2018/04/27発行 ジャピオン964号掲載記事

共感マーケティング

第175回 ソーシャルクレジット

 コリイ・ドクトロウのSF小説「Down and Out in theMagicKingdom(邦題=マジック・キングダムで落ちぶれて)(2003年)で描かれる未来、人間は不老不死になります。ボディーが古びてきたら意識だけ新品にインストールし、永遠に生き続ける。だから人があふれかえり、「個人空間(パーソナルスペース)」という言葉は死語になっています。

個人の信用を数値化

 この時代、エネルギー問題が解決したため、経済が根本的に変化し、貨幣がなくなり、代わりに「ウッフィー」が流通している。ウッフィーは人に何かいいことをすれば増えるし、逆をすると減る。いわゆる「徳を積む」というやつですね。その人のウッフィー点数はディスプレイに表示されるので誰でも見ることができます。ウッフィーの点数で社会生活ができる。使い果たしてしまうと、まともな生活ができなくなる。まさに貨幣の代わりです。でも、現実世界で、これに似たようなことが実現しています。

 中国のアリババグループが提供しているサービス「芝麻信用」(セサミクレジット)は、「アリペイ(Alipay=支付宝)」での購買履歴をAIディープラーニングで分析し、個人の信用を350から950まで数値化します。

 点数の高い人はそれだけ社会的信用が高いわけで、保証金免除や手続きの簡略化などの特典が得られます。ウソか本当か分かりませんが、合コン参加資格として、「800点以上の男性限定」という条件があったというのも耳にしました。年収と人格は比例しませんが、セサミクレジットは人を表すというわけですね。これってまさにウッフィーです。

 セサミクレジットの点数を減らすのは嫌だから、品行方正になるというインセンティブが働きます。ウッフィーもセサミクレジットも、社会的信用を数値化したもので、ソーシャルクレジットと呼びます。

大幅減点される行為

 ひるがえって、日本はどうでしょう。

 レストラン経営の友人から聞いた話。10人の団体予約をネットでして、当日来ない。予約時の携帯電話にかけてもデタラメな番号。そういう人は、複数の店をネット予約して、何の断りもなく行かないのだそうです。店はたまったものではありません。

 ネット通販で豆を売っている友人。ある顧客がクレームにもならないいちゃもんをつけて返品してきました。届いた袋を見ると8割がた食べていて、それで全額返金しろと言います。

 コンビニ。ドン!と分厚い財布をカードリーダーの上に置く。同じ電子マネーでも交通系かその他かで画面タッチが違うので、「Suicaですか?」と聞いても知らん顔。重ねて聞くと「るっせーなあ、PASMOだよ!!」とキレる。ダークスーツの、立派な企業のサラリーマンらしき人です。

 朝の通勤満員電車。「おい、そこどけよ」「動けないんだよ両方に挟まって」「お前邪魔なんだよ。そんなことだからいつまでもヒラなんだ」「ヒラじゃねーよ!」。不毛な対話です。「袖すり合うも他生の縁」は昔の話なのでしょうか。

 以上の事例、いずれも、ソーシャル・クレジットが大幅に減点される行為です。SNSが発達し個人と個人がつながりっぱなしの社会では、お金よりソーシャル・クレジットが重要になってきます。メルカリなどP2P個人間の商行為で重視されるのもソーシャルクレジット。

 個人、会社、店、いずれも、ソーシャルクレジットを意識するようにしましょう。自分がされて嫌なことはしない、約束は守る、いつも笑顔で。

阪本啓一

今週の教訓
お金より、信用の時代です

阪本啓一
■ブランディング・コンサルタント。大阪大学人間科学部卒業後、旭化成入社。2000年に独立し渡米、ニューヨークでコンサルティング会社を設立。06年、株式会社JOYWOW創業、現在取締役会長。地球と人をリスペクトする、サステナビリティ経営の実現に取り組む。『共感企業 ビジネス2.0ビジョン』『ゆるみ力』などの著書・訳書、講演活動も多数。
www.kei-sakamoto.jp
電子メディア開店! www.orange-media.jp

阪本が選ぶ 読めば分かるこの一冊

これでいいのだ

「この本には、これでいいのだというのが二百回近く出てくる。二百回も目でおっていれば、自然にマントラ的効果があり頭の中はこれでいいのだ文字がかけめぐるにちがいない。」(本文からの引用)

 「起こったことはすべていいこと」を哲学とする私としては、違うアプローチから、「これでいいのだ」と担保をもらったようで、読んでいてウンウンと頷くばかりでした。人生は自分の力で前に進むしかないのですが、人間のできることには限界があります。あとは天に任せる。思い通りになれば良し、ならなければそっちの方が良かったのだと思う。出た結果が良い結果。
 この考えに至ったとき、私の人生からストレスが消えました。例えば、セミナーで期待していたより少ない人数しか来なかった。それが最高の人数だと考えます。
 著者はアルコールは飲まないし、肉・魚も食べないといいます。私は年齢を重ねるほどに酒が強くなり、昨夜はJINROとスパークリングワインそれぞれ一本ずつ空けてしまいました。これでいいのだ。

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