれば、それを代用してみてもいいのではないか?そうすると鉄骨を小さくすることが可能なのではないか? 検討すると、可能で、何千万円もコストが下がることが算出できました。提案書としてまとめ、所長に提出すると、ものすごく喜んでくれました。

当初から予定していた現場利益にオンされるわけですから、彼としても、社内評価が上がります。所長はこれを恩に感じてくださって、その次の現場で声をかけてくださいました。

他の取引先でもこれを心掛けた結果、営業成績は伸びました。「私と話すとトクする」。分かりやすい面談動機です。

本を書く時も、担当編集者にとって「本が売れる」が社内評価を上げる分かりやすい指標です。しかしこれは心掛けたものの、百発百中とはいってません。申し訳ない。

目前の人を喜ばせる

企画書も、読んだ人が、つい同僚に話したくなるようなウイルスを仕込んでおく。つまり、「言いたいことを言う」のではなく「相手が読みたくなるような内容を」です。スピーチでもプレゼンでも同じ。「何が言いたいか」は100%不要で、「何なら相手が聴きたくなるか」が大事です。

阪本啓一

今週の教訓
相手を出世させる

阪本啓一
■ブランディング・コンサルタント。大阪大学人間科学部卒業後、旭化成入社。2000年に独立し渡米、ニューヨークでコンサルティング会社を設立。06年、株式会社JOYWOW創業、現在取締役会長。地球と人をリスペクトする、サステナビリティ経営の実現に取り組む。『共感企業 ビジネス2.0ビジョン』『ゆるみ力』などの著書・訳書、講演活動も多数。
www.kei-sakamoto.jp
電子メディア開店! www.orange-media.jp

阪本が選ぶ 読めば分かるこの一冊

WE ARE LONELY, BUT NOT ALONE.

「一度に100万部売れるよりも10万部×10年のほうがいい」(本文から引用)


SNSの浸透で個人と個人が直につながりっぱなしになり、組織の壁を超えて各自の興味関心(インタレスト)を基にやわらかな生態系を作っていく。これをエコシステムと呼んで新しい経済について書いたのが2010年『共感企業』。翌11年にエコシステムの壮大な社会実験として経営者向けの勉強会「MAIDO-inter- national」を創業し、その手応えを基に新しいマーケティング理論について書いたのが12年(フォーカス・マーケティング)。
ようやく佐渡島庸平さんが「コミュニティ」という名前でエコシステムについて書いてくださいました。副題が「現代の孤独と持続可能な経済圏としてのコミュニティ」。こうして、新しい経済についての考察がいろんな人からなされることは、とても良いことで、うれしい限りです。

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