2018/04/20発行 ジャピオン963号掲載記事

共感マーケティング

第174回 遊び力

「首から下で稼げるのは1日数ドルだが、首から上を働かせれば無限の富を生み出せる」とは、かの発明王エジソンの言葉です。
 しかしながら、AIがいろんな分野に進出してきつつある現状、「首から上」で、本当に稼げるのでしょうか。

首から上で稼げない?

 平均値を100とした場合の相対値IQで人間とAIを比較するのは無理があると思いますが、あくまで一つの指標として考えてみます。
 アインシュタインで160から190程度らしいです(本人に聞いたわけではないのですが)。ギネス認定された人類最高のIQで228。ところが、AIには、1万以上のものが普通に存在しています。だとすると、「首から上」でも稼げない時代になってきたのでしょうか。いえいえ決してそうは思いません。映画「グレイテスト・ショーマン」や「リメンバー・ミー(英題=Coco)」を観て感動するのは、ダンスやアクロバット技へのプロフェッショナルな姿勢に、そして、人間の歌の力に魂が揺さぶられるからです。味気ない「分析」からはあの感動は生まれません。

MUSTからCUTEへ

 思えば、ビジネスの世界は長く「問題」を「発見」し、「原因」を「分析」し、「戦略」と「戦術」を練って行動することを善としてきました。社会が未成熟で、製品・サービスが「ないと困る」ものばかりの時はこれでよかった。こういう商品を仮にMUST商品と呼びます。MUST商品にとって最善解は一つ。つまり、「製品・サービスを競合より安価に、大量に顧客へ届ける」こと、これだけでした。「誰もが必要な、マストな商品」だから。しかし、いまやアメリカも日本も先輩諸氏のおかげで社会は成熟し、「無いものがない」ようになりました。「無いものがない」というのを言い換えれば「欲しいものがわからない」ぜいたくな社会です。糸井重里さんが「ほしいものが、ほしいわ」と西武百貨店のポスターにコピーをつけたのがはるか昔1988年です。
 そんな「満たされた社会」では、MUST商品ではなくCUTE(キュートな)商品が求められます。「かわいい!」「何これ!?」「一度体験してみたい」…。例えば、バンジージャンプみたいな商品。無くても生活に困らないけど、一度体験すると忘れられないメモラブルな宝物になる。
 CUTEな製品・サービスを生み出すためには、まず、自分自身が遊んでいる必要があります。難しい顔をしてパソコンに向かっていては何も生まれません。そもそもバンジージャンプなんて、いったい誰が着想したのでしょう(笑)。きっと遊びが大好きな「困ったやつ」が「面白いぜ!」と始めたに違いありません。話はそれますが、同僚の息子さんがバンジージャンプを体験して、一言。「バンジージャンプって、飛ぶ前がバンジージャンプだね。怖くて、やめようかと何度も繰り返して…。いざ飛んでみたら、あっという間」。名言です。彼の人生にとってのすてきな思い出であり、「モノ」でここまでの感動が刻まれたかどうかわかりません。

遊ぼう!

 皆さん、真面目過ぎるほど真面目なので、あえて、呼び掛けます。「遊ぼう!」と。マンハッタンを歩くだけでもいろんな気付きがあるはずです。外へ出ましょう。セントラルパークのシープメドウで一日座っているだけでもいい。空っぽになって、深く呼吸して。遊べば遊ぶほど、CUTEな商品の発想がわいてくるはずです。遊びましょう!!首から上だけではなく、首から下も、全身使って。

阪本啓一

今週の教訓
感性を磨きましょう

阪本啓一
■ブランディング・コンサルタント。大阪大学人間科学部卒業後、旭化成入社。2000年に独立し渡米、ニューヨークでコンサルティング会社を設立。06年、株式会社JOYWOW創業、現在取締役会長。地球と人をリスペクトする、サステナビリティ経営の実現に取り組む。『共感企業 ビジネス2.0ビジョン』『ゆるみ力』などの著書・訳書、講演活動も多数。
www.kei-sakamoto.jp
電子メディア開店! www.orange-media.jp

阪本が選ぶ 読めば分かるこの一冊

持たざる者

「生活のために生活する。生きるために生きる。」(本文から引用)

 東日本大震災と津波、原発被害で人生が一変した4人の男女について、金原ひとみの刃が光ります。
 あの震災は、いろんな課題を私たちに突き付けました。エネルギー、防災、お金、情報確度…。そのうちの、とても大きなものに、「持つこと」があります。持つと、手放すのが怖くなる。私は、「所有を捨てよう」という哲学を呼び掛けていますが、本当に「手放す」ためには内的葛藤を経てからでないと、けがします。金原ひとみは、その「ケガ」について、容赦なく切り込みます。登場人物たちが自分たちのことをタイトルで「持たざる者」と呼ばれていることを知ったら、彼らはどう思うでしょう。
 さっと読める人、なかなか読み進めない人が分かれる作品だと思います。なかなか読み進めない人こそ味読し、消化したい一冊。

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